【京都観光の予習】これだけは知っておきたい神社の基礎知識

京都にはたくさんの有名な神社があります。神聖な場所で気持ちを整えて参拝したり、日本の伝統を伝える文化財を拝観したり、さまざまな御利益のお守りを買うのも楽しみのひとつですよね。京都観光に神社の参拝は欠かせません。

現在(2024年4月)、京都市内で国宝に指定されている神社建築は「下鴨神社 東本殿・西本殿」、「北野天満宮 本殿・拝殿・石の間・楽の間」、「上賀茂神社 本殿・権殿」、「豊国(とよくに)神社 唐門」「八坂神社 本殿」です。他に重要文化財の建築もたくさんあります。神社を拝観するにあたって知っておくと便利な基礎知識をご紹介いたします。

神社に関連する建物

神社を訪れた際に目にすることが多い建物をご紹介します。それぞれの建物がどのような理由で神社に建てられているのかを知ると、より理解が深まりますよ。
※全ての神社にこれらの建物が揃っているわけではありませんのでご注意ください。

鳥居

明神鳥居

「鳥居(とりい)」は神社の神域の入り口を示す門です。ここから先は神社の境内で、神様の領域だと知らせるための目印になっています。「鳥が居る」と書く理由としては諸説あります。東南アジアや中国南部の一部の村では、村の出入口に日本の鳥居のオブジェのようなものがあり、そこに鶏などの鳥類をくくりつけているそうです。外部から人が入ってくると鳥が騒ぎ出して、中にいる人たちに知らせてくれるのですね。

鳥居の形状は、大きくわけて2種類で「神明(しんめい)鳥居」と「明神(みょうじん)鳥居」があります。鳥居は2本の柱の上に「笠木(かさぎ)」と「島木(しまぎ)」を渡すのですが、神明鳥居は笠木のみで、まっすぐで直線的な構造です。明神鳥居は笠木と島木があり、それらが沿っています。また京都では「三珍鳥居」が良く知られています。1つ目は北野天満宮摂社の伴氏社(ともうじしゃ)で、柱の台座に「蓮弁の彫り物」がある鳥居があります。2つ目は京都御苑内の厳島神社で、頭に「唐破風(からはふ)」がついている鳥居があります。3つ目は木嶋坐天照御魂(このしまにますあまてるみたま)神社です。通称・蚕の社(かいこのやしろ)と呼ばれ、三本柱の珍しい鳥居があります。

本殿・拝殿

「本殿(ほんでん)」は神様がおられる建物で、神社の中で最も神聖な場所です。「拝殿(はいでん)」は「本殿」を拝するための建物で、人が神に対して祭祀や祈願などを行う場所です。つまり本殿は神のための建物、拝殿は人のための建物ということになります。神社によっては「本殿」と拝殿が一体化していて、見た目には区別がつかないこともあります。

神饌所

「神饌(しんせん)」とは神様の食事のことであり、その食事の支度をするための建物が「神饌所」です。呼び方や内容は神社によって異なることがあります。例えば、下鴨神社には米や野菜、果実などを調理する「大炊殿(おおいどの)」と魚鳥類などの肉系統を調理する「贄殿(にえどの)」があります。
「神饌」が登場するのは大きな行事や神事のときです。神事の終わり近くに行われる「撤饌(てっせん)」は、神前に供えた「神饌」をさげる行為をいいます。神様のおさがりを関係者で分けて頂戴することを「直会(なおらい)」といいます。

絵馬所

「絵馬所」は大きな絵馬が奉納されている建物です。もともとは神社に本当の馬を奉納する風習が、駒形の木の板をもって代用することになり、そこに絵を描いて願掛けをしようとしたものが「絵馬」になったといわれています。現在では神社に用意されている小さな絵馬に願い事を書いて奉納するのが習わしになっていますね。昔は大きな祭礼のときには朝廷から神社に対して、本当の馬を献上していたこともあったようで、貴船神社では雨止み祈願のときは白い馬を、雨乞い祈願のときには黒い馬を奉納したそうです。

