【京都観光の予習】これだけは知っておきたい寺院の基礎知識

京都には有名な寺院がたくさんあります。参拝はもちろん、絵画などの寺宝を拝観したり、お庭の鑑賞をしたりと、寺院ならではの様々な楽しみ方がありますよね。寺院の建築様式や建造物について知ると、より深く味わうことができますよ。

京都は千年以上の長いあいだ都であったため、仏教の普及の中で各宗派の本山が集まっており多くの寺院が建立されてきた歴史があります。

平安京が開かれた頃の京都は、新しい寺院の建設や平城京からの移転が禁止されていたため、平安京守護のために創建された東寺など、限られた寺院しかありませんでした。時代を経るにつれ、天皇や貴族が御願寺として寺を建立し始め、その数がどんどん増えていきました。
しかし戦国時代には多くの寺院が戦場となり、焼亡・荒廃の憂き目にあいます。江戸時代になると徳川幕府の援助で多くの寺院が再興・復興し、寺院文化が栄えました。

寺院の基礎知識

寺院の建築様式

唐様の建築

日本の古建築には様々な種類があります。「和様(わよう)」は日本の伝統様式で、高床、穏やかな勾配の屋根などが特徴です。中国の宋から入ったものには「大仏様(だいぶつよう)」や「唐様(からよう)」(禅宗様)などがあります。
「大仏様」は貫を多用した豪快な意匠が特徴です。奈良の東大寺の再建に使われました。鎌倉時代には「和様」に「大仏様」の一部を取り入れ、「新和様」が生まれました。京都では大報恩寺(千本釈迦堂)や醍醐寺金堂が有名です。
「唐様」は、繊細な技法が特徴で、東福寺禅堂や大徳寺仏殿、妙心寺法堂などさまざまな禅寺で見ることができます。やがて、「唐様」に「大仏様」をまじえるなど、2つ以上の様式をまじえた「折衷様(せっちゅうよう)」も増えていきます。

屋根の形と葺き方の種類

屋根の形で、最も古典的なのは「切妻(きりつま)造」です。ちょうど本を開いてかぶせたような形です。また仏教の伝来とともに、そのお堂の屋根として大陸から伝わったとされるのが、屋根の4面全てが瓦で敷き詰められている「寄棟(よせむね)造」。その「寄棟造」が正方形の建物の屋根である場合は「宝形(ほうぎょう)造」と呼びます。そして「切妻造」と「寄棟造」を組み合わせた「入母屋(いりもや)造」。この4つが屋根の基本形といえます。
また、屋根の上の葺き方には「瓦葺(かわらぶ)き」のほかに植物系の「檜皮(ひわだ)葺き」「板葺き」などがあります。「板葺き」は1枚1枚の板の厚さによって、「栩(とち)葺き」「杮(こけら)葺き」「木賊(とくさ)葺き」などがありますが、よく見かけるのは「杮葺き」です。よく劇場のお披露目を「杮落(こけらおと)し」といいますが、それは屋根に残った板の屑を下に落し、建物をきれいな状態にして始めることから生まれた表現なのです。

寺院にある建物

寺院の中にはたくさんの建物がありますが、それぞれにどのような役割があるのかご説明します。

三門(さんもん)

「山門」は寺院にある門すべてを指しますが、「三門」と表記されているものは本山級の禅宗寺院に見られる独特で巨大な門のことです。「三」は「空」「無相」「無作」という悟りに至る3つの境地を指しています。「二重門」という構造で2階建てになっており、1階と2階の間に屋根が無い場合は「楼門(ろうもん)※」と呼びます。
※「楼」とは2階建て以上の高層建築を指す漢字です。

2階の内部には仏像や羅漢像などが安置され、天井・柱・壁には仏国浄土の様子が描かれています。龍が本尊を守護し、天女が宙を舞い、上半身が人間で下半身が鳥という「迦陵頻伽(かりょうびんが)」という生き物も描かれています。麒麟(きりん)やマカラ(インド神話に登場するワニに似た海獣)など想像上の動物も数多く描かれており、とても豪華できらびやかな空間になっていることが多いです。

「塔」は「卒塔婆(そとば)」を略したものです。「卒塔婆」とはサンスクリット語の「ストゥーパ」を漢字に訳した単語であり、「仏舎利塔」(お釈迦様の骨を祀るところ)という意味があります。

