京都ゆかりのあの人に聞く 私のお気に入りの京都 京扇子 大西常商店 若女将 大西里枝さん
京都には千年を超える歴史に培われ、伝統・文化・自然など「京都の奥深い魅力」が感じられるスポットがたくさんあります。京都にゆかりの深い方々にお気に入りのスポットをご紹介いただきます。第三弾は伝統工芸品「京扇子」を取り扱う「京扇子 大西常商店」の若女将・大西里枝さんに、お気に入りの場所やおススメのスポットを様々なエピソードとともに、お話しいただきました。
京扇子 大西常商店 若女将 大西 里枝さん
【プロフィール】京都市生まれ。立命館大学卒業後、大手通信会社の九州支社に勤務。結婚、出産を機に京都へ戻り、家業の大西常商店に入社。4代目として新商品開発や職人育成に携わる。
大西常商店
着物姿で訪れてほしいおすすめの場所
扇子は涼をとるための夏扇子をはじめ、日本舞踊などで使われる舞扇子、茶席用の扇子など用途や種類もさまざまです。一般的に使われる場面で多いのは着物姿のとき。取引先には呉服屋さんが多いこともあって、私はいつも着物姿で仕事をしています。
そんな私がまずおすすめするのが着物姿がとても映える知恩院総門(古門)前を流れる白川河畔です。両岸には柳並木と石畳風の道が続き、清流と所々に架かる小橋は一幅の絵を見るようで、中でも一本橋と呼ばれる「古川町橋」は狭くて欄干もない簡素な石橋です。天台宗の回峰行の一つで、最も厳しいとされる千日回峰行を達成した行者が入洛時に最初に渡ることから阿闍梨橋、行者橋とも呼ばれています。転落しないよう注意してくださいね。
若い世代が利活用する注目の近代建築と銭湯
近代建築物が好きで、中でもお気に入りは堀川中立売通の交差点近くに立つ「西陣産業創造會館(旧京都中央電話局西陣分局舎)」です。大正期の建築家・岩元禄の設計で、同館は彼が設計した作品で唯一現存する貴重な建物。国の重要文化財にも指定されています。現在はスタートアップ支援を行う施設として活用されているので中には入れませんが、外壁にはライオン像や裸婦の彫像など、芸術性の高い意匠が随所に施され、大正時代の建物とは思えない斬新なデザインに驚きます。(※西陣三条創造會舘は令和5年3月まで外壁工事中。)
古い建物の活用といえば五条大橋の近くにある「銭湯・梅湯」。梅湯は当時20代だった現店主が廃業寸前の梅湯を引き継ぎ、2015年リニューアルオープンしたもの。昭和レトロなお風呂屋さんですが、通常の銭湯営業のかたわら音楽イベントを主催するなど、枠にとらわれないユニークな企画が話題で、今や銭湯好きの間では聖地のような存在になっているようです。土・日曜日限定で朝6時から営業しているのも珍しく、朝風呂や隙間時間にも利用できますね。汲み上げられた地下水を薪で温めたお湯は、しっとりと肌に柔らかで芯まで温まります。


生産者との会話も楽しみの一つ、大原の朝市
休日は大原へ野菜を買いによく出かけるのですが、「里の駅・大原」の朝市はおすすめです。中心街から車で約40分。四方を山に囲まれたのどかな田園地帯の大原は、三千院や寂光院などの古刹や赤しそなどの特産品でも知られる地域ですが、同地で採れる野菜は甘くてみずみずしく、おいしいと定評があります。里の駅・大原はそうした大原産野菜を中心に果物や花、柴漬けや餅などの加工品も扱う直売所です。
毎週日曜日に開かれる「大原ふれあい朝市」は、新鮮な野菜やパン、お弁当やコーヒーなど約20店が出店し、出店者自ら販売する朝市。普段は顔を合わせることもない作り手の方に珍しい野菜やハーブについて教えてもらったり、調理のコツをアドバイスしてもらえるのも嬉しいですね。


聞けば大原は少子高齢化に伴う農業離れが起こっていたそうですが、近年、有機栽培などに挑戦する若い就農者が増えているとか。同世代の、しかも他業種の方の話は興味深く、私も頑張らないと、といつも元気をもらいます。朝市の帰りは高野川沿いのカフェで一服したり、「味工房 志野」で手作りドレッシングを購入するのもお決まりのコース。朝市で買った野菜にかけて食べるのも定番となっています。
弊社は今後、扇子の製造・卸業、投扇興体験などの文化事業に加えて若手職人の育成にも力を入れ、扇子を軸に京都の文化を支えていきたいと考えています。今回紹介した銭湯や大原の朝市のように、その建物や土地がもつ潜在力を活かして新たな風を生み出せるよう、これからも扇子と人、そして技や文化を積極的につないでいきたいですね。
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ご紹介いただいた各スポット情報
・白川 古川町橋
住所:京都市東山区石橋町
・西陣産業創造會舘
https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=8&tourism_id=944
・梅湯
https://twitter.com/umeyu_rakuen
・里の駅 大原
https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=4&tourism_id=2521
・ぽん酢とドレッシングの専門店 味工房 志野
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ライター:五島 望
写真:田口 葉子(写真1・3枚目)
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