【京都グルメ】未生流笹岡 家元 笹岡隆甫さん~命の色彩を美に昇華する~

京都レストランスペシャルアンバサダーインタビュー未生流笹岡 家元 笹岡隆甫(ささおかりゅうほ)さん

 

食べることは、生きること。生きることは、生けること。

京都レストランスペシャルアンバサダー特別インタビュー、今回ご登場いただくのは華道「未生流笹岡」の三代家元である笹岡隆甫さん。京都大学工学部建築学科を卒業後、2011年に家元を継承して以来、理論派の華道家として独自の世界観を構築してきました。伝統的な華道のフィールドにとどまらず、狂言やミュージカルなどさまざまなジャンルのアートともコラボを果たし、新たな試みにも果敢にチャレンジされています。今回は食通としても知られる笹岡さんから見た、京都の食文化の魅力やいけばなとの共通点などについてお話を伺いました。

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プロフィール

昭和49年(1974)、京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。3歳より祖父である二代家元笹岡勲甫の指導を受け、平成23年(2011)、三代家元を継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、国内外で、いけばなパフォーマンスを披露。平成28年(2016)には、G7伊勢志摩サミットの会場装花を担当。東京2020オリンピック聖火リレーでは、京都府の最終ランナーを務めた。京都ノートルダム女子大学客員教授。京都市教育委員会委員。

時の移ろいや命の儚さを、この世界に移しとる日本の美意識。

生まれて初めて花を生けたのは、まだわずか3歳のときだったという笹岡隆甫さん。祖父である未生流笹岡二代家元・笹岡勲甫さんから直接、手ほどきを受けていました。もともと家元というのはお師匠さんを指導する立場。そのため、隆甫さんも子どもの頃から両親や祖父母の年齢に近いお師匠さんたちと机を並べ、稽古に励んでいたのだといいます。笹岡さんは最初にそうした先生たちと一緒に学ぶ経験をできたことが、自分にとっては大きかったと振り返ります。

笹岡さん「たとえば、あるご高齢の女性の先生が、生け終わったお花を処分する際、毎回必ず半紙に包んで、日本酒で清めて手を合わしておられた。そのお姿の美しさから、わたしは華道に対する姿勢や心構えを教えていただいたと感じています。本来、教室は技術を教わるところなのですが、花を美しく生けること以上に大事なことがあるということを彼女から学びました。」

美しい姿を見せてくれていた草花や、自然の恵みに対するありがとうという感謝の心。それこそがいけばなにおいて、なにより大事なことであるということを、その先生は言葉ではなく振る舞いによって、若き笹岡さんに伝えようとしていたのかもしれません。

華道とは、花の命を分けてもらうこと。生命の輝きと儚さを、生きることの素晴らしさと残酷さを表現する芸術であるからこそ、命への感謝を忘れてはならない。それゆえいけばなは、生けた瞬間が完成ではなく、その花が変わっていく様を最後まで見届けることに意味があるのだと笹岡さんはいいます。

笹岡さん「蕾の状態で生けた花が徐々にほころび、満開になってやがて散っていく。その姿の一部始終を見届けるのがいけばなです。時の移ろいのなかで人はいろんなことを感じるはず。蕾がほころぶと嬉しいし、その花が開き、太陽のほうに伸びていこうとする姿を見ることで、歳を重ねることの素晴らしさを感じたり、自分も背筋を伸ばして生きていこうと元気をもらったりする。時の移ろいの中で変化していく花の姿は、見る者にいろんなことを教えてくれます。だから華道家にとって花は、先生であり師匠のような存在でもあるのです。」

じつは、こうしたいけばなの根底に流れる思想には料理との共通点があるといい、笹岡さんも京料理の盛り付けからインスピレーションを受けることも多いのだそうです。その共通点というのは料理の盛り付けにおける「陰陽」の考えかた。昔から日本の文化は陰陽の影響を受けており、アシンメトリー(左右非対称)を美と考える傾向が強くあります。実際、あまりに対称にしすぎると盛り付けもいけばなも退屈で凡庸に見えるのだといいます。大きさ、色、形、量など、バランスをとるためにはアシンメトリーにすることで「流れ」が生まれ、それが時の移ろいや物語を生み出すのだと、笹岡さんは話します。

