ウィズコロナ時代の今、京都市の多くの施設では、安心安全にサービスを提供するためのさまざまな工夫がされています(2021年3月現在)。
第1弾【Withコロナ時代のおもてなし①】では、京都市内の劇場、レンタサイクル、公共交通機関(京都市バス)の対策をご紹介しました。今回は、人力車、神社、料亭で取り組まれている感染症対策を紹介します。
それぞれの施設が、提供するサービスに合わせて、工夫した対策をとられています。お出かけ前の事前情報としてはもちろん、外出先や自宅でできる感染症対策の参考にもなるはず。ぜひ役立ててみてくださいね。
1.学問の神様「北野天満宮」の工夫を凝らした対策
学問の神様・菅原道真公を祀る「北野天満宮」。全国天満宮総本社として知られ、地元の人には「天神さん」の愛称で親しまれています。
春は梅、初夏は青もみじ、秋は紅葉と、季節ごとに美しい光景が楽しめる「天神さん」。老若男女問わず、多くの方が訪れる神社だからこそ、安心して参拝してもらえるようにさまざまな感染症対策が実施されています。参拝順路に沿って、その内容を見ていきましょう。
お参りの前に、まずは手水舎へ。以前はこちらに柄杓が置かれていましたが、現在柄杓は撤去され、柄杓を使わずに手指を清められるようになっています。柄杓を置かない手水舎を華やかにと、季節の花で手水舎を彩る「花手水」が始まったそうです。
ちなみにこの「花手水」ですが、古くは、手水の代わりに草花の露で手を清めることを「花手水」とよんでいたそう。現在の「花手水」も、美しいだけでなく、清めの所作の意味が込められています。
それでは、道真公をおまつりする御本殿をお参りしましょう。いつもと変わらない光景に見えますが、不特定多数の人が触るものを減らすことを目的に、鈴を鳴らす鈴緒が外されています。社殿だけでなく、境内にある50以上の摂社すべて鈴緒が外されているのだそうです。
天神さんといえば「撫牛(なでうし)」。牛は天神様のお使いとされ、境内のあちこちに牛の像を見つけることができます。この牛を撫でるとご利益があるとされ、この撫牛を目当てに訪れる人も多いのではないでしょうか。
2021年は丑年ということから、「参拝者の方々にいつも通り撫牛を撫でてもらおう」と、2020年12月、境内の十数頭の撫牛に抗ウイルス・抗菌加工が施されました。さらに消毒液も設置されていますので、撫でる前後には必ず消毒もするようにしましょう。
撫牛と同様に、抗ウイルス・抗菌加工が施されているのがおみくじ。おみくじの筒はもちろん、中に入っているみくじ棒1本1本もすべて抗ウイルス・抗菌加工が施されています。
また、「どうしても触るのは抵抗がある…」という人のために、心の中に浮かんだ数字を受け付けで申し出る、という方法も行われています。とても工夫された取り組みですね。おみくじやお守りを授与する巫女さんは、マスクはもちろん、フェイスシールドと手袋も着用。内側と参拝者との間にはパネルが取り付けられており、飛沫防止の徹底した対策がとられています。
北野天満宮といえば梅の名所として有名。梅の開花時期には梅苑も公開されます(2021年は3月14日に閉苑)。梅苑に入る前には一人一人検温を実施されていました。
また、例年は梅苑内でお茶とお菓子が供され、みなさん梅を眺めながら床几でのんびりいただくのがお決まり。ですが、今年は受付で「できるだけお持ち帰りください」と声掛けしながら、お菓子を配布するスタイルに変更されていました。
いずれも、マスク着用など各自が基本的な対策を行いながら、安全に神社を参拝しましょう。
北野天満宮
住所:京都市上京区馬喰町
アクセス:市バス「北野天満宮前」からすぐ
電話:075-461-0005
2.一度は乗りたい!「京都人力車 えびす屋」の取り組み
観光客に人気の「京都人力車 えびす屋」。気さくな俥夫さんのガイドを聞きながら、少し高い視点で京都観光を楽しむことができます。京都では、日本を代表する景勝地である嵐山エリアと、趣ある祇園の街並みや有名社寺が見どころの東山エリアに店舗があります。
「京都人力車 えびす屋」は、その乗り心地はもちろん、俥夫さんの楽しいガイドも魅力のひとつ。ガイドと写真撮影を交えつつ、観光スポットを巡ってくれます。
また、屋外を走る人力車は、自然と三密を避けて楽しめるレジャー。俥夫さんが穴場を紹介してくれることもあるので、三密を避けながらより深い京都観光ができそうです。さらに乗車も2人までなので、家族や親しい友人同士といった個人旅行にもぴったりですね。
そんな「京都人力車 えびす屋」でも、俥夫さんの対策はもちろん、人力車の取り扱いなど、さまざまな感染症対策の取り組みが行われています。
まずは、人力車を引く俥夫さんの対策です。車夫さんは毎日朝礼後に検温を実施。37.5度を基準に稼働の可否を判断しています。また、検温と併せて、マスク装着チェックも行っています。
