京都は、全国有数の日本酒の名産地です。京都の美しい水から造られるお酒の味には定評があり、国内だけではなく海外からの観光客の方にも人気です。
今回は、京都の日本酒の歴史や取り組み、実際にお酒を楽しめる施設などをご紹介します。
京都の日本酒の歴史
日本酒の始まり
そもそも、いつどこで日本酒が発祥したか、明確な記録はないようです。ただ、9世紀頃(868年)に執筆された「令集解(りょうのしゅうげ)」のなかで、平安京にすでに「造酒司(みきのつかさ)」があったと記されています。造酒司とは酒や酢の醸造をつかさどる役職なので、この頃には京都にはお酒があったと考えられています。
その後、鎌倉時代には、お酒を造って売る酒屋が普及しました。さらに室町時代に、酒産業は急拡大したといわれています。
お酒に不可欠な美しい水
京都市内のなかで特に日本酒造りが盛んなのは、伏見と西陣近辺です。
西陣エリアには「出水(でみず)」という名の地名があります。その名のとおり、良質な地下水があるエリアのため、日本酒だけではなく豆腐作りや茶道など、美しい水によって成り立つ文化が根付いています。
さらに伏見も、もともと「伏水」と記されていたとおり、昔から美しい地下水に恵まれた地です。伏見の水はミネラルが少ない軟水で、その水から造られるお酒は、香りが良くやわらかい飲み口です。
伏見区の桃山エリアにある御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)の境内には、「御香水(ごこうすい)」という水が湧き出ています。この御香水は、環境庁が選定した「名水百選」にも選ばれており、水質の良さが評価されています。今でも伏見の各酒造では、御香水と同じ水脈の地下水を利用して日本酒が造られています。
西陣も伏見も、地形に恵まれ上質な水があることで、美味しい日本酒が造られてきたといえます。
京都における日本酒促進の取り組み
京都は、2013年1月15日に全国初の「京都市清酒の普及の促進に関する条例」を制定しました。
この条例は、日本酒(清酒)による乾杯の習慣を広めることによって、日本酒の魅力を全国に知ってもらうために作られました。さらに日本酒がより普及することで、国内の貴重な伝統産業の良さが再確認されることも大切な目的です。
【京都市内】酒蔵見学や日本酒を楽しめる施設
京都市内で日本酒を楽しめる施設をいくつかご紹介します。酒蔵の内部を見学できたり、日本酒の試飲ができたりする場所もあるので、日本酒がお好きな方も、お酒が飲めない方でも、ぜひ訪れてみてください。
佐々木酒造株式会社(西陣)
明治26年(1893年)創業の酒造です。佐々木酒造がある西陣エリアは、「出水」という地名があるように、美しい水がある地域です。かつて西陣には多くの酒造があったそうですが、今や佐々木酒造が唯一の酒造となりました。同社には可愛い猫社員もおり、お酒のパッケージのモデルにもなっています。酒蔵見学ツアー(要予約)も行っています。
社名:佐々木酒造株式会社
営業時間(小売部):10:00~17:00
定休日: 日・祝・夏季休暇・年末年始
公式HP:
羽田酒造(京北)
京都市北部の北山の山間部にある酒造です。山間部ならではの冷涼な気候と美しい桂川上流の伏流水を使って、美味しいお酒が造られています。さらに蔵の敷地内には「祝米」の田園もあり、お酒のための美味しいお米作りから自社で行っているのも特徴。代表銘柄の清酒「初日の出」は、すっきりとした飲み口が人気です。
社名:羽田酒造有限会社
営業時間(テイスティングルーム/蔵元ショップ):10:00~16:00(テイスティング最終受付15:30)
定休日:水・夏期休暇・年末年始
公式HP:
松井酒造(左京区)
享保11年(1726年)創業の酒造です。代表銘柄は「神蔵(かぐら)」です。出町柳を少し南に下がった、京都大学そばにあります。鴨川のほとりにある蔵は「鴨川蔵」とよばれ、夏以外は年中稼働しています。この酒造で蔵元として働く1人のジョージ・ナバレッテさんは、アメリカ出身。海外から訪れる観光客たちにも、英語で酒蔵の案内を行っています。
社名:松井酒造株式会社
「松井酒造小売部 千歳商店」営業時間:9:00~18:00
