※鳥獣人物戯画(レプリカ)と清滝川指月橋の合成写真です
京都市の北西、山あいにある紅葉の名所
2022年秋のJR東海「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンでも注目が高まる高雄エリアは、京都市内の北西部にあります。市内を時計の文字盤に見立てると10時ごろの方向。仁和寺や金閣寺のさらに奥、周山街道を北へ進んだ山間部にあります。
主な見どころは高雄の神護寺(じんごじ)、槇尾の西明寺(さいみょうじ)、そして栂尾の高山寺(こうさんじ)(世界文化遺産)の3寺院。いずれも平安期前後に起源をもつ古刹で、多くの国宝、重要文化財などを有することでも知られています。とりわけ「伝 源頼朝像」(神護寺・国宝)や、漫画のルーツとも言われる「鳥獣人物戯画」(高山寺・国宝)などは有名で、教科書でもお馴染みです。いずれも現地で実物を見ることはできませんが、寺域には国宝指定の建造物や重要文化財指定の仏像も多く、境内をのんびり散策するだけでもその歴史の深さや崇高な空気にふれることができます。
高雄の見どころは寺院だけにとどまりません。高雄、槇尾、栂尾の3つの「尾(雄)」にちなんで「三尾(さんび)」とも呼ばれてきたこのエリアは、市内に先駆けてもみじが色づく名所としても親しまれてきました。まばゆいほどの黄色から鮮やかなオレンジ色、そして濃く、深みのある紅へと、奥行きのある美しいグラデーションは気温差のある山間部ならではの彩り。周山街道から望む谷あいも古き良き日本の懐かしい風景を思わせ、真紅のもみじとともに道中、私たちの目を楽しませてくれます。
高雄へはどうやって行くの? おすすめの行き方は?
高雄エリアには京都市バスやJRバスで行くことができます。紅葉シーズンは駐車場などが混み合うので公共交通機関のバスがおすすめ。バスは京都市内の主要箇所から乗車できます。所要時間の目安は以下のとおりです。
- 京都駅からJRバスで約50分
- 四条烏丸から市バス8系統で約45分
- 二条駅からJRバスで約30分
- 太秦天神川駅から市バス8系統で約20分
京都駅からスタートするおすすめの行き方
京都駅からJR嵯峨野線で3つ目の「二条」駅で下車し、高雄行きのバスに乗り換えるルートです。京都駅発→高雄行きのバスは市内中心部などの渋滞しがちなエリアを通るため、それを避けた二条駅経由が好アクセスです。
せっかくだから、嵐山エリアや嵐電沿線の名所もあわせて巡りたい! そんな欲張りな方に最適なフリー切符もあります。それについては後ほど詳しく紹介いたします。
世界遺産・高山寺で「鳥獣人物戯画」に出合う
高雄エリアは国宝や重要文化財の宝庫であり、紅葉の名所であることは前記したとおりですが、中でも幅広い年齢層に人気があるのは世界遺産・高山寺と、その寺宝「鳥獣人物戯画」ではないでしょうか。
三尾の中でも一番奥、栂尾にある高山寺は建永元年(1206)に後鳥羽上皇より、その寺域を賜った明恵上人がその名を高山寺と改め、再興したと伝わります。
高山寺が有する寺宝は1万点以上とも言われていますが、中でも代表的なものが国宝「鳥獣人物戯画」です。「鳥獣人物戯画」は平安末期以降に描かれた4巻にわたる絵巻物で、擬人化されたウサギや猿、カエルなどが水遊びや相撲、田楽に興じる様子が有名です。その筆致は実にのびやかで躍動的。飄々としていながらも温かみのある、いきいきとしたタッチです。
実はこの「鳥獣人物戯画」、誰が何のために描いたのかは謎に包まれたまま。セリフもなければ色もないモノクロのパントマイム映画のような世界なので、きちんとしたストーリーがあるのかどうかもわからないのです。だからこそ令和の時代に至ってもなお、見る者の想像力をかきたて多くのファンを魅了し続けています。何より登場するキャラクターたちの人間味あふれる表情がユーモラス。思わずクスッと微笑んでしまう、そのほのぼのとした世界観が「漫画のルーツ」とも言われるゆえんなのでしょう。
高山寺の石水院には原寸板の甲巻(1巻)と縮小板の乙巻、丙巻、丁巻(2巻から4巻)のレプリカが展示されていますので、ぜひじっくりとご覧いただき、そのコミカルな世界観に浸っていただきたいものです。
甘くておいしい鳥獣人物戯画! コラボカフェが登場
さて、そんな「鳥獣人物戯画」の世界が高山寺を飛び出し、カフェメニューとして楽しめることをご存知でしょうか。その名も「鳥獣人物戯画カフェ」。期間限定でオープンしています。
場所は高山寺から徒歩約15分にある料亭旅館「京都 高雄もみぢ家」本館の1階。バスで行くなら高山寺の最寄りのバス停「栂ノ尾」から2つ目の「高雄」バス停から徒歩約1分のところにあります。
うどんやカレーなどの軽食や甘味メニューなどを提供する和カフェ「時の彩(ときのいろどり)」の店内に鳥獣人物戯画があしらわれ、通常メニューに加えて鳥獣人物戯画とのコラボメニュー「戯画カフェセット」が登場しています。
「戯画カフェセット」(1,000円税込)は、コーヒーやカフェラテ、辻利の抹茶ミルクなどのホットドリンクと「鳥獣人物戯画」の一部を焼印した特製フィナンシェ2つがセットになったもの。50円アップで冷たいドリンクも選べます。
