【京都グルメ】聖護院八ッ橋総本店 鈴鹿可奈子さん ~おいしいを、 継いでいく~

京都レストランスペシャル・アンバサダーインタビュー  株式会社 聖護院八ッ橋 専務取締役 鈴鹿可奈子さん

料理は人の真ん中で、食事は生活の真ん中で。

京都レストランスペシャル・スペシャルアンバサダー特別インタビュー、最後となる第四弾でご登場いただくのは「お菓子も、お料理も、楽しく食べるもの」と話す鈴鹿可奈子さん。300年以上の長い歴史を有する和菓子の老舗・聖護院八ッ橋総本店の専務取締役として、実際に京の食文化を担うおひとりでもあります。京都大学を卒業後、アメリカでPreMBAを取得。英語による京都の食文化の発信や、若い人に八ッ橋を気軽に食べてもらうための新ブランド「nikiniki」の設立など、新しい試みにも果敢にチャレンジされています。そんな鈴鹿さんから、京の老舗が受け継いできたものや京都の食文化が果たす役割などについてお話を伺いました。

 

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プロフィール

京都市生まれ。京都大学経済学部経済学科在学中に、カリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPreMBA取得。卒業後、信用調査会社勤務を経て、2006年家業である聖護院八ッ橋総本店に入社し、2011年に新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げる。現在、専務取締役。

八ッ橋屋の跡取り娘として、京都の味覚が生活の中に在った。

京都のお土産といえば多くの人が真っ先に思い浮かべるであろう八ッ橋。定番中の定番としてロングセラーを誇るこの人気商品を、創業から300年以上にわたってつくり続けてきた聖護院八ッ橋総本店で専務取締役を務める鈴鹿可奈子さんは、老舗のひとり娘として育ちました。
赤ん坊のころから「八橋忌」と呼ばれる「八ッ橋」の名の由来となった筝曲家・八橋検校の法要や、京都の老舗が一同に会する「洛趣会」など、会社の行事に参加してきました。そうした会には他の老舗の人たちも集まり、鈴鹿さんはそこで跡取り候補である子どもたちと遊んでいました。やがて皆が大人になり、現在ではその友人たちと一緒に仕事をすることも多いといいます。

鈴鹿さん「中学校に上がる際に同級生たちが、進路とか将来の話をするようになりました。じゃあ私は?と考えたときに、食べること、そして特に八ッ橋が大好きだと改めて思いました。好きなことを仕事にし、さらに好きなお菓子の会社を経営する機会は恵まれていると思い、自分から父に継ぎたいと言いました。それまで父からは継げとも継ぐなとも一切言われたことはなかったんですけどね」

父で現社長でもある且久さんは、まだ子どもだった鈴鹿さんを連れ、京都を代表する高級店や老舗の名店で食事することが多かったといいます。「小学生で大好物が(食通が通う)大市さんのすっぽんだった」と話す鈴鹿さん。京都に生まれ育つという環境のなかで、日常にそうしたお店がありました。いま思えば、もしかしたらそこには「子供扱いして子供の食べ物を与える」のではなく「大人である自分たちが美味しいと思うものを共有する」という両親の意識が影響してたのかもしれません。

鈴鹿さん「いまもそうなんですけど、父と母はいつもお料理を食べながら、この味付けのバランスがいいとか、このソースが効いていておいしいねとか、お料理についていろんな話をしてくれました。そのせいか、わたしも食べながら味について言語化するのが習慣になっていますね。といっても決してグルメぶるということではなく、『この香辛料何が入っているのかな』とか『ソースと食材の合わせ方がとても好き』のように。おいしい!という感動をほんの少しだけ具体的な言葉にして、その場にいる人と共有することが楽しいです」

食事そのもののおいしさや感動を吟味して、言葉にする。ふだんからそれを意識することで自分にとっての「おいしい」の基準が明確になり、一緒に食事した友人と喜びをシェアすることもできる。さらには料理人への感謝の気持ちを伝える言葉も的確になる。鈴鹿さんはそう話します。ご本人は「職業病」だと笑いますが、こうして味について理解を深め、探究することは、きっと食事をより深く楽しむことにもつながるでしょう。おそらく鈴鹿さんはご自身も知らぬあいだに、創業300年を超える老舗の家業だけでなく、食事の時間を豊かなものにするための方法論も、ご両親から引き継いでいたのではないでしょうか。

