≪京都の予習≫京都の寺院で出会える雲龍図の秘密に迫ろう

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京都のお寺を参拝したとき、天井や襖絵に描かれる龍に出会ったことはありませんか? これは「雲龍図」とよばれるもので、「法堂」とよばれる建物の天井や襖絵に描かれています。

 古来より、龍は仏法を守護する象徴とされてきました。「仏法の教えを降らす」という意味を込めて、住職が説法を説く法堂の天井には、龍を描く習わしがあるのです。また、龍は水の神ともいわれることから、火災から法堂を守る役割も果たしているのです。

 法堂の天井に描かれる龍は、力強く、躍動感あふれるものばかり。そこで今回は、京都で見られる「雲龍図」のなかでも、スケールが大きい雲龍図に出会える5つの寺院をご紹介します。

2024年の干支は辰!様々な「龍」を鑑賞して運気を上げましょう。

1.狩野派を代表する絵師・狩野探幽が描いた「妙心寺」の雲龍図

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最初にご紹介するのは花園にある「妙心寺」です。建武4年(1337年)に花園法皇が離宮を禅寺に改めたことが起源のお寺です。明智光秀や豊臣家の帰依を受けて発展しました。広大な寺域には46もの塔頭があり、直線状に並ぶ伽藍が印象的です。

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写真提供/妙心寺

こちらの法堂の雲龍図は、江戸時代を代表する絵師・狩野探幽によって描かれたもの。明暦2年(1656年)に法堂が建造された際に、雲龍図も描かれたそうです。完成までに8年を要した大作で、円相の直径は12m。力強いタッチが見る人を惹きつけます。

絵は貝殻や草木の汁を絵具としていて、変色が少ないのが特徴。過去に一度も修復されていないそうです。龍の目は円相の中心に位置していて、見る角度によって「昇り龍」や「下り龍」など、さまざまな動きを見ることができます。

妙心寺

住所:京都市右京区花園妙心寺町1

アクセス:市バス「妙心寺前」からすぐ

電話:075-466-5381

ホームページ:https://www.myoshinji.or.jp/

2.世界遺産「天龍寺」の法堂で出会える八方睨みの龍

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観光客に人気の嵐山。その嵐山で欠かせない観光スポットといえば、世界遺産の「天龍寺」です。暦応2年(1339年)に創建された天龍寺は、国の史跡・特別名勝第1号に指定される曹源池庭園が有名。嵐山の自然と調和したダイナミックな風景が広がります。

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写真提供/天龍寺

法堂の雲龍図は、日本画家・加山又造によって描かれたもの。元禅堂として使われていた法堂には、もともと明治時代の画家・鈴木松年による雲龍図が掲げられていましたが、損傷が激しかったことから、1997年に新しい雲龍図が描かれました。

天龍寺の龍は、中国の皇帝のみが使用されたといわれている「五爪の龍」が描かれています。

杉板159枚を張り合わせ、白土を塗った上に直接墨色で描かれた雲龍図。直径9mの二重円相内に描かれた龍は、どこから見ても睨まれているように見えることから、「八方睨みの龍」とよばれています。参拝できるのは、土日祝と、春・お盆・秋の特別公開のみです。

天龍寺

住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68

アクセス: 嵐電嵐山本線「嵐山」駅から徒歩2分

電話:075-881-1235

ホームページ:http://www.tenryuji.com/

3.龍が鳴く⁉ 現存最古の法堂に描かれた「相国寺」の蟠龍図

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写真提供/相国寺

「相国寺」は夢窓疎石を開山とする、臨済宗相国寺派の大本山。金閣寺を建てたことで知られる足利義満が明徳3年(1392年)に建立しました。また、寺の創建600年を記念して開館した承天閣美術館が併設され、伊藤若冲筆の障壁画などが常設展示されています。

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写真提供/相国寺

相国寺の法堂は現存最古の法堂で、天井には安土桃山時代の絵師・狩野光信による蟠龍図が描かれています。蟠龍とは、天井に昇る前の地上にうずくまっている状態の龍のことで、慶長10年(1605年)の法堂再建の際に描かれたとされています。

