【京都一周トレイル®公式】山と川と町、自由な組み合わせで歩こう!(東山コース後編)

f:id:bankto_htn:20201027102731j:plain※「京都一周トレイル」®は京都一周トレイル会の商標登録です。ご利用される前には事前にご連絡をお願いします。

京都一周トレイルの東山コースは全長約24.6km。入山や下山ルートが数多くあり、「小分け」にして歩くことができます。前編中編では東山コースの南部・中部を紹介しましたが、後編では北部を歩きます。

まず、銀閣寺のやや北に位置する北白川仕伏町を出発し、瓜生山を登り、トレイルを離脱したあとに修学院エリアで町を楽しむるショートコース。さらに、東山コース北端である比叡山の八合目の東山コースの終点までを目指す2つのルートを紹介します。

東山は北に向かうほど、標高が上がって森も深くなります。トレイル上にはいくつもの清流が流れ京都市中に続いています。京都が「水の都」といわれるゆえんは、近隣に水源となる山々があるからだそう。後編ではトレイルと町散策を楽しむとともに、山肌から湧き出る小さな川の源流に出会います。

一緒にコースをめぐるのは、北白川にお住まいのむつみさんと、京都大学大学院生の渓さん。おふたりに、山と町、そして川の源流という秘境探しをしていただきました。

東山東山の穏やかで美しい稜線は、人の寝姿に例えられ「布団着て 寝たる姿や 東山」と詠まれました。南から北へ向かってなだらかに高さを増し、凸凹をつくりながら山並みは続いて、五山の送り火で知られる大文字山、そして最高峰が北端の比叡山です。

東山トレイルマップ※京都一周トレイルコース全体図はこちら

ルートと所要時間

【ルート1】北白川〜修学院/所要時間:約2時間20分(約6km)


【ルート2】一乗寺林道終点〜比叡山/所要時間:約2時間(約4km)


【番外編】もう一歩足を運んで。東山コース周辺ガイド

※所要時間(距離)は目安です。観光・散策時間(距離)は含まれていません。
※本記事は8月・9月に取材しています。日没を考えて、余裕をもったスケジュールを立てましょう。
※途中で体調が悪くなった場合は、無理せずエスケープ(コースから離脱)しましょう。

各コースの公式ガイドマップを、京都駅ビル2階の京都総合観光案内所(京なび)などで販売しています。
ガイドマップ販売店舗一覧:https://ja.kyoto.travel/tourism/article/trail/stores.php

この記事にも登場する「道標」の番号やトレイルのみどころなどを掲載した、トレイル歩行時必携の公式ガイドマップです。
トレイルを歩く前にはぜひご購入ください!

※ガイドマップの売上は、コースの維持補修費用に充当しています。

京都一周トレイルコースの詳しい情報は、京都一周トレイルサイトへ。

【ルート1】北白川〜修学院
所要時間:約2時間20分(約6km)
道標:東山54〜修学院(東山64以降はコース外のため道標なし)

ルート概要:市バス「北白川仕伏町」から、トレイルに入る前に、この地の産土神であった北白川天神宮を訪ねます。東山コースを北に向かい、瓜生山(301m)を越えてから、道標64番の分岐点で枝道の一乗寺林道を下ります。下山した先は「小さな桂離宮」とも称される曼殊院、そしてユニークなお店が点在する修学院の町。山と町を楽しめるルートです。

東山トレイルマップ

1.北白川天神宮は住宅地の中の異界

「北白川仕伏町」バス停北白川天神宮
所要時間:約10分
道標:東山54〜東山53

北白川仕伏町バス停

東山コース後編のスタートは市バス3系統の終点「北白川仕伏町」から。バス停に近いところに市バスの警備員詰所があり、トイレを借りることができます。

北白川天神宮参道

バス停を降りましたが、すぐにトレイルには入らず、まずは北白川天神宮にお参り。白川に架かる石橋は北白川天神宮への参道です。白川は東山北部の山奥に端を発し、蹴上で琵琶湖疏水と合流して市中に清水を届ける清流です。

