京都で出会える絵画~代表的な絵師と鑑賞できる施設一覧~

京都で神社仏閣を拝観すると、有名な絵師による襖絵や障壁画、天井画、掛軸、屏風絵などを見る機会が多くあります。京都の美術史や代表的な画家(絵師)、どこでどのような絵画に出会えるのかなどを簡単にご紹介します。

京都の美術史

平安時代から室町時代

京都では、平安時代に仏画を中心とした仏教美術が発達しました。鎌倉時代には中国から水墨画が伝わり、室町時代には明兆(みんちょう)、如拙(じょせつ)、雪舟、狩野派の初代である狩野正信などが活躍しました。

明兆:東福寺の画僧。「画聖」と称されました。代表作は「五百羅漢図」

如拙:相国寺の画僧。代表作は「瓢鮎図(ひょうねんず) 」

雪舟:相国寺・東福寺で修行した画僧。その後、山口に移ります。明(みん)にも渡り本格的な水墨画を研究し、山水画や花鳥図を得意としました。代表作は「天橋立図」

狩野正信:室町幕府に御用絵師として仕えた狩野派の祖。代表作は「周茂叔愛蓮図(しゅうもしゅくあいれんず)」

戦国時代から江戸時代

京都の街中を描く「洛中洛外図」が多く制作されています。江戸時代になって狩野派の拠点が京都から江戸に移りましたが、狩野山楽(さんらく)は京都に残り「京狩野」として幕末まで活躍しました。
このころ琳派(りんぱ)の俵屋宗達(たわらやそうたつ)、長谷川等伯らの華やかな障壁画や屏風絵が生み出されました。

江戸時代後期には「文人画」(中国の高級官僚が描いていた絵画のこと)で有名な与謝蕪村(よさぶそん)や池大雅(いけのたいが)が活躍。「写生画」では円山応挙(まるやまおうきょ)を中心にした「円山派」が全盛期をむかえた後、呉春(ごしゅん)から始まる「四条派」が人気になり、京都の商家では特に好まれました。動植物画で有名な伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)もこの時代の絵師です。ゆかりのある錦市場では、お店のシャッターやタペストリーに若冲の絵画をみることができます。

狩野山楽:武士の家柄ですが、狩野永徳に弟子入りし改姓。豊臣秀吉のお抱え絵師として仕えました。代表作は「牡丹図」

俵屋宗達:裕福な町衆で「俵屋」という絵屋を営み、公家や社寺に扇絵や障壁画を描きました。対象を大胆にデフォルメするデザインや「たらし込み」技法が特徴です。代表作は「風神雷神図屏風」

長谷川等伯:もともとは狩野派の絵師でしたが、独立し長谷川派を立ち上げ豊臣秀吉や千利休に重用されました。代表作は「楓図」

与謝蕪村:俳人であり画家。日本的自然観を加味した色彩のやわらかい文人画を描きました。代表作は「夜色楼台図」

池大雅:幼い頃から才能を発揮し、萬福寺に出入りして中国文化を学びました。中国南宗画に、日本のさまざまな画派や西洋画の表現も取り入れて独自の画風を確立。旅や登山を好み、現実感あふれるのびやかな山水画を描きました。代表作は「楼閣山水図屏風」

円山応挙:石田幽汀(ゆうてい)に狩野派を学び、洋画の透視図法や中国画の技法を学び取り入れました。写生を重視した独自の画風を確立し、京都の町衆から庇護をうけました。代表作は「雪松図屛風」

呉春:与謝蕪村から俳諧と絵画を学んだ後、円山応挙から写生画を学びました。軽妙で洒脱みのある新しい画風で、京都の市民層に歓迎されています。京都四条付近に住んでいたため四条派と呼ばれました。代表作は「白梅図屏風」

伊藤若冲:錦小路の青物問屋の長男に生まれましたが商売になじまず絵画制作に没頭しました。写実性と幻想性をあわせもった個性的な画風が特徴です。花鳥画や水墨画が得意。代表作は「動植綵絵(どうしょくさいえ)」

明治以降

明治時代には幸野楳嶺(こうのばいれい)が京都府画学校の設立と教育に尽力し、たくさんの画家が輩出されました。その弟子である竹内栖鳳(たけうちせいほう)は近代日本画壇を代表する画家で、動物を描けばその匂いまで描くと賞賛されています。京都駅近くに移転した京都市立芸術大学は、京都府画学校の流れを汲んでいます。