ほんとうのおいしさは、心で味わうものだから。

鈴鹿さんにはもうひとつ、ご両親から受け継いだ食べることへの特別な思い、向き合うべき姿勢というものがありました。
中学生で継ぐ決心をした鈴鹿さんは、大学卒業後の2006年に聖護院八ツ橋総本店に入社すると、2011年には若者にもっと気軽に八ッ橋に親しんでもらいたいとの思いから、新ブランド「nikiniki」を立ち上げ、老舗に新風を吹き込む取り組みとしても注目されてきました。
やがて専務取締役としての多忙な毎日を過ごすうち、いつの間にか大好きだった食事が単なる栄養補給になってしまっていることに気づきます。きっかけは、母である比奈子さんがふと漏らしたひとことでした。

鈴鹿さん「母が還暦を迎えるころに『一日三食、残された時間で食べられる回数は限られているから、一回の食事も疎かにしたくない』と言ったんです。その言葉を聞いたとき、ハッとしました。そのころ、ついお昼は忙しいからインスタント食品を仕事をしながらでいいか、等と食べることの喜びを疎かにしてしまっている自分に気づいたからです。それからは、忙しい時でも出来るだけ気持ちを切り替えて、近くの飲食店で食事の時間をきちんととるよう心掛けています。今日はお昼どこにしようか?って考えるだけで楽しいですもんね。そういうことをとくにコロナ禍になって以降、より意識するようになりました」

食事の時間は身体だけでなく、心にも栄養を届けるものでなければいけない。とりわけ京都のお店でお料理をいただくというのは、お店を予約するところから、お店を出たあとの帰り道まで、そのプロセスすべてに楽しさがあり、それを体験してほしいと話す鈴鹿さん。料理の素材や味付けなどの工夫はもちろん、器や盛り付け、お店に飾られたお花やお軸、些細な会話や接客にいたるまで、ご主人のきめ細やかな心遣いをいただきにいく。それこそが、京都のお店でのお食事の醍醐味であるといいます。

鈴鹿さん「お店を選んで、予約を入れて、待ち合わせをする。着ていく服を選び、なにを食べようか?なにを飲もうか?どんなお席かな?と想像を巡らせる。気心知れたお店ならご主人の趣向やサプライズもあったりするかもしれない。それだけでワクワクしてきますよね。そしてお料理を食べて、おいしいねって言い合うことも楽しいですし、その感動を気持ちよくシェアできる家族や友人たちと一緒なら、なおさらです。ご馳走さまを言って、お店を出て、おいしいものをお腹いっぱい食べたとき独特のあの幸福感を感じながら家に帰る。そこまですべてのプロセスがお食事であり、そのすべてを楽しめる自分でありたいなと思っています」

鈴鹿さんが、すべてのプロセスを「心で味わう」ようになれたその原点には、子どものころに京都の名だたる名店の座敷で、あるいはカウンターで、父と母が交わしていた無数の会話があるのだと振り返ります。
そしていまでは、ひとり娘の母となった鈴鹿さん。その娘さんもかつての鈴鹿さん同様、幼くして「八橋忌」や「洛趣会」に参加し、ほかの老舗の子たちと一緒に遊んだりしながら交友を深めているのだとか。その姿をかつての自分と重ねながら見つめる鈴鹿さんは「やがては娘もその友だちと一緒に仕事をすることになるのだろう」と話します。そしてなにより、鈴鹿さんはかつての両親がそうしてくれたように、京都の名店に娘さんを連れていっては、味についてあれこれと話をしながら、食事を心から楽しんでいるのだそうです。
料理が人と人をつなぎ、「おいしい」という感動が歴史をつないでいく。老舗のスピリットのみならず、縁で結ばれた京都の文化や精神は、このように料理を囲んだ食卓で、代々受け継がれてきたものなのかもしれません。

京都レストランウインタースペシャル・アンバサダー 鈴鹿様からのメッセージ

底冷えの印象が強い冬の京都ですが、凛とした空気の中歩く街は澄んでいて美しく、好きな季節の一つです。またおいしい食材も豊富になる冬。年の瀬から新年、そして春を迎えるまで、様々な催事にちなんだ設えも目を楽しませてくれます。窓の外に美しい冬の京都を眺めながら、暖かい室内で気心のしれた仲間と卓を囲む時間が待ち遠しく感じる季節。心も舌も、五感全てで京の冬を味わっていただけると嬉しいです。

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記事制作:ENJOY KYOTO

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