【初心者向けレポ】新選組 ×「京の夏の旅」特別公開に行ってきた!

京都の夏の魅力をギュッと詰め込んだ「京の夏の旅」キャンペーンが始まっています。
2023年は結成160年を迎えた新選組&世界遺産をテーマに、普段は見ることができない文化財などが期間限定で特別公開! でも、「そもそも新選組って何をした人たちだっけ?」「断片的にしかわからない…」、という人も多いことでしょう。そんな方のために「京の夏の旅」の壬生(みぶ)エリアにおける新選組特別公開のアツイ見どころをわかりやすく解説♪ 160年前の新選組結成秘話や池田屋事件などと共に紹介いたします。

新選組の主要メンバー、近藤勇と土方歳三は関東の農家の生まれ

新選組の中心的存在である近藤勇(こんどういさみ)と土方歳三(ひじかたとしぞう)は江戸の農家に生まれました。当時の日本はペリー来航、将軍の跡目争い、そして安政の大獄など世情はてんやわんや。豪農たちは一揆や物盗りを恐れ、独自に道場をつくり用心棒を育成していたようです。そうした時流もあってか、農家の出であった近藤勇も熱心に剣術を学び、天然理心流の道場「試衛館(しえいかん)」を継ぎます。無二の同志となる土方歳三ともそこで出会うのです。

新選組のルーツは将軍警護のための「浪士組」だったが…

そんな試衛館にある日、「浪士組」隊士募集の知らせが届きます。「浪士組」の目的は京へ行く将軍の警護。しかも入隊にあたって年齢、身分は不問。近藤勇、土方歳三も自らの力を活かせるチャンスと見て京へ行くことを決意したのでした。

この「浪士組」結成を幕府に提案したのが庄内藩出身の清河八郎(きよかわはちろう)。
当時、過激な武士に手を焼いていた幕府は、この策によって体良く彼らを厄介払いできると清河の提言を受け入れたと言われています。
しかし清河の真の目的は別にありました。清河は密かに「浪士組」を尊王攘夷運動に利用しようと考えていたのです。

新徳寺・前住職が描かれた清河八郎の肖像

清河八郎の大演説  新選組誕生のきっかけ

1863年(文久3年)2月、234名の浪士たちが京都・壬生村(みぶむら)に到着します。そしてその夜、「浪士組」幹部の宿所であった新徳寺(しんとくじ)の本堂にメンバー浪士が集められ、清河八郎から「浪士組」の本当の目的は将軍警護ではなく尊王攘夷であると告げられます(※諸説あります)

清河八郎の演説に対し近藤勇や土方歳三らは目的が違うと清河と決別。江戸へ戻る清河一派と分離する形でそのまま京に残り、幕府権力の維持を目的とした「壬生浪士組(みぶろうしぐみ)」を立ち上げました。これがのちの新選組となるのです。

新徳寺

あの日、ここに近藤勇や土方歳三がいた! 「京の夏の旅」初公開の新徳寺・本堂

清河八郎が「浪士組」を結成しなければ、新徳寺の本堂で演説しなければ、今、私たちが知るような新選組は誕生していなかったかもしれません。近藤勇や土方歳三にとって京における最初のターニングポイントと言えるのではないでしょうか。

御本尊・准胝観音菩薩像

そんな最初の舞台となった新徳寺・本堂が、「京の夏の旅」で初公開されています。
京都駅からJR嵯峨野線「丹波口」駅下車徒歩11分、京都市バスなら20分程度のところにある新徳寺は、江戸中期開山の臨済宗永源寺派の寺院。本堂中央に御本尊の准胝観音菩薩像(じゅんていかんのんぼさつぞう)、その右奥には“屋根葺地蔵”(やねふきじぞう)の愛称で親しまれる地蔵菩薩像が鎮座します。

屋根葺地蔵尊
※特別な許可を得て撮影しています。実際の拝観時は、屋根葺地蔵尊の写真撮影はできません。

同寺の御本尊やお地蔵様に見守られ、清河八郎も演説したのでしょうか。現在の本堂や内部に残る燭台は当時のままと伝えられていますから、清河八郎や近藤勇、土方歳三らがこの空間にいたのだと思うと感慨深いものがあります。また、御本尊の両サイドに置かれている近藤勇と土方歳三の肖像画にも注目。これらは前住職がお描きになったというから驚きです。まるでそこに2人が座っているような臨場感と緊張感。耳を澄ませば清河八郎の熱のこもった演説が聞こえてくるようです。

ここであの演説が…。新徳寺・本堂の様子
※特別な許可を得て撮影しています。実際の拝観時は、御本尊、仏像の写真撮影はできません。

地蔵信仰の古寺で新選組が行ったトンデモ訓練とは

「壬生浪士組」として新たなスタートを切った近藤勇や土方歳三らは、壬生界隈を拠点に活動し始めます。特に新徳寺の向かいにある壬生寺(みぶでら)は、新選組の足跡をたどる上で欠かせない場所。「京の夏の旅」では、本堂・展観室・壬生塚(歴史資料室)の3箇所が特別公開されています。

