生誕500年!三千家の祖・千利休 ~今も受け継がれる茶聖の精神~

千利休(せんのりきゅう)といえば茶道のお家元である「三千家(さんせんけ)」(表千家(おもてせんけ)・裏千家(うらせんけ)・武者小路千家(むしゃこうじせんけ))の祖として誰もがその名を知っています。2022年はその利休が生まれた年からちょうど500年。この節目に利休の生涯、そして三千家のお膝元である京都との関係についてご紹介します。

千利休像 (堺市博物館所蔵)

商人から茶人に。そして京都へ。

千利休(千宗易15221591)は、大坂の堺で商人の子として生まれました。この頃、堺の商人の間では、商談やコミュニケーションの場として「茶の湯」が流行していました。利休も17歳の頃から茶の湯を習いはじめ、後に武野紹鴎(たけのじょうおう)に師事することで茶の湯を極めるようになり、茶人としての地位を確立します。

利休が茶の道に入った頃は織田信長が台頭してきた時代でもありました。信長は上洛した後、商業の重要拠点である堺にも目をつけ、法外な金銭を要求します。この時、信長とのパイプ役となったのが利休であり、その縁もあって信長に茶の湯の指導をすることになりました。利休が活躍の場を京都に移すようになったのはこの頃、つまり1570年代前半であったと思われます。

北野大茶湯のプロデューサー

その後、豊臣秀吉の天下となっても利休は重用され、秀吉の側近として豊臣政権を支えるようになりました。2人の蜜月の関係を象徴するのが有名な「北野大茶湯(きたのおおちゃのゆ)」です。現在の北野天満宮にあたる地で開かれたこの茶会は、主催者である秀吉とプロデューサー・千利休のコンビで実現しました。この茶会が画期的だったのは、庶民にも参加を呼び掛けたことです。それまで茶の湯は貴族や商人など一部の人々のものとされていましたが、北野大茶湯では身分を問わず「茶碗ひとつを持って来ればOK!」と告知され、民衆はこぞって参加しました。関白秀吉が自ら茶を点てるなどとても和やかで、かつ華やかな茶会でありました。

北野大茶湯之址(京都市上京区 北野天満宮内)

突然の切腹事件

しかし、その後2人の関係は徐々に悪化します。そして迎えた1591年、現在の晴明神社の場所にあった利休屋敷に秀吉の使者が訪れ、なんと利休に切腹を命じるのです。理由は諸説ありますが、「大徳寺に寄進した利休像が秀吉の怒りを買った」説が広く知られています。像が三門の上層に安置されたため、その下を通る秀吉を踏みつけることになると解釈されたのです。こうして利休は69年にわたる生涯に突如として幕を閉じました。

千利休居士聚楽邸跡(京都市上京区)
画像提供:晴明神社

三千家の祖として

利休の死後、その一族は不遇の時代を過ごすことになります。しかし、豊臣から徳川の世になり潮目が変わりました。利休の孫にあたる宗旦(そうたん)の子供たちがそれぞれ大名家に仕えるようになり、三千家の礎を築きます。次男「宗守(そうしゅ)」は、京都の武者小路通に茶室「官休庵(かんきゅうあん)」を建てたことから「武者小路千家」と呼ばれました。三男「宗左(そうさ)」は、「不審菴(ふしんあん)」を建て「表千家」を、四男「宗室(そうしつ)」が「今日庵(こんにちあん)」を建て「裏千家」を創設します。今日庵は父・宗旦邸の北裏にあったことから千家と呼ばれるようになったそうです。当代一の茶人として「茶聖」と称された利休の精神は、この三千家によって連綿と受け継がれ、今日の日本文化の一翼を担っています。

 

 

千利休生誕500年にあわせて、京都では様々な展覧会やイベントが開催されています。

特別展 京(みやこ)に生きる文化 茶の湯 

2022/10/82022/12/4
@京都国立博物館

秋季特別展 裏千家の茶趣歴代宗匠の茶道具・書画を通して 

2022/9/152022/12/4
@茶道資料館

2022年秋季特別展 千利休生誕500年 利休茶の湯の継承 

2022/9/102022/12/11
@公益財団法人 野村文華財団 野村美術館

利休生誕五百年記念 利休と織部 

2022/6/182022/12/11
@一般財団法人 古田織部美術館

利形の守破離利休形の創造と継承 

2022/8/272022/12/25
@樂美術館

大徳寺聚光院  国宝里帰り 特別公開

2022/9/32023/3/26
@大徳寺聚光院

 

参考文献)
歴史人「千利休と戦国の茶の湯」/KKベストセラーズ
京都のナゾ?意外な真実!/八幡和郎&CDI

記事を書いた人:吉川哲史

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一般社団法人 日本ペンクラブ会員。八坂神社中御座三若神輿会 幹事。祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。さまざまな京都ネタを題材に仮説を立てた記事をKyoto love Kyoto. サイトに寄稿中。2021年「西陣がわかれば日本がわかる」を上梓。

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