北白川天神宮

北白川天神宮
北白川天神宮の創建は定かではないが、10世紀以前と推察されている。室町時代の中頃に8代将軍の足利義政が現在の地に社殿を遷して以来、この地の産土神として信仰を集めるようになったという。

2.仙人が住むという瓜生山

北白川天神宮〜一乗寺林道終点
所要時間:約1時間50分
道標:東山53〜東山64

北白川大山祗神社

北白川天神宮でお参りを済ませ、トレイルコースを辿って北へ。道標55番を過ぎ、いよいよ山道となるところに北白川大山祗(おおやまづみ)神社のお社があります。1929年に建てられ、その後、愛媛県に総本社がある大山祗神社の分社になりました。苔が美しいところです。

瓜生山

瓜生山を登り始めると、トレイルには白い花崗岩が目立ちだし、小さな川の底には白い砂が見えるようになります。これらは、白川石、白川砂と言われ、かつては珍重されて石からは灯籠などがつくられ、砂は枯山水の庭園に使われました。

白幽子巌居之跡

江戸時代の初めには瓜生山に仙人が住んでいたと言い伝えられています。その名を白幽子(はくゆうし)。なんと180年から240年も生きたという伝説があります。瓜生山の山腹には、いまも白幽子が暮らした岩窟が残っています。

瓜生山の山頂

瓜生山の山頂に到着。瓜生山には、お釈迦様の生まれた祇園精舎の守護神で、祇園の八坂神社に祀られている「牛頭天王(ごずてんのう)」が、八坂に向かう際に立ち寄ったという伝説があります。牛頭天王は瓜が好きだったことから瓜生山と名づけられたそうです。

3.林道をぬけ小さな桂離宮「曼殊院」へ

一乗寺林道終点〜曼殊院
所要時間:約20分
道標:東山64〜枝道に逸れてコース外へ

一乗寺林道終点

道標64番は「一乗寺林道終点」と名づけられています。右側の登山道は京都一周トレイル東山コースの続きで、この記事のルート2で紹介します。ここでは、まず枝道である左側の林道を下るルートを紹介します。

曼殊院

林道は歩行者だけに開放されており、道幅は広く歩きやすいです。そして、終点は曼殊院。ここは知る人ぞ知る名刹で、境外にもカエデが並木のように植えられ、秋には真っ赤なトンネルのようになります。

曼殊院

曼殊院門跡
平安時代には比叡山延暦寺の一部だった天台宗門跡寺院。現在の地に遷ったのは江戸時代初期。造営にあたっては、桂離宮を創始した八条宮良尚法親王が堂宇を移し始め、桂離宮を完成させたといわれる兄の智忠親王のアドバイスを受けたとされます。そんな離宮(皇族の別邸、別荘)であることから、曼殊院は「小さな桂離宮」という別称もあります。屋形船の形に建てられた小書院は江戸時代初期の建築。その前に開ける枯山水の「鶴亀蓬莱庭園」は通好みの名園です。

4.山好きの店と山小屋の名をもつ古書店を訪ねる

修学院エリア散策
道標:コース外のため道標なし

山道具とごはん麓

曼殊院から少し北に歩くと修学院離宮で、周囲は閑静な住宅街です。近年、離宮の周辺にユニークなお店が続々オープン。その中でも音羽川沿いにある「山道具とごはん 麓」は里山歩きが大好きなご夫婦が始めたお店で、おふたりが気に入った山道具を扱い、さらにサンプルを実際にフィールドで試すサービスも行なう、まさに京都一周トレイルを歩きたいという人のお店です。

今日のごはん

食事は「今日のごはん」と題して日替わりでAとBの2種類。写真はAの定食で、地元修学院界隈のお米、京野菜を使っています。Bのメニューはカレーになり、こちらも地元の野菜が中心になります。