壬生寺の創建は平安期までさかのぼります。本堂にまつられている御本尊「延命地蔵菩薩立像」(重要文化財)は平安前期に作られた日本最古級の地蔵尊で、今夏その貴重なお姿を拝むことができます。節分や春秋期には「壬生狂言」(重要無形民俗文化財)が行われ、多くの善男善女で賑わうことでも有名です。

本堂で公開中の屏風絵。新選組が壬生狂言を鑑賞する様子が描かれている。

そんな壬生寺の境内で新選組は毎月4と9がつく日、つまり月に6回程度、武芸や戦術の稽古を行なっていたと伝わります。中でも驚きなのが大砲の訓練です。まさか、と思いたくなるような内容ですが、それを裏付ける資料が壬生寺・展観室で公開されています。

新選組・隊服(復元)も展示されています。麻素材で目にも涼やか
※特別な許可を得て撮影しています。実際の拝観時、展観室内は写真撮影できません。

壬生寺・本堂の奥にある展観室では「京の夏の旅」に合わせて、新選組のトレードマークとも言える“だんだら模様”の羽織(復元)や、近藤勇、土方歳三ゆかりの刀剣などが展示されているほか、当時壬生寺が朝廷へ提出した嘆願書も見ることができます。
そこには、境内で調練を引き受ける上での約束が守られておらず、中でも大砲を用いた訓練は、その大きな振動で屋根瓦はゆるみ、障子などに破損が生じている…といった切実な主張が記されています。

特別公開中の嘆願書

本堂の前に大きな砂山を築き、表門からその砂山めがけて大砲を打っていたと伝わりますから、瓦や障子のいたみはもちろん、堂内の御本尊を思えば、当時のご住職の胸の内はいかばかりか。周辺住民もさぞや気をもんだことでしょう。

ARで撮影した大砲。思ったよりもリアルです!

壬生寺で大砲訓練なんて、令和を生きる私たちは想像することしかできませんが、なんと現代の「AR」技術でそれを擬似体験することができます。お手持ちのスマートフォンやタブレットを使って壬生寺の表門あたりを映すと画面に大砲が出現! 写真を撮ることができる壬生寺オリジナル企画です。ぜひこの機会に新選組の大砲訓練を体感してみてください。
ARの詳細は壬生寺ホームページをご覧ください。

もう1人じゃない…新たに建立された土方歳三像

壬生寺の最後にご紹介するのは今夏イチオシの胸アツスポット、壬生塚です。同地は近藤勇の胸像と遺髪塚、隊士11名がまつられるなど、新選組ファンの聖地とも言うべき場所ですが、そこに今年、新選組結成160年を記念して新たに土方歳三の胸像が建立されました。

土方歳三といえば軍服を着た洋髪ショートヘア姿が有名ですが、このたび建てられた土方像は和装で総髪姿。ポニーテールのようなヘアスタイルの若き土方が再現されています。
長年、壬生塚で1人だった近藤像も、同じ志を胸に幕末期を奔走した土方と肩を並べることができて威厳を増したような気がします。ぜひこの機会に会いに行ってください。

近藤勇像もちょっと嬉しそう?

新たに建立された土方像(正面からのお姿は、ぜひ壬生寺で!)

池田屋事件のきっかけとなった人物の捕縛と拷問

さて、話は戻って幕末期の新選組。京都守護職から市中のパトロールと不逞浪士の取り締まりを任され、活動していた新選組は、壬生村にある複数の商家などを屯所(宿所)としていました。そのうちの1つ、旧前川邸の東の蔵が「京の夏の旅」で特別公開されています。

旧前川邸は壬生寺から徒歩約1分のところにある旧家で、1863年(文久3年)から約2年間、新選組の屯所に利用されていました。

「京の夏の旅」で初公開となる旧前川邸の東の蔵

1864年(元治元年)6月、新選組は長州派の古高俊太郎(ふるたかしゅんたろう)を捕らえます。土方歳三は新選組の屯所であった前川邸・東の蔵で古高を拷問するなどして、反乱の企てを知ります。急を要すると判断した新選組は手分けして市中の旅籠をしらみつぶしに調べ上げ、三条木屋町の池田屋に集う尊王攘夷派の志士たちを発見。援軍を待たずに突入し、「池田屋事件」が勃発します。
この事件によって新選組は名を挙げ、爆発的に隊士が増えたと伝わります。しかしこの後、時流は一気に明治維新へと加速していくのです。