法堂内の中央付近で手をたたくと、天井に反響してカラカラと音が鳴るのが特徴。その音が龍の鳴き声のように聞こえることから、「鳴き龍」とも呼ばれています。通常非公開で、春・秋の特別公開のときのみ参拝可能。参拝する際はぜひ龍の下で手をたたいてみてください。

相国寺

住所:京都市上京区相国寺門前町701

アクセス: 地下鉄烏丸線「今出川」駅から徒歩10分

電話:075-231-0301

ホームページ:https://www.shokoku-ji.jp/

4.京都最古の禅寺「建仁寺」で出会える108畳分の双龍図

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建仁2年(1202年)、臨済宗の開祖・栄西禅師が創建した建仁寺。栄西禅師は中国から茶種を持ち帰ったとされる人物で、境内には茶碑と茶苑があります。俵屋宗達の傑作である国宝『風神雷神図屏風』(展示は複製)や、趣の異なる3種類の庭園など、見どころもたくさん。f:id:editplus:20210219173408j:plain

法堂の天井一面に描かれた双龍図は、畳108畳分のスケールを誇る大作。創建800年を記念して、2002年に日本画家・小泉淳作が手がけた水墨画で、約2年の歳月をかけて描かれました。

こちらは「双龍図」の名前のとおり、絡み合うように描かれた二匹の龍が特徴的。片方は口を開け、もう片方は口を閉じた「阿吽」の龍となっています。二匹の迫力は見応え十分で、思わず息をのんでしまいますよ。

建仁寺

住所:京都市東山区東大路松原上ル下弁天町70

アクセス: 市バス「東山安井」から徒歩3分

電話:075-561-6363

ホームページ:https://www.kenninji.jp/

5.石庭で有名な世界遺産「龍安寺」で見られる雲龍図の襖絵

「龍安寺」は宝徳2年(1450年)室町幕府の管領であった細川勝元が、徳大寺家の別荘を譲り受け、妙心寺の義天和尚を開山とし創建しました。

石庭として有名な方丈庭園は白砂に15個の石を配した枯山水の平庭で、「虎の児渡しの庭」とも呼ばれる名庭です。「龍安寺垣」が名高く、秀吉が賞賛したといわれる「侘助椿」もあります。

令和5年(2023)春、元首相の細川護熙氏が約3年かけて描いた「雲龍図」の襖絵40面が完成し、龍安寺に奉納されました。誕生したばかりの幼い龍が老龍になるまでを描いた大作です。※公開情報は、龍安寺の公式HPなどよりご確認ください。

龍安寺

住所:京都市右京区龍安寺御陵下町13

アクセス: 市バス「龍安寺前」下車すぐ

電話:075-463-2216

ホームページ:http://www.ryoanji.jp/

京都の寺院の法堂天井や襖絵に描かれる、個性豊かな5つの雲龍図をご紹介しました。ひとくちに「雲龍図」といっても、作者や描かれた年代がそれぞれ異なり、龍の表情は実にさまざま。それぞれ見比べて、自分の好みの雲龍図を探してみるのも楽しいかもしれません。

また、法堂に龍が描かれる意味や、作者についてすこし予習しておけば、実際に見たときの感動もひとしお。雲龍図の見え方もきっと違ってくると思いますし、寺院巡りがさらに興味深いものになるはずですよ。

取材・編集:JTBパブリッシング/Kyoto Love.Kyoto

5.京都市所在の主な龍図(京都総合観光案内所調べ)

最新のリストは、以下のリンクからご覧ください。
京都市内の主な龍図

<参考>
辰年の守り本尊がある社寺、龍神信仰の社寺など、
2024年の辰年にちなんだ京都市内の社寺一覧は、以下のリンクからご覧ください。
2024年(令和6年・辰歳)干支まいり



 

この記事を書いた人:るるぶ編集部

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全国各地の「見る」「食べる」「遊ぶ」を徹底的にガイドした旅行情報誌『るるぶ』の編集部です。神社仏閣やグルメ、おみやげ、話題のニュースポットなど、京都のお出かけにかかせない情報を幅広く網羅。旅行者はもちろん、地元の方にも役立つ情報を日々チェック!

記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto

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