【祇園祭】神輿渡御の裏側・男衆たちの「弁当」

弁当を「作る」ではなく「打つ」という人々がいます。祇園祭のお神輿にご奉仕する三若神輿会の面々です。京都三条会商店街の中ほどを下がったあたりに佇む三若神輿会の会所では、神様がお乗りになった神輿が渡る717日と24日の朝7時になると、「バシッ!バシッ!」という音が響きわたります。ご近所さんの中には、この音とともに「ああ、今年も祇園さんのお弁当やなあ」と目を覚ます方もいるとか。

そんな早朝からいったい何をしているのでしょうか?会所を覗いてみると。見事なフォーメーションで弁当が出来あがる様が見られました。まず目に入ったのは、炊きたてのご飯を長方形の木型によそう男性の姿でした。木型は筋骨隆々の腕によって大きく振りあげられ、そのまま机に広げられた竹の皮に叩きつけられます。木型を外すと竹の皮の上にはツヤツヤのごはんが四角く盛られていました。この時の音が「バシッ!」なのです。

次にご飯の上にパラパラッと黒ゴマをふりかける人、梅干を乗せる人、黄色いおこうこ(たくあん)を添える人がいて、最後に皮を包み藁で結わえて出来あがり。まるでベルトコンベアに乗せられたかのような流れ作業は、輿丁(よちょう)とよばれる神輿の担ぎ手たちだけで行われます。ジェンダーフリーが叫ばれる現代にあっても、なお神輿は男の世界。みこし弁当も精進潔斎した男衆のみで作られもとい打たれます。

こうして打たれた弁当の数は2,000食近くになります。これらの大半は神輿渡御の休憩時に食されます。「白ご飯+ゴマ+梅干し+おこうこ」の超シンプルなお弁当の気になるお味を輿丁(よちょう/担ぎ手のこと)に尋ねると「お米そのものの美味しさを感じる」「日本人に生まれてよかったと思う瞬間」と大変好評です。「ご飯だけで足りるの?」と聞くと、「真夏の重労働の最中やし、脂っこいもんは喉を通らへん」そうです。もちろん若い輿丁は唐揚げなどサイドメニューでしっかりと栄養補給していますが。

神輿会の会所近隣にも配られるこの弁当は、疫病払いと安産のまじないとして喜ばれています。素朴な味だからこそ輿丁に力を与えてくれる「みこし弁当」はまさしく弁当の原点、日本人の心ではないでしょうか。

一見の価値がある「弁当うち」ですが、衛生面への配慮から一般公開はしておりません。

みこし弁当は関係者のみに支給されるもので、一般販売はしておりません。

 

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記事を書いた人:吉川哲史

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八坂神社中御座 三若神輿会 幹事。祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。さまざまな京都ネタを題材に仮説を立てた記事をKyoto love Kyoto. サイトに寄稿中。2021年「西陣がわかれば日本がわかる」を上梓。一般社団法人 日本ペンクラブ会員。
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