「ティスティングルーム 酒中仙」営業時間:11:00~18:00(17時ラストオーダー)
定休日:日曜日・祝日・年始1月1日から4日 (年始のお休みは年により異なる)
公式HP:
月桂冠大倉記念館(伏見)
寛永14年(1637年)創業の月桂冠株式会社が経営する大倉記念館は、月桂冠の挑戦の歴史や、昔の酒造用具の展示に加え、数種類のお酒を楽しめる試飲コーナーや美しい庭園もあります。売店では記念館限定のお酒だけでなく、酒まんじゅうや奈良漬けなどの販売もあり、お酒が飲めない方でも楽しめる施設です。
施設名:月桂冠大倉記念館
営業時間:9:30~16:30(最終受付16:00)
定休日:夏期休暇・年末年始・他臨時休館日
公式HP:
https://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/museum/
キザクラカッパカントリー(伏見)
「キザクラカッパカントリー」は、黄桜株式会社が運営する、京都初の地ビールレストランです。旧酒蔵を改装した店内で、直営店限定のお酒や京都初の地ビール「京都麦酒」、四季折々のお料理をお楽しみいただけます。
施設名:キザクラカッパカントリー
営業時間:
月~金 11:30~14:30 (L.O.14:00)、17:00~21:30 (L.O.20:50)
土・日・祝 11:00~14:30 (L.O.14:00)、17:00~21:30 (L.O.20:50)
定休日:火・年末年始
公式HP:
https://kizakura.co.jp/restaurant/country/index.html
齊藤酒造株式会社(伏見)
「英勲(えいくん)」ブランドのさまざまなお酒を展開する、伏見の酒造です。創業は明治28年(1895年)です。同社の英勲は、その品質が評価され、国内外で数々の賞を獲得しています。酒蔵見学も行っており、10名以上20名以下で、蔵見学料は1名あたり2,200円です。見学日については要相談となっているため、見学ご希望の方は電話でお問い合わせください。
社名:齊藤酒造株式会社
本社営業時間:月~金 9:00~17:00
定休日:土・日・祝・年末年始
公式HP:
伏水酒蔵小路(伏見)
「伏水酒蔵小路」は、伏見エリアの日本酒を楽しめる飲食店が揃った複合施設です。伏見の日本酒に合う街中華やお好み焼き、おでん、洋食など多様なジャンルの飲食店が集まっています。伏見酒造組合に属する18の蔵元の日本酒を楽しめるので、いくつか飲み比べをしても楽しいですよ。もちろん美味しい食事もたくさんあるので、お酒が飲めない方でも楽しめます。
施設名:伏水酒蔵小路
営業時間:各店舗により異なる
定休日:各店舗により異なる
公式HP:
https://fushimi-sakagura-kouji.com/
京都ならではの日本酒文化
京都には、他にも京都独自の清酒酵母「京都酵母」や、京都独自の酒造好適米「祝(いわい)」などもあり、京都ならではの日本酒文化で盛り上がっています。
「京都酵母」は、日本酒造りに欠かせない「酵母」という微生物を、京都市産業技術研究所が独自開発したもの。現在5種類の京都酵母があり、それぞれ香りや味、飲み頃の適温などが変わります。「祝」も、京都府立農事試験場丹後分場(現京都府丹後農業研究所)で生まれた酒米で、そのクオリティの高さが評価されています。
京都の美しい水が生んだ美味しい日本酒を、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。
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記事を書いた人:俵谷 千尋
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1985年埼玉県出身。企業で雑誌編集、求人広告作成、ゲストハウス受付などを経験したのち、2021年夏にWebライターとして独立、と同時に京都にIターン移住。プロダクトの魅力をアピールする記事や、英語系の記事が得意。趣味は音楽活動と海外放浪で、今まで行った国は現在27ヵ国。人生で100ヵ国達成するのが目標。