笹岡さん「整然と美しく盛り付けられたお料理も、よく観察するとだいたいアシンメトリーになっています。いけばなでも、葉蘭をいける際、あえて一枚だけ裏向けの葉を加えます。真夜中でも、漆黒の中に少しだけ白、つまり朝の兆しが入っているという「陰陽」の考え方です。どこかしらにアシンメトリーな要素を配置することで、動きや、移ろいを作りだすのです。また奇数は陰陽では陽の数とされていますが、和食のコースの品数もいけばなにおける花の数も、基本的に“割り切れない”奇数になっています。これは日本人の美意識に刻み込まれているもの。わたしは京料理の八寸には、いけばなと通ずる日本の美のセンスが凝縮されていると感じます。」

京都の食文化は、お花や器、しつらえを含めた総合芸術。

笹岡さんにとって食事は、リフレッシュの時間であると同時に、心地よく一日を過ごすための最重要の要素のひとつだとまで言い切ります。実際に笹岡さんのSNSの個人アカウントには食事に行ったお店やお料理の写真がズラリと並んでいます。「妻や友人からは、お花の写真より料理の写真が多い、と言われます。」と苦笑いする笹岡さん。しかしお話を伺っていると、そこには単なる食への興味の域を超え、伝統文化を継承する人ならではの、美しさへの視点と探究心が垣間見えてくるのでした。

笹岡さん「いけばなが花と向き合うことで命のパワーをいただくのと同様に、やっぱり食事を摂ることも命をいただくことなんですよね。お肉や野菜など素材が持つ栄養はもちろんですけど、気のおけない人たちと一緒に同じものを食べて『おいしいね』と語り合う時間は、癒しであり、また元気をチャージしてくれる時間でもあると思います。それに『おいしい』と感じる料理や好みのお店が近い人というのは、幸福の基準が似ている人だと思うし、一緒にいて楽しい。いけばなも同じで『これが美しい』と感じるセンスが似ている人は、やっぱり話も合いやすい。だからこそ『流派』が生まれるのでしょうしね。」

笹岡さんがこうして食から日々インスピレーションを受け、華道の哲学へと昇華しようと試みているように、京都の料理人もまた他ジャンルのシェフや、さまざまな伝統文化の職人たちと積極的に交流を重ね、美意識を磨いていると笹岡さんはいいます。たとえば京都には、名だたる京料理の料理人をはじめフレンチ、イタリアン、中華などによるコラボ料理の提供に加え、金剛龍謹さんによる能や、笹岡さんによる生花も披露されるなど、トータルコーディネートによる京文化の美意識が結集したイベントが開催されるなど、多様な文化交流の中から互いに研鑽し、学び合える環境がある。それこそが京都の食文化ならではの強みでもあると語ってくれました。

笹岡さん「実際のところ他府県の飲食店と比べて京都のお店に伺うと、エントランスからお料理が始まっているかのように感じさせてくれます。外観の構え、玄関までの石畳や植栽といった動線の演出、入り口の暖簾と灯りの佇まい、旬の食材と季節をあしらった器、そしてもちろんお花にいたるまで、あらゆる京文化を一度に体験できます。こうしたキャンペーンの機会に、料理を通じて京都文化の真髄に触れていただくきっかけになればと思っています。」

最後に笹岡さんの『最後の晩餐』は?と尋ねると、「お寿司とまる鍋(スッポン鍋)」という答えが返ってきました。行きつけの下鴨のお寿司やさんに笹岡さんが行くと、好物である まる鍋をいつも出してくれるのだとか。京都の料理屋さんというと、ちょっと敷居が高いというイメージをお持ちの人も多いかもしれません。しかし足繁く通い、気心が知れる関係になれば、そんな心遣いもしてもらえるのが京都のお店の魅力でもあります。みなさんもこの冬はぜひ、お店に飾られた花が語りかけるストーリーや、お料理の盛り付けのアシンメトリーにも気を配りながら、食を通じた京文化のトータルコーディネートを体感してみてはいかがでしょうか。

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記事制作:ENJOY KYOTO

企画:京都レストランスペシャル

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