「京都らしいもの」と聞いて、真っ先に抹茶を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。京都には茶道の家元があり、お茶文化が盛んです。「茶道」というとなにやら難しく聞こえますが、基本の考えかたはとってもシンプル。一見高そうな茶道の敷居を、ちょっと跨いでみましょう。
茶道とは
安土桃山時代、千利休が「わび茶」を確立し、そこから今日の茶道が発展しました。現在の茶道には、利休の子孫たちが創設した「三千家」(表千家、裏千家、武者小路千家)をはじめとして、多くの流派があります。
千利休に関して、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
生誕500年!三千家の祖・千利休 ~今も受け継がれる茶聖の精神~ - 京都観光Naviぷらす
お茶の点て方や歩き方などの作法は流派によって少しずつ異なりますが、全てに共通しているのは、利休が唱えたとされる「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の精神です。
これは、簡単に言うと「亭主と客人が、お互い仲良く、敬いあい、目に見える部分だけでなく心も清らかにすることで、穏やかで何事にも動じない心(=寂)に至ることができる」という意味です。茶道では、亭主は客人にお茶を点てて振る舞い、客人は亭主のもてなしに感謝してお茶をいただくということを通して、この「和敬清寂」の精神を身に着けていきます。
茶会での過ごし方
茶会とは、茶道において、抹茶を一服飲むことを中心とする会のことを言います。茶会で飲まれるお茶は一般に「薄茶(うすちゃ)」「お薄」といい、一人一碗で出されます。
「薄茶」に対して、人数分の抹茶を一つの茶碗に練り、回し飲みしていただく「濃茶(こいちゃ)」というものもあり、「濃茶席」を持つ茶会や、茶会より正式な「茶事」という会で出てきます(なお、コロナ禍では回し飲みをせず、一人一碗で出されているようです)。
茶会での作法については、流派ごとの違いもあるので割愛しますが、ここだけは押さえておいたほうがいい!というポイントを3つご紹介します。
① 心身ともに清らかに
・事前に大きい荷物は預ける
・白い靴下を持参して履き替える
茶室や道具を傷つける恐れがあるものは事前に預けておきましょう。また、素足だと畳を傷つけてしまいますし、白い靴下や足袋に履き替えるということは、あらゆる雑念をとりはらい清浄を茶会にもたらす意味があります。心も体も清らかな状態でのぞみましょう。
②亭主・お互いへの気配り(一期一会の茶会の場を大切にする)
・挨拶
・まずお菓子をいただく
・お茶碗は正面をさけていただく
亭主や同席者への気配りを忘れず、感謝の気持ちをこめて挨拶しましょう。
まず、お菓子が出てきますが、お菓子はあくまでお抹茶の「引き立て役」。口の中にほのかにお菓子の甘みが残り、よりお抹茶が美味しくいただけるのです。また、お抹茶が入ったお茶碗は、一番美しくみえるよう正面を向けて運ばれます。お客様側ではその思いに応えるよう「謙遜」として、正面をさけるように回していただきます。
③季節を感じる
・お茶碗、お菓子、掛け軸、お花、お道具から季節を感じる
お菓子も季節に合ったものが出されますし、お茶碗などのお道具も、時候に沿った柄が描かれたものを使用される場合が多いです。目でも季節の移り変わりを感じることができますね。ぜひ、じっくり拝見しましょう。
ここまで読んで、一度、茶会を体験してみたい!と思った方は、茶道体験のできる施設へ行ってみましょう。季節のしつらいやお道具の体験、基礎的な薄茶の立て方、薄茶の飲み方などを教えていただけます。
また、難しい作法はわからないが、京都らしさを感じられる場所でおいしい抹茶を飲んでみたいという方には、お点前なしで気軽に抹茶が頂ける寺社や庭園も京都市内には多くありますよ。
京都市内周辺のお抹茶が飲めるお寺、お庭などの一覧 (お点前なし)
茶室とは