摂社・末社

神社ではほとんどの場合、複数の神様を祀っており、大きな神社になればその数も多くなります。本殿に祀られている神様がメインの神様(主祭神)だとすると、境内にある小さな社殿にお祀りされているのがサブの神様です。そのようなサブの神様を祀る小規模の社殿を「摂社(せっしゃ)」あるいは「末社(まっしゃ)」と呼びます。「摂社」は主祭神と関係の深い神様を祀る場合や特別の由緒がある場合で、「末社」はそれ以外と、おおよそ区別されています。また、境内の外にある摂社「境外摂社」というものがあり、カキツバタで有名な「大田神社」は上賀茂神社の境外摂社にあたります。

御旅所

「御旅所(おたびしょ)」とは神社の祭礼の折に神様が留まる場所であり、いわば神様の休憩所です。また1カ所とは限らず、大きな神社では複数存在することもあります。氏子地域を巡って、「御旅所」に神輿(みこし)が到着すると神事が行われます。
「御旅所」は氏子地域の人々の心のより所です。祇園祭では「無言詣り」という風習があります。神幸祭(しんこうさい)の後、無言で御旅所に7日間お参りにいくと願いがかなうとされています。
本社の本殿に祀られている神様を神輿にうつして「御旅所」まで行くのが「神幸(しんこう)祭」。神輿が御旅所から神社に帰ってくるのを「還幸(かんこう)祭」といいます。

神社の建築様式

神社の建築様式は、長い歴史の中でさまざまな種類が生まれました。

神明造・大社造

「神明造(しんめいづくり)」は明治維新後に、全国的に建設された本殿形式です。伊勢神宮の内宮と外宮の各本殿は特に「唯一神明造」と呼ばれて、「神明造」の元祖とされます。切妻(きりづま)の屋根を持ち、高床式で「平入(ひらいり)」という横長の部分を正面に持ってくる造りで、屋根には神社特有の「千木(ちぎ)」と「勝男木(かつおぎ)」を据えます。
「大社造(たいしゃづくり)」は、出雲大社とその周辺にみられる本殿形式です。「妻入(つまいり)」という、屋根の切れ目の方を正面に持ってくる形式で建てられています。

流造(片流・両流)

片流造の本殿

「流造(ながれづくり)」は最もポピュラーな本殿形式です。国宝の「上賀茂神社 本殿・権殿」、「下鴨神社の東西両本殿」もこのスタイルです。また屋根は「切妻(きりづま)造」で、「平入(ひらいり)」構造。母屋の前から伸びる長い庇を「向拝(こうはい)」と呼びます。屋根を横から見ると「へ」の字のようですね。これを「片流(かたながれ)造」といいます。
「松尾大社 本殿」などは前と後ろに延びる屋根の長さが同じであるため、「両流(りょうながれ)造」と呼びます。読みかけの本を机の上に置いて横から見たような構図です。

住吉造・春日造

春日造の本殿

「住吉造」は大阪の住吉大社にみられる本殿形式です。「大社造(たいしゃづくり)」の流れをくんだ形式で「大社造」と同じく「妻入(つまいり)」(屋根の妻側を正面に持ってくるパターン)です。内部は前後2室に分かれます。屋根は直線的で古代の神殿を彷彿とさせます。
「春日造」は奈良の春日大社に代表される本殿形式です。「流造」の「平入(ひらいり)」を、「妻入」に転換させた形式といえます。基本は一間社で4神を祀るので、コンパクトな神殿が並んでいるという印象です。京都では吉田神社や大原野神社、平野神社などにその例が見られます。

