【葵祭・観覧記念品制作】宮絵師 安川如風インタビュー ~職人として生き、文化を後世につなぐ~

爽やかな初夏の京都を優雅な行列で彩る葵祭。今から約1500年前に始まったとされる賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)の例祭です。5月初旬からさまざまな行事(前儀)が行われ、5月15日には、およそ8キロもの距離を、平安装束をまとった人々が練り歩く「路頭の儀」が開催されます。

「路頭の儀」では毎年有料観覧席を設けられますが、2024年の観覧席の特典として「葵祭観覧記念符」を配布いたします(京都駅の京都総合観光案内所(京なび)でも購入可能です)。

今回は、「葵祭観覧記念符」に美しい絵を描いていただいた日本で唯一の「宮絵師(みやえし)」である安川如風(にょふう)さんに、宮絵師のお仕事や、葵祭観覧記念品の絵に込めた想いなどをお聞きしました。

宮絵師とは

制作をする安川さん

安川「『宮絵師』とは神社や寺院の絵付け・彩色をする絵師のことです。伽藍の彩色や、修復もつとめます。社寺建築に特化している大工を『宮大工』ということを参考にし、自らを『宮絵師』と名乗るようになりました。私が初代の『宮絵師』です。」

ー絵師は画家とはちがうのですか。

安川「絵を描く者であるので、絵師を画家ともいえるのでしょうが、いわゆる作家(アーティスト)ではなく、職人です。誰かが依頼してくるものを形にします。自分の思いや表現方法で、自ら発信するのが作家です。職人は、決められた画題と費用と納期の中で、依頼内容を形にしていきます。また、職人は長い歴史の中で分業体制が取られています。様々な職種の職人と力を合わせることもあります。ひとつの仕事が発生すると、様々な分野の職人が働くことができます。」

これまでの京都の寺院でのお仕事

ー宮絵師として、これまでの京都でのお仕事について教えてください。また、観光でぜひ見て欲しいものや、知ってほしいことはありますか?

安川「北野天満宮はぜひ見てもらいたいです。約50年前、私が若い頃、北野天満宮拝殿の蟇股(かえるまた)の彫刻を彩色しました。この蟇股には『唯一の立ち牛』が彫られていて『天神さまの七不思議』のひとつなんです。北野天満宮の神牛はすべて伏した姿なのですが、この1体だけがなぜか立った姿で刻まれているんですよ。
彫刻への彩色は平面と違って凹凸があるのでとても難しいんです。高い足場の上に立って描かないといけないし、彫りが深くて筆が入らず苦労しました。昔の職人さんの凄さを思い知るきっかけになりましたね。」

北野天満宮の蟇股  
画像提供:宮絵師安川

ー昔の職人さんと同じ立場に立つことで、見えてくるものがあるんですね。

安川「また、2011年には上賀茂神社の『孝明天皇行幸図絵馬』の復元制作させていただき、同社の高倉殿に飾られています。私が上賀茂神社に複製を納品した日、朝から雨が降っていたのですが、納品する時、急に晴れたんです。その場のみんなが驚き、これは賀茂社の神様や孝明天皇が喜ばれているんだというふうに理解しました。非常にありがたい思いです。」

ー江戸時代末期のその時へ、想いが通じたんですね。奇跡のようです。

安川「近年では、妙心寺の塔頭(たっちゅう)である大雄院では18枚の襖絵を描かせていただきました。天才画家である『柴田是真』が残した花の丸図案を元にして、花の丸を復活させるというプロジェクトを任せてもらったんです。」

妙心寺大雄院 襖絵 画像提供:宮絵師安川

ー3年余りにわたる長いプロジェクトでしたね。大仕事を終えられて、お疲れ様でした。

安川「社寺に生きた証が残せて、皆様にも拝んでもらえる。こんな有難い仕事はないと思っています。京都観光の際も、ぜひ寺院の細部に宿る色んな職人の仕事を見てくださいね。」

ー職人さんのお仕事は、京都の様々な社寺で見ることができるんですね。

安川「はい。ただ職人の名前は基本的に表に出ません。でも私はどんどん出ていって、できるだけ安川如風という名前を出してもらうようにしています。宮絵師という仕事を知ってもらって、日本の伝統文化を守りたいんです。
これは『初代』だからこそ、誰にも気を遣わずできることですので、率先して職人の殻を破っていきたいと思っています。」

日本画の絵具など

ー初代だからこそしがらみがなく、どんどん発信していけるんですね。素晴らしいです。

安川「京都の伝統文化はこのような職人によって支えられているのですが、若い人はなかなか入ってきません。給料も安いし仕方ありませんね。職人は年季が必要、すぐなれるものではないので、今後どのように継承していけるのか心配しています。京都府の雇用創設事業や文化庁の伝統文化教室など、継承のために様々な取り組みが始められています。私も伝統文化技術継承の為、微力ながら活動します。」

 

安川さんは公式グッズサイトでコップやトートバッグなどオリジナルの商品を販売もされています。

https://suzuri.jp/Miyaeshi-yasukawa

■宮絵師 安川如風
https://tenchiyuyu.co.jp/
本社:〒606-0022 京都府京都市岩倉三宅町278
TEL 075-711-3533 FAX 075-711-7245
フリーダイヤル 0120-376-415
営業時間:月~金 11:00~17:00

2024年の葵祭観覧記念符について

ー葵祭観覧記念符、とても美しいですね。制作で意識されたことなどはありますでしょうか?

安川「日本画的に描きました。葵祭は上賀茂神社と下鴨神社のおまつりですが、二葉葵のデザインがそれぞれ違うので、どちらでもないものをイメージして描きました。
絵は、斎王代※の列がゆっくりと進む場面を描きました。場所は見る人のイメージにゆだねられるように木々を背景にしています。日本画で用いる「すやり霞(がすみ)」という横にたなびく霞を用いて、描きこみすぎないようやさしく、上品に仕上げています。制作期間は2~3ヶ月です。上賀茂神社の絵馬制作をしたこともあるので、この仕事をいただいたことにご神縁を感じています。」

ーそれぞれの人の心の中にある「葵祭」が描かれているんですね。わたしも観覧席を利用する予定なので、こんなに素敵な絵がいただけるのが嬉しいです。

※斎王代とは…平安時代、賀茂社(上賀茂神社・下鴨神社)に奉仕した内親王(天皇の娘)を「斎王」と呼び、葵祭などの神事をつとめました。鎌倉時代にこの制度がなくなったので、現在では斎王の代理である「斎王代」をたてて、葵祭の行列(路頭の儀)などを行っています。

おわりに

宮絵師である安川如風さんの描かれた絵を使用した「葵祭観覧記念符」や「記念扇子」は、2024年4月9日(火)から京都駅の京都総合観光案内所(京なび)で購入することができます(数量限定)


有料観覧席をご購入いただいた方には当日に記念符をお渡しします。
有料観覧席の売上の一部は、葵祭の保存継承に充てられます。

▼有料観覧席の詳細・販売はこちら
https://ja.kyoto.travel/event/major/aoi/


葵祭の見どころは「路頭の儀」という華やかな行列。平安貴族の衣裳をまとった500余名の人々が御所を出発し、下鴨神社、上賀茂神社へと向かいます。平安時代そのものの光景がリアルで見られるまたとない機会です。

葵祭を観覧して、平安時代から続いてきた京都の伝統文化に想いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

 

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記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto

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