茶室とは、主人が客人を招いて、もてなしのために茶のお点前をする空間のことをいいます。茶室の様式は大きく分けて2種類あり、1つは部屋全体の優美さが特徴の書院茶室、もう1つはつつましさの中の美を重んじる草庵茶室です。コンセプトは違えども、どちらも亭主のもてなしの心を表す空間であることに変わりはありません。
茶室には、いくつかの特徴的な構成要素があります。
① 露地(ろじ)
茶室を囲む庭のことを露地といい、日常の世界と茶室の非日常の世界を分けるはたらきをします。露地の中には、亭主の準備ができるまで客が待つスペースである腰掛待合や、茶室に入る前に手を清める蹲(つくばい)などがあります。
② 躙口(にじりぐち)
60~70㎝四方で作られた、茶室の入り口です。ここを通るときは位の高い人でも頭を下げる格好になり、人はみな平等だということを感じられるように、このような形になっているといわれています。躙口は通常草庵茶室に作られ、書院茶室には通常の立って入る入口があります。
③ 炉(ろ)
茶室の畳の真ん中あたりには、炭火で湯を沸かすための炉が切られています。
④ 床(とこ)
いわゆる床の間のことです。入口を入るとまず目に入る場所にあります。茶会のときは、ここに掛け軸や花を飾ります。
見学可能な茶室
京都は茶道発祥の地であることから、歴史的に重要な茶室が数多くあります。決まった様式の中で、その茶室の主人がどのように自分のもてなしの心を表現したのか想像しながら見比べると楽しいですね。
予約なしで見学可能な主な茶室
高台寺「時雨亭(しぐれてい)」「傘亭(かさてい)」
伏見城の遺構と伝わり、丸太で造られた茅葺き屋根という素朴なたたずまい。桃山時代の自由な茶屋の趣を伝えています。
(※見学は外観のみ、茶室の内部は見学できません)
拝観可能日 年中無休
拝観時間 9時~17時
参考HP:https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=7&tourism_id=281
鹿苑寺(ろくおんじ)※金閣寺「夕佳亭(せっかてい)」
鹿苑寺内の高台にある茶室。「夕」日に映える金閣が特に「佳(よ)」いということから、名が付けられました。
(※外からの見学となります)
拝観可能日 年中無休
拝観時間 9時~17時
参考HP:https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=7&tourism_id=490
京都御苑 「拾翠亭(しゅうすいてい)」
公家の九條家の現存する唯一の建物。数寄屋風書院造りで、2階から池や橋を望むことができる特別なロケーションが魅力です。
拝観可能日 年末、年始を除く毎週木・金・土曜日、葵祭(5/15)、時代祭(10/22)
(※事情により見学できないこともありますのでご注意ください。)
拝観時間 9時半~15時半(見学受付は15時15分まで)
公式HP:https://fng.or.jp/kyoto/place/history/#shusuitei
茶道総合資料館 茶室「又隠」の写し
裏千家の茶道具や文献史料などを中心に展示を行っている美術館。2階には裏千家の代表的な茶室「又隠(ゆういん)」の写しがあり、茶室の内部の様子を知ることができます。
拝観可能日 展覧会開催時のみ見学可能
令和5年裏千家十五代鵬雲斎百寿記念特別展「鵬雲斎の百年」
2023年4月15日(土)~7月2日(日)
休館日 月曜日、第2・4火曜日、展示替期間(5月23日~26日)、7月3日~9月25日は夏季休館
拝観時間 9時半~16時半(入館は16時まで)
公式HP:https://www.urasenke.or.jp/textc/gallery/
※2023年9月26日以降の最新の開館状況については上記ホームページよりご確認ください。
京都は、日本有数の「お茶の都」です。お抹茶をいただくこと、また、貴重な茶室を見学することを通して、ぜひもう一歩茶道に親しんでみてくださいね。