幸野楳嶺:円山派、四条派を学び、写生に基づきつつも情感のある花鳥画などを描きました。後進の教育に力を入れ、近代京都画壇の父と呼ばれています。代表作は「妓女図」

竹内栖鳳:幸野楳嶺の私塾で京都伝統の写生画法を学び、展覧会でも受賞を重ね高い評価をうけます。西洋の画法を意欲的に取り入れ、日本画の近代化に取り組みました。徹底した観察と写生、卓越した描写力に優れており、「西の栖鳳、東の大観」と称されました。代表作は「絵になる最初」

寺院または施設で見られる絵画

・建仁寺「風神雷神図屏風」俵屋宗達 ※複製

建仁寺は京都最初の禅寺であり、室町時代には京都五山の1つに選ばれた名刹です。
「風神雷神図屏風」は国宝であり、俵屋宗達の最高傑作です。二曲一双の屏風の全面に金箔が押され、風神と雷神が描かれています。原本は京都国立博物館に寄託されていますが、建仁寺では高精細複製作品の屏風絵を鑑賞することができます。

住所:京都市東山区大和大路通四条下る小松町
ホームページ:https://www.kenninji.jp/

「風神雷神図屏風」画像提供:建仁寺
・養源院「白象図」「唐獅子図」俵屋宗達

養源院は、淀殿が父である浅井長政の追善のため創建した寺院です。
白象や唐獅子、麒麟など珍しい動物が大胆な筆遣いで描かれた杉戸絵が鑑賞できます。

住所:京都市東山区三十三間堂廻り町656
ホームページ:https://yougenin.jp/

・妙心寺退蔵院「瓢鮎図(ひょうねんず)」※複製

退蔵院は妙心寺の塔頭(たっちゅう)です。
「瓢鮎図(ひょうねんず)は国宝であり、山水画の始祖といわれる如拙の最高傑作です。捕まえにくいなまずを瓢箪で捕まえようとするという禅の公案を描いています。境内には狩野元信が作庭したといわれる「元信の庭」があります。

住所:京都市右京区花園妙心寺町35
ホームページ:http://www.taizoin.com/

・智積院「楓図・桜図」長谷川等伯・久蔵

智積院は紀州根来山の学頭寺院が発祥で、多くの学僧を生み出した寺院です。
「楓図・桜図」は国宝であり、金箔をふんだんに使った絢爛豪華な障壁画です。楓図は長谷川等伯、桜図は息子の久蔵によって描かれています。宝物館で見ることができます。

住所:京都府京都市東山区東瓦町964番地
ホームページ:https://chisan.or.jp

・二条城「松鷹図」狩野山楽 ※模写

二条城は江戸幕府初代将軍である徳川家康が築城した城で、幕末大政奉還の舞台になったことで知られています。
二の丸御殿「大広間」の壁面には天井近くまで届く大きな松が描かれています。実物より大きく表現された鷹や鷲は将軍の武勇と徳川幕府の権力を象徴しています。現在、大広間に展示されている「松鷹図」の障壁画は模写ですが、「二条城障壁画展示収蔵館」では年4回ほど異なるテーマで障壁画の公開をしており、ガラス越しに原画を鑑賞することができます。

住所:京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
ホームページ:https://nijo-jocastle.city.kyoto.lg.jp/

「松鷹図」画像提供:二条城
・大覚寺「牡丹図」「紅梅図」狩野山楽※複製

平安時代に嵯峨天皇の離宮として建立された寺院です。
原本は霊宝館に保管されていますが、宸殿(しんでん)の牡丹の間には「牡丹図」、紅梅の間には「紅梅図」の複製の障壁画が飾られています。
柔らかな牡丹の花と力強い岩の表現の対比が見事な作品です。


住所:京都府京都市右京区嵯峨大沢町4
ホームページ:https://www.daikakuji.or.jp/

「牡丹図」画像提供:大覚寺
・神護寺「伝源頼朝像・伝平重盛像」

神護寺はもともと和気氏の氏寺で、真言宗の古刹です。
「伝源頼朝像・伝平重盛像」は国宝で、鎌倉前期の大和絵肖像画の代表的な傑作です。宝物虫払い行事として、毎年5月1日から5日間限定で特別公開されています。