初めての一般公開! 旧前川邸・東の蔵ではここを見よ! 見逃せないポイント

古高俊太郎が拷問を受けた旧前川邸・東の蔵は、1839年(天保10年)建築と伝わります。西の蔵が味噌蔵だったのに対し、東の蔵は貴重品の保管庫でした。それを物語るかのように東の蔵の正面扉は四重のつくり。さらに蔵の中に1歩踏み入れると、音や気流がピタリと止まっているような不思議な印象を受けました。分厚い壁や太い梁などによって堅固かつ、密閉された空間を体感できるのです。当時の土方歳三も頑丈で音が漏れにくい蔵は拷問に好適と、目をつけたのかもしれません。

箱階段が美しい東の蔵1階

蔵は2階建てで、外から見るよりも中は広い印象です。1階の床板の一部が外せるようになっており、その床下は重要書類や千両箱などの隠し金庫として利用されていました。
その隠し金庫の真上にある2階の床も開けられるようになっていて、2階から1階、そして床下の隠し金庫までまっすぐ見通せるようになっています。ちょっとした吹き抜けのような状態です。ここに2階の梁から荷物昇降用の荒縄を吊るし、重い荷の上げ下ろしをしていたようです。この工夫が凝らされた蔵のつくり、荒縄がポイントです。

2階から地下の隠し金庫まで見える

こうした巧妙な蔵のつくり、2階から吊るされた荒縄を利用して、土方歳三は捕らえた古高俊太郎を逆さ吊りにし、激しく拷問したと伝わります。しかも現在も残る滑車は当時のもの。いろいろと想像するだけでゾッとしますが、手っ取り早く情報を聞き出したかった土方の機転だったのかもしれません。

大の男を吊るせる丈夫な滑車

ちなみに東の蔵の2階窓からは、同じく新選組の屯所だった向かいの八木邸が網目越しに見えます。

東の蔵の外に展示してある刀傷もお見逃しなく

この他にも、東の蔵の正面入り口近くには二太刀の刀傷が残された出格子も展示されています。剣術稽古の際につけられた傷か、はたまた酒に酔って斬り付けた跡か…想像は膨らみます。

今回「京の夏の旅」で見学できるのは旧前川邸の母家ではなく東の蔵ですが、土方歳三はじめ多くの新選組隊士の足跡が感じられると共に、何より池田屋事件の発端となった歴史的な現場に足を踏み入れられる貴重な機会。じっくりご覧いただきたいものです。

涼しい観光バスコースもある! 「京の夏の旅」キャンペーンまとめ

今回、取材した3箇所は「京の夏の旅」特別公開のごく一部。新選組ゆかりの地のほか、世界遺産など、この時期にしか見られない文化財などが多数公開されています。ただ、京都の夏は暑い! 暑さを避けて効率よく回りたいという方には定期観光バスによる特別コースがおすすめです。涼しいバス旅でラクラク新選組を満喫してみてはいかがでしょう。

定期観光バス特別コースの詳細はこちら

第48回「京の夏の旅」キャンペーン

新選組結成160年&世界遺産 9箇所で文化財特別公開中!

【公開期間】2023年7月8日(土)~9月30日(土)
【公開時間】10:00~16:30(16:00受付終了)
※一部公開期間・時間・各見学箇所の料金などが異なります。

詳しくはこちら
第48回 京の夏の旅(2023年7月~9月開催)|【京都市公式】京都観光Navi

「京の夏の旅」パンフレット、またはホームページ画面を呈示すると割引や記念品などのプレゼントがもらえる「観光施設とくとくサービス」も実施中。

詳しくはこちら
観光施設とくとくサービス|第48回 京の夏の旅(2023年7月~9月開催)|【京都市公式】京都観光Navi

徒歩や京都市バス等で巡られる方も、くれぐれも暑さ対策は万全に。時々、休憩しながら楽しんでくださいね。ちなみに壬生寺のすぐ北にある「だんだら珈琲店」では、新選組の羽織のだんだら模様をモチーフにしたソフトクリームがあります。かわいい、おいしい、冷たい♪の3拍子でおすすめ。
新徳寺、壬生寺、そして旧前川邸・東の蔵の特別公開と共にぜひチェックしてみてください。

浅葱色がかわいい「だんだらクッキーソフト」

<だんだら珈琲店>
住所:京都府京都市中京区壬生梛ノ宮町26
電話:075-812-0312
営業時間:10:30〜17:00頃
定休日:不定休
公式SNS:https://www.instagram.com/312dandara/
※「京の夏の旅」観光施設とくとくサービスの対象ではありません。

※文化財保護のため、素足での拝観はご遠慮ください。
※写真は内覧会にて特別な許可を得て撮影しています。
※新選組のエピソードに関しては諸説あります。

参考文献
「新選組展2022―史料から辿る足跡」京都文化博物館、福島県立博物館 企画・編集
「京都新選組案内―物語と史跡」武山峯久著(創元社)

 

記事を書いた人:五島 望

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東京都生まれ、京都在住のライター・企画編集者。
京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社に漫画編集者等で勤務。29歳で再び京都へ戻り、編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。紙媒体、Web、アプリ、SNS運用など幅広く手掛ける。

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