葵祭とは
桜の季節が終わり、新緑がさわやかな5月になると、京都では葵祭が行われます。葵祭は、7月の祇園祭、10月の時代祭とならぶ京都三大祭の一つです。
古くは賀茂祭(かもさい)または北の祭とも呼ばれ、平安中期の宮廷貴族の間では、単に“まつり”といえば、この葵祭のことであるとされるほど有名でした。欽明天皇の時代(540-571)に、「飢饉の原因は、賀茂の大神に丁寧なお祀りをしていないため」と言うお告げに従って、賀茂社(上賀茂神社・下鴨神社のこと)に遣いを送ったところ、天候が劇的によくなるという出来事がありました。それ以来、毎年朝廷から勅使が送られ、祈りが捧げられるようになり、現在に至るまで受け継がれています。
そのため、葵祭は、京都三大祭の一つであると同時に、石清水八幡宮の石清水祭、春日大社の春日祭とならぶ「三勅祭」の一つに数えられています。京都だけでなく、国の平安を願う、スケールの大きい祭なんですね。
葵祭のハイライト「路頭の儀」
葵祭では、5月初旬から様々な儀式が執り行われますが、なんといっても最大の見どころは、5月15日(雨天の場合は16日)に行われる「路頭の儀(ろとうのぎ)」です。宮廷装束に身を包んだ総勢500余名の人々、そして馬や牛車が列をなし、約8㎞の道のりをしずしずと進んでいきます。
「路頭の儀」の行列は、「本列」と「斎王代(さいおうだい)列」の2つで構成されています。まず、勅使を中心とする「本列」が進み、その後ろに「斎王代列」が続きます。「斎王」というのは、かつて賀茂社に巫女として奉仕した未婚の皇族女性を指す言葉です。かつては斎王が葵祭に奉仕していましたが、現在は斎王の制度がなくなったため、斎王の代わり、という意味の「斎王代」が行列に加わっています。
この斎王代は、毎年、京都ゆかりの未婚女性から選ばれます。葵祭の時期が近づくと「今年の斎王代は誰?」と、京都じゅうで話題になります。斎王代は十二単のきらびやかな衣装をまとい、輿に乗って登場します。まさに葵祭のヒロインですね!
「路頭の儀」についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
【観光ガイドのプロが徹底解説!】今だから知りたい「葵祭」の基礎知識 - 京都観光Naviぷらす
源氏物語にも登場する葵祭
葵祭は、およそ1500年もの長い間、京都で行われてきました。平安時代の葵祭(賀茂祭)の様子を教えてくれるものの一つに、『源氏物語』があります。
『源氏物語』は、平安時代中期(11世紀初め)に書かれた小説で、世界最古の女性文学と言われています。天皇の子として生まれた主人公 光源氏が、華やかな平安京の宮中を舞台に、様々な姫君たちと恋をしつつ、人生を歩んでいく様を描いた長編小説です。作者は、一条天皇の中宮、彰子に仕えていた女性、紫式部。2024年の大河ドラマ『光る君へ』の主人公です。
物語中で葵祭が登場するのは、第九帖「葵」の「車争い」の場面です。
光源氏の正妻である葵の上が、禊の行事に同行する夫の晴れ姿を見るために、牛車で沿道にやってきました。ところが、少し出発が遅れてしまい、沿道にはすでに所狭しと牛車が並んでおり、葵の上の牛車をとめる場所がありません。それでも、当代きってのスター、光源氏の正妻ですから、葵の上の従者は身分の低い者の牛車を押しのけようとします。しかし、まったくどける様子のない牛車が二台。しかも、車自体は質素なのに、中にいる女性はかなり高貴な身なりをしてる様子。そこにいたのは、お忍びでやってきた源氏の愛人、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)だったのです。見物場所を巡って、二人の従者たちによる乱闘が起きてしまう、というストーリーです。当時から葵祭(当時は「賀茂祭」)が人々に注目される行事であったことがうかがえますね。
有料観覧席のご案内
葵祭では、京都御苑と下鴨神社参道に行列を安心安全にゆっくりとご覧いただける有料観覧席を設置します。有料観覧席のメリットは以下の4つです。
1.行列を間近で見られる
「路頭の儀」の行列に参加する人にはそれぞれ役割が割り振られており、平安時代の宮廷装束をもとに復元した衣裳を身に付けます。有料観覧席なら、普段見られない衣裳も、斎王代の美しいお姿も間近で見られます。
2.座ってゆっくり見られる
立ち見は、けっこう疲れますよね。自分の席があれば、行列の最初から最後まで、のんびり見ることができます。また、各席に配布される「葵祭」の行列についての「葵祭公式ガイドブック」を見ながら観覧すると、より理解が深まります。
3.伝統行事の保存・継承に貢献
有料観覧席の売上の一部は、葵祭の保存継承に充てられます。さらに今年(2024年)は、京の名工にも選ばれた宮絵師の安川如風(にょふう)さんが描いたオリジナルデザインの「葵祭観覧記念符」が配布されます。約1500年続いてきた葵祭を、この先も残していくために、ちょっとでも力になれたら嬉しいですよね。
※京都駅にある京都総合観光案内所「京なび」で「葵祭公式ガイドブック」「葵祭観覧記念符」ほか「記念扇子」が限定販売されます。(2024年4月9日~※完売次第終了)
有料観覧席は、行列の出発地点である京都御苑と、最初の目的地である下鴨神社の参道に設けられます。京都御苑では、歴史的な建物が立ち並ぶ中で、まるで平安時代にタイムスリップしたかのような感覚で行列を見られます。また、緑あふれる下鴨神社では、新緑に包まれ、季節が春から夏へと移り変わるさまを全身で感じながら、昔と変わらず続く葵祭の行列を見て、感慨に浸ることができるでしょう。
「路頭の儀」を有料観覧席で眺めながら、平安時代に思いを馳せてはいかがでしょう。
有料観覧席(全席指定・「公式ガイドブック」及び「観覧記念符」付)の購入はこちらから
葵祭「有料観覧席のご案内」|【京都市公式】京都観光Navi
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記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto
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