日吉造・祇園造

祇園造の本殿

「日吉造(ひえづくり)」は比叡山の鎮守社である日吉大社にみられる本殿形式です。内部は内陣(ないじん)と外陣に分かれ、また外観は「平入(ひらいり)」ですが、大きな庇(ひさし)が付いて向拝としている独特な形式です。
「祇園造」は「祇園社(現在の八坂神社)」にみられる本殿形式です。拝殿を別棟として設けず、本殿の中に礼堂として、拝殿を含んだ形になっているので寺院建築のようにも見えます。もともと祇園社は「祇園感神院(ぎおんかんしんいん)」とも呼ばれ、神仏習合の典型だったので、このように神社建築と寺院建築が融合したような見た目なのかもしれません。

八幡造・八棟造

「八幡(はちまん)造」は「平入(ひらいり)」の社殿が2棟並んで前と後ろに建てられ、その間を「相の間」がジョイントするという形式です。「後殿(こうでん)」が神様を祀る本殿になり、「前殿(ぜんでん)」が拝殿となります。屋根が前後に二つ繋がるため、相の間の上には樋(とい)が必要となるのもこの造りの特徴です。京都の石清水(いわしみず)八幡宮もこの「八幡造」ですが、神様の数に合わせて「後殿」を3室作り、それに対応するかのように「前殿」も3室から成る構造です。
またこの「八幡造」の系統とされるのが「八棟(やつむね)造」です。北野天満宮にそのルーツがあるとされ、「八幡造」のジョイント部分「相の間」が「石の間」と呼ばれ進化し、屋根の外観も変化に富むことから、棟が幾つもあるように見え「八棟造」と呼ばれるようになりました。
後にこの形が「日光東照宮」に伝わり「権現(ごんげん)造」あるいは「八棟権現造」とも呼ばれるようになります。

意外と知らない神社のこと

「神輿」、「祝詞」、「式年遷宮」などよく耳にするけれどちゃんとは知らない、神社にまつわる言葉をご説明します。

神輿

祇園祭などで活躍している「神輿(みこし)」は、実は神様の乗り物です。神様が御旅所などに向かう際に一時的に鎮まる輿(こし)になります。「しんよ」と読むこともあります。本来は、その神社の氏子がかついでいます。また神輿が1基だけでなく、複数登場する場合、その数だけ主祭神がいます。例えば祇園祭の神幸祭(しんこうさい)・還幸祭(かんこうさい)に登場する神輿は3基です。これは八坂神社の主祭神が素戔嗚命(すさのおのみこと)とその妻・櫛稲田姫命(くしなだひめのみこと)、息子の八柱御子神(やはしらのみこがみ)だからです。
また、時代祭の行列には「神輿」ではなく「鳳輦(ほうれん)」が登場します。「鳳輦」とは「天皇」の乗り物ですので、桓武天皇と孝明天皇の神霊が鎮まられている乗り物をこのように呼んでいます。

祝詞

「祝詞(のりと)」とは祭典に奉仕する神職が神様に奏上する言葉です。その内容は神事を行うにあたって、その意義や目的を神様に恭しくお伝えすることです。もちろん神様のご神徳をたたえることも忘れません。
平安時代の初期に編纂された「延喜式」には「祝詞」の文面が59以上も記載されています。奈良時代以前から伝えられてきた「祝詞」が平安時代に書きとめられたので、私たちは1000年以上の時を経て、昔の大和言葉をそのまま聞くことができるんです。機会があれば是非よく聞いてみてくださいね。

式年遷宮

「遷宮(せんぐう)」は、数十年に一度、神様の住まいである本殿などを新しく建て替えることです。伊勢神宮の場合は20年に1度で、特に「式年(しきねん)遷宮」と呼ばれています。上賀茂神社・下鴨神社でも20年に1度の遷宮を行います。ただし、両賀茂社では本殿の新築ではなく、ほかの社殿の修理・修複などを「式年遷宮」の名のもとに行うこともあります。昔は、ほとんどの神社でこのような遷宮が定期的に行われていたのですが、経済的事情また用材や職人の確保の困難さによって、遷宮を実施できる神社は減少しています。


参考文献
「京都」×わカル - 京都の伝統・文化・暮らしのガイド 京都市産業観光局観光MICE推進室
神道事典 國學院大學日本文化研究所編 弘文堂

記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto

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