住所:京都市右京区梅ヶ畑高雄町5番地
ホームページ:https://www.jingoji.or.jp/

・弘源寺「竹内栖鳳一門の日本画」

弘源寺は天龍寺の塔頭寺院です。かつて竹内栖鳳と親交があり、竹内一門の襖絵や扇絵を多数所持しています。「栖鳳寺」とも呼ばれていました。日本画は春・秋の特別拝観で鑑賞することができます。2024年の特別拝観は3月16日~5月16日です。

住所:京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町65
ホームページ:https://kogenji.jp/

画像提供:弘源寺

京都の主な美術館

・京都国立博物館

主に平安時代から江戸時代にかけての京都ゆかりの文化財を中心に所蔵し、展示されています。書跡・金工・漆工・絵巻・絵画・染織・陶磁・考古・彫刻など幅広い分野の展示が楽しめます。
住所:京都市東山区茶屋町527
ホームページ:https://www.kyohaku.go.jp/

・京都国立近代美術館

京都を含む西日本の美術に重点を置き、絵画や彫刻のみならず、版画、各種工芸、デザイン、建築、写真を幅広く所蔵し展示されています。
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町26-1 
ホームページ:https://www.momak.go.jp/

・京都府立堂本印象美術館

大正から昭和にかけて京都で活躍した日本画家・堂本印象の作品を主に展示する美術館です。外観から内装まで印象自らのデザインで建てられています。
住所:京都市北区平野上柳町26-3
ホームページ:https://insho-domoto.com/

・京都市京セラ美術館

近代以降の京都の美術(絵画、彫刻、版画、工芸、書)が所蔵されており、コレクションの中核を成すのは京都画壇の作品群です。現存する日本最古の公立美術館建築で、2020年に改修されリニューアルオープンしました。
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
ホームページ:https://kyotocity-kyocera.museum/

・相国寺承天閣美術館

相国寺は、如拙・周文・雪舟などの画僧を多く輩出してきました。中近世の墨蹟・絵画・茶道具を中心に、伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯などのすぐれた文化財が多く収蔵されています。

住所:京都府京都市上京区今出川通烏丸東入
ホームページ:https://www.shokoku-ji.jp/museum/

・福田美術館

江戸時代から近代にかけての、京都画壇など有名な日本画家の作品を多数所蔵しています。「たとえ美術に詳しくない方が見ても、感動を覚えるような」作品がコンセプトです。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
ホームページ:https://fukuda-art-museum.jp

・細見美術館

実業家の細見古香庵に始まる細見家三代の蒐集品が基礎となり、神道・仏教美術、茶の湯の美術、琳派・伊藤若冲などの江戸絵画が多く収蔵・展示されています。
住所:京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
ホームページ:https://www.emuseum.or.jp

・京都市学校歴史博物館

京都の番組小学校に関する資料が展示されている博物館です。番組小学校ゆかりの学校美術品の展示コーナーがあり、日本画や工芸品などの貴重な作品が月替わりで鑑賞できます。

住所:京都市下京区御幸町通仏光寺下る橘町437
ホームページ:http://kyo-gakurehaku.jp

開催中・開催予定の主な展覧会

福田美術館 進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち
2024年1月18日(木)~4月7日(日)
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=9190

京都国立近代美術館 没後100年 富岡鉄斎
2024年4月2日(火)~5月26日(日)
https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionarchive/2024/457.html

京都国立博物館 特別展 雪舟伝説ー「画聖(カリスマ)」の誕生ー
2024年4月13日(土)~5月26日(日)
https://www.kyohaku.go.jp/jp/exhibitions/special/sesshu_2024/

京都観光の際にはぜひ京都ゆかりの絵画に触れて、現代まで連綿と受け継がれてきた「美」の世界を感じてくださいね。

 

参考文献

WEBサイト「フィールド・ミュージアム京都」文化史解説シート18 京都の絵画 文人画と写生画
はじめての近代日本画 京都画壇のスゴイ画家と作品! 平成31年1月発行 発行 京都文化力プロジェクト実行委員会 
・収蔵品図録 若冲と京の画家たち 静岡県立美術館

 

記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto

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