現場ではマスク装着が必須。人力車の走行案内時は、飛沫防止となるスポーツタイプのマウスカバーや、通気性の良い布タイプ、フェイスガードなどを併用しています。
人力車の車体は、完全清掃と除菌を徹底。お客さまが利用・降車するごとに、手すりなどの手指接触部位はもちろん、座席や毛氈などもアルコール除菌を行っています。
もちろん、俥夫さんだけでなく、お客さまも乗車前の手指除菌を実施。各車体にも消毒液の携帯スプレーボトルを配置しているので、乗車する前には手指除菌が必須となっています。
屋外で楽しむ人力車は、三密になる心配が少ないレジャーではありますが、それでもリスクを回避するための対策がとられています。安心・安全な環境で、京都観光を楽しみたいですね。
京都人力車 えびす屋(嵐山總本店)
住所:京都市嵯峨中ノ島町(渡月橋付近)
アクセス:嵐電「嵐山」駅から徒歩2分(渡月橋付近)
電話:075-864-4444
ホームページ:http://www.ebisuya.com/
3.お客さまも従業員も安全に。西陣の料亭「京料理 萬重」の対策
続いては、料亭の対策についてです。紹介するのは、織物の町として知られる西陣に店を構える「京料理 萬重」。創業80年を超える料亭で、現在は二代目主人の田村國勝さんと若主人の田村圭吾さん親子が、その暖簾を守っています。
風格ある佇まいのお店に入ると、庭に面した座敷や囲炉裏のある部屋など、さまざまな部屋が用意されています。従業員の方の対応や部屋の環境づくりなど、どのような対策を取られているのか紹介します。
エントランスを抜けてお店に入ると、お客さまの玄関ホールには除菌機が設置されていました。こちらでは光触媒フィルター搭載の除菌機を選ばれています。
続いて玄関ホールでは、検温と手指の消毒が行われます。検温には非接触型検温機、消毒には消毒液自動噴射器が設置されているので、どちらも非接触で行うことが可能。使い方などは、担当の方が説明してくれます。
また、玄関ホールには不織布マスクも設置されています。マスクを忘れた方はもちろん、交換したいという方も利用することができます。
各部屋には、加湿機能を搭載した空気清浄加湿器、そして空気循環を良くするためのサーキュレーターが設置されています。
さらに、CO2モニターが設置されているのも特徴的。感染症対策の一つとして「換気」があげられますが、このモニターはその換気のタイミングを知らせるもの。室内のCO2濃度がモニターに表示されるので、「CO2濃度が一定基準を超える」=「換気のタイミング」と分かるようになっています。
このモニターを見ながら、換気扇を利用したり窓を開けたりして、室内空気の入れ替えが行われるので、お客さまも部屋の空気状況を知ることができます。
モニターの設置や換気だけでなく、部屋の席作りにも工夫があります。従来よりも広めの部屋を使用し、お客さま同士の間隔を広くあけた席作りを実践。空間をゆったり使って、最低限のディスタンスを守ることができるようになっています。
従業員の方は、マスクの着用と手指の殺菌洗浄、アルコール消毒が徹底されています。部屋のテーブルなどはもちろん、お手洗いや玄関ホールに設置された消毒液など、皮膚接触物の消毒も小まめに行われています。
お客さまに安心して過ごしてもらえるよう、玄関でのお迎えから部屋での対応、従業員の方の対策まで、徹底した取り組みが行われていました。お店を訪れる際は消毒や換気などに協力し、従業員の方も安心・安全に対応してもらえるよう、お互いに協力していきたいですね。
京料理 萬重
住所:京都市上京区大宮通今出川上ル芝大宮町9-1
アクセス:市バス「堀川上立売」から徒歩3分
電話:075-441-2131
今回は京都市内の神社、人力車、料亭の3つの施設で行われている感染症対策に注目しました。スタッフのマスク着用や小まめな消毒、換気はもちろん、不特定多数の人が接触するものの抗ウイルス・抗菌加工、CO2モニターの設置など、さまざまな対策がとられていました。
私たちも外出するときは、マスク着用や手洗いなど基本的な対策を徹底しながら、誰もが安心して施設を利用できるように行動したいものです。自分自身はもちろん、大切な人の健康を守るためにも、安心・安全を常に心がけ、計画を立てていきたいですね。
取材・編集:JTBパブリッシング
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この記事を書いた人:るるぶ編集部
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全国各地の「見る」「食べる」「遊ぶ」を徹底的にガイドした旅行情報誌『るるぶ』の編集部です。神社仏閣やグルメ、おみやげ、話題のニュースポットなど、京都のお出かけにかかせない情報を幅広く網羅。旅行者はもちろん、地元の方にも役立つ情報を日々チェック!