注目は鳥獣人物戯画が焼印されたフィナンシェ。約4cm角のやや大きいフィナンシェに甲巻に登場する“投げ飛ばされたウサギ”と“気炎を上げるカエル”が焼印されています。よく見ると、カエルの背中の模様やウサギの毛並み、表情など、細かいディティールまできちんと再現され、食べるのが少々もったいないようなクオリティーです。
フィナンシェは、京都人にはおなじみの豆腐店・久在屋(きゅうざや)が手がける菓子ブランド「AMAIMON」の豆乳フィナンシェ。希少な在来品種の大豆からできた豆乳やおからパウダー、はちみつといったシンプルな素材でつくられた豆腐屋ならではの焼き菓子で、一口食べると、ほんのり豆乳の風味が漂います。
高雄みやげにぴったりの箱入り鳥獣人物戯画フィナンシェ(3つ入り1,250円)も販売中。
ちなみに、コーヒーカップには鳥獣人物戯画のキャラクターたちと、絵本でおなじみのミッフィーがボール遊びをしたり、語りあう様子が描かれています。時代や国籍をこえた人気キャラクターの夢の共演にも注目です。
鳥獣人物戯画カフェ
実施期間:2022年11月3日(木・祝)~2023年1月31日(火)
営業時間:10:00~19:00
定休日:不定休
場所:京都 高雄もみぢ家 本館1階
お問い合わせ:075-871-1005
話題のビーズソファーに座って川床を楽しむ「ゆる川床」
もみぢ家 別館「川の庵」では、心身ともにリラックスして幸福感に満たされるウェルビーイング(well-being)をコンセプトとした「ゆる川床」も開催中。こちらでも鳥獣人物戯画フィナンシェが食べられます。
「ゆる川床」は、清滝川沿いの川床に設置されたビーズソファーに腰掛け、ゆったりと瀬音や小鳥のさえずりを聞きながら美しい紅葉や趣ある吊り橋の眺望、そしてゆず茶と鳥獣人物戯画フィナンシェのセットを楽しむもの。比較的大きなサイズのビーズソファーはクッション性が高く、しっくりと体になじむため、まるで高雄の自然に包み込まれるような心地よさ。20分おきの交代制ですのでくれぐれも眠ってしまわないようにご注意くださいね。
ウェルビーイングな新体験「ゆる川床」
開催日:2022年11月3日(木・祝)、5日(土)、6日(日)、12日(土)、13日(日)、19日(土)、20日(日)、23日(水・祝)、26日(土)、27日(日)
営業時間:11:00~16:00(20分おきの時間入れ替え制)
場所:京都 高雄もみぢ家 別館
問い合わせ先:075-211-3691
高雄から嵐山へ足をのばすなら「鳥獣戯画きっぷ」がおすすめ
二条駅から片道約30分で行ける、意外と近い高雄エリア。それならばあわせて嵐山にも足をのばしたい! という方におすすめなのが、高山寺の拝観券とJRバス、嵐電(京福電車)のフリー切符などがセットになった「鳥獣戯画きっぷ」です。
「鳥獣戯画きっぷ」の嬉しい4つの特徴は以下のとおり。
- 高山寺の国宝・石水院拝観券、入山券付き ※12月5日以降、入山券はつきません
- 京都駅からバス停「栂ノ尾」間のJRバスが1日乗り放題
- 嵐電全線1日乗り放題。しかも「嵐電1日フリーきっぷ」と同様に、嵐電沿線の社寺で割引や粗品進呈などの特典も受けられる!
- 切符の券面に「鳥獣人物戯画」の一部がデザインされているだけでなく、鳥獣人物戯画のオリジナルチケットケースももらえる! ※券面デザイン、オリジナルチケットケースのデザインは選べません。
通常であれば高雄までバスで往復460円(片道230円)、高山寺の入山券が500円、石水院拝観券が800円、嵐電に2回乗ったら440円(1回乗車220円)で、ここまでで合計2,200円です。これにチケットケースがついてくるわけですから、かなりお得です!
旅というのは思いがけない出会いや寄り道が楽しいもの。気の向くまま足の向くまま、まるで鳥獣人物戯画のウサギや猿になった気分でゆったりのんびり高雄&嵐山旅を楽しむなら、このフリー切符がおすすめです。ぜひこの秋は、鳥獣人物戯画づくしのお得でステキな旅を満喫してください。
「鳥獣戯画きっぷ」について
販売期間:2023年3月31日(金)まで
販売価格:
12月4日(日)まで1枚2,200円
12月5日(月)以降は1枚1,600円 ※いずれも大人も子供も同一料金
発売場所:西日本JRバス京都バスチケットセンター(JR京都駅中央口前)、嵐電「四条大宮」駅、「帷子ノ辻」駅、「嵐山」駅、「北野白梅町」駅
お問い合わせ先:西日本ジェイアールバス京都営業所 TEL.075-672-2851 (受付9:00~17:30)
京福電気鉄道鉄道部運輸課 TEL. 075-801-2511
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記事を書いた人:五島 望
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東京都生まれ、京都在住のライター・企画編集者。
京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社に漫画編集者等で勤務。29歳で再び京都へ戻り、編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。紙媒体、Web、アプリ、SNS運用など幅広く手掛ける。