京都を代表する川
鴨川は全長23キロを誇る京都の顔ともいえる代表的な川です。北区雲ヶ畑(くもがはた)・桟敷岳(さじきがたけ)を源とし、上京区出町付近で高野川と合流します。その後は、市街地東部を南へ貫通して伏見区下鳥羽で桂川と合流し、淀川に流れます。鴨川の名は、高野川との合流点より上流を「賀茂川」または「加茂川」、下流を「鴨川」という表記が慣例ですが、河川法では「鴨川」で統一されています。「賀茂」の名称は上賀茂神社(かみがもじんじゃ(*1))や下鴨神社(しもがもじんじゃ(*2))を奉っていた「賀茂氏」に由来するといわれています。
京の四季を彩る
鴨川にはもうひとつの呼び名がありました。「暴れ川」がそれです。平安時代の鴨川は氾濫を繰り返していて、時の権力者として名を馳せた白河法皇(しらかわほうおう)が、自分の思いのままにならないものの一つとして「鴨川の水」を挙げるほどでした。京都市は南北に急勾配であることや、平安京を造営する際に北山の木が伐採されたことなどが原因とされています。
ときに洪水で猛威を奮うこともあった鴨川ですが、人々は平安時代から鴨川で涼をとる習慣があったようで、私たちに安らぎと憩いを与えてくれました。現在でも春には「半木の道(なからぎのみち)」の紅枝垂桜や秋の紅葉、冬のユリカモメなど、季節の移ろいとともに様々な姿を見せてくれます。とりわけ夏の「納涼床(のうりょうゆか)」は、京の夏の風物詩として賑わいます。
四字熟語の語源となった川
山紫水明。美しい自然の景色を表す言葉です。この四字熟語の語源が京都にあったことをご存じでしょうか。江戸時代の儒学者 頼山陽(らいさんよう)が京都の鴨川沿いに居を構えた際に、部屋から望む鴨川と東山の景観に感銘し、自らの書斎に「山紫水明處(さんしすいめいしょ)」と名づけました。以来、美しい自然風景を指す言葉として山紫水明が定着するようになりました。
京都有数のデートスポット
忘れてはならないのが「鴨川等間隔の法則」です。鴨川の岸辺では、カップルが一定間隔ごとに座る現象のことで、特に三条大橋と四条大橋の間で顕著な例が見られます。自分たちの横に他のカップルが座ると、居心地のいい空間を確保するためか、じわじわと右に左に移ります。この絶妙な距離感が連鎖し、等間隔の図ができあがるというわけです。鴨川は京都のキューピットとして、これからも多くのカップルを見守り続けることでしょう。
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記事を書いた人:吉川哲史
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一般社団法人 日本ペンクラブ会員。八坂神社中御座三若神輿会 幹事。祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。さまざまな京都ネタを題材に仮説を立てた記事をKyoto love Kyoto. サイトに寄稿中。2021年「西陣がわかれば日本がわかる」を上梓。