お釈迦様が亡くなった頃のインドではまだ仏像がなかったので、お釈迦様の足跡を型取りした「仏足跡」や「仏舎利」(お釈迦様の骨)を信仰の対象にしていました。日本に仏教が伝わった初期には、寺院の中心に塔が置かれていましたが、しだいに「金堂」(本尊を安置するお堂)が中心になる配置に変化していき、塔は境内の隅に置かれるようになりました。

鐘楼(しょうろう)

梵鐘(ぼんしょう)という大きな鐘を吊るすお堂のことを「鐘楼」といいます。朝夕の時報や行事の合図など時を知らせるために使われます。大晦日の「除夜の鐘」で108回撞かれるのが有名ですね。

仏殿(金堂)・法堂(講堂)

「仏殿(ぶつでん)」は御本尊を安置するためのお堂です。禅宗寺院以外の宗派では「金堂(こんどう)」と呼ばれます。如来(仏)のことを「金人(きんじん)」とも呼ぶことからきています。

「法堂(はっとう)」は法を説くためのお堂で、僧侶たちが説法を聴く学習の場です。龍が仏法を守護するとされ、天井に龍が描かれていることが多いです。禅宗寺院以外の宗派では「講堂(こうどう)」と呼ばれます。

塔頭(たっちゅう)

「塔」とは「お墓」のことを指します。本来はお釈迦様の墓のみを指しましたが、やがて広くお墓一般を指すようになりました。本山のトップである住持や高僧が引退、あるいは亡くなると、本山の境内地に小さな寺院を造り、隠居され、御墓の中で眠り、弟子たちが守っていくようになりました。今では塔頭寺院は家族単位で生活している場合が多いようですが、もとは隠居所または墓という役割です。
安土桃山時代以降は、有力な戦国武将達がこぞって、一族の京都での菩提寺にしようと、塔頭造営のために寄進(寄付)をするようになりました。特に大徳寺では黒田家ゆかりの「龍光院(りょうこういん)」、畠山氏ゆかりの「興臨院(こうりんいん)」、細川家ゆかりの「高桐院(こうとういん)」、毛利家・小早川家ゆかりの「黄梅院(おうばいいん)」など武将ゆかりの塔頭が多くあります。

その他

方丈(ほうじょう)

もともとは住職の住まいであり、客間として用いることもあります。

東司(とうす)

禅宗ではトイレを「東司(とうす)」・「西浄(せいじょう)」と呼んでいました。大きな寺院では1ヶ所では足りないので東と西に置かれていたのです。

庫裏(くり)

寺院の台所であり住空間で、禅宗では韋駄天がまつられていることが多くあります。足の速い韋駄天が、お釈迦様のために四方八方を駆け回って食物を集めたという話がもとになっており、台所の守り神とされています。

食堂(じきどう)

僧が食事をする部屋です。

経蔵(きょうぞう)

お経が納められているお堂です。

浴室(よくしつ)

蒸気に身体をさらして垢を浮かせ、きれいさっぱりするという「サウナ」方式でした。

寺院などの古建築に見られる特徴

蟇股(かえるまた)

梁(はり・横の柱)と梁の間に挟まり、屋根の力を下に伝えていく役割を果たしている部分です。カエルの股のように見えることから、その名がつきました。日本建築独特のものです。

懸魚(げぎょ)

屋根の破風板部分に取り付けられた妻飾りのことです。屋根のデリケートな部分から雨水が入ったり、その部分の腐食を防ぐための実用的な意味があります。デザインのルーツは魚で、水に住む生きものなので防火の意味が込められてます。中国から伝わってきたもので、現在でも雲南省の民家では魚をデザイン化したものを屋根に付けているようです。

破風(はふ)

「破風(はふ)」とは、屋根の切れ目の部分で、屋根に付属する部分は「妻」と呼びますが、風があたる枠の部分を「破風」といいます。屋根の形状と連動して「切妻(きりつま)破風」「入母屋(いりもや)破風」、曲線状になった「唐(から)破風」などの種類があります。

 

※本記事で取り上げた名称や由来など諸説あります。

参考文献
「京都」×わカル - 京都の伝統・文化・暮らしのガイド 京都市産業観光局観光MICE推進室
知識ゼロからの京都の古寺入門 佐々木昇 幻冬舎
仏教美術入門6 仏教美術の広がり 濱田隆・西川杏太郎 平凡社 
たびカル 京都のお寺 JTBパブリッシング

記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto

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京都の街、そして京都にかかわる人たちの役に立ちたい。そんな想いを原点に、人と人、人と地域との交流のなかで見つけた物語をまちかどの語り部たちが発信しています。智恵の循環が紡ぎ出す、京都人でもよく知らない京都、そして深遠なる京都の魅力を伝えていきます。

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