米粉のチーズケーキ

自家製のケーキは米粉を使っています。写真は米粉のチーズケーキ。添えられたブルーベリーは修学院離宮の中で栽培されたもの。お店の方が、農家のおばあさんと一緒に摘んだのだそう。そのほかガトーショコラ、ラムレーズンケーキなど、種類は日によって変わります。

ba hütte.(バヒュッテ)

音羽川に沿ってなだらかな坂道を下ると白川通。交差点から南西に目を向けると淡い銀色の建物が見えるはず。非常に幅が狭く、まる現代アートのような建物です。そこが、ドイツ語で山小屋を意味する「ba hütte.(バヒュッテ)」というお店。古本をメインに雑貨も扱い、ソフトドリンクとアルコール類の立ち飲みもできます。

ba hütte.(バヒュッテ)

お店の北側にカウンターがあり、立ち飲みが可能です。晴れた日は自転車置き場にもなっている奥の野外スペースにも立ち飲み台が出ます。

【ルート2】一乗寺林道終点〜比叡山
所要時間:約2時間(約4km)
道標:東山64〜東山74の区間

ルート概要:道標64番の一乗寺林道終点の分岐点をさらに北上し、東山コースの終点で最高地点でもある道標74番のケーブル比叡駅へ向かうルートです。標高295mから比叡山の約八合目に相当する690mまで登っていくため、東山コースではもっとも登山の雰囲気になります。途中、音羽川の源流に行き着きます。ケーブル比叡駅で下山すると叡山電鉄に連結するので市中へ戻るのにも便利です。

東山トレイルマップ

5.近郊の秘境、音羽川源流で清流に触れる

一乗寺林道終点〜水飲対陣之跡碑
所要時間:約1時間
道標:東山64〜東山69

トレイルマップ

道標64番の一乗寺林道終点の分岐点を、右側の京都一周トレイル東山コーストレイルに進みます。緩やかな登りが続き、のんびりした気分で森林浴が楽しめます。道標67番では滋賀県側へと延びる参詣古道が交差するので注意です。江戸という大都市が生まれ、日本一の標高を誇る富士山が盛んに浮世絵に描かれて各地に知られるようになりましたが、江戸時代以前は山といえば比叡山でした。霊山として全国随一の名声を誇っていたのです。そのため東西から参詣道ができました。

音羽川

比叡山は東山の中でもっとも標高が高い山(最高地点846.3m)。ゆったりとした稜線を持つ遠目にも美しい山であり、豊かな水を蓄える水源の山でもあります。道標67番を過ぎるとすぐに「音羽川」に差し掛かります。比叡山の山中から京都市中へ流れる川としては最大の川です。

音羽川

谷に下りて流れを少し遡ると、山肌から水が湧く源流が見つかりました! 「この湧き水が川になるんですね!」と、歩いたふたりも感慨深げ。大都市近郊で、これだけの登山で川の源流までたどり着けるのは京都ならではのことです。「近郊の秘境」に行き着いた瞬間でした。

水飲対陣之跡碑

音羽川の源流部、道標69番の近くに立つ「水飲対陣之跡碑」が室町時代初期の戦を伝える石碑です。いにしえの勇者たちも音羽川源流の水を飲んだのでしょう。

6.爽快な風と展望がトレイルのゴール

水飲対陣之跡碑〜ケーブル比叡山
所要時間:約1時間
道標:東山69〜東山74

比叡山からの景色

これまでも市中を見下ろせる場所はありましたが、さすが比叡山。ひときわ高いところからの眺望です。道標69番からは勾配が急になってきて、いよいよ登山の雰囲気になります。でも、頑張った人には絶景が待っています。天候に恵まれれば大阪市街の高層ビルまで見晴らせます。

比叡山の山頂

ついに東山コースの終点、ケーブル比叡駅にたどり着きました! 比叡山の山頂部は延暦寺が開かれていることで知られています。延暦寺で修行をする僧侶たちにとって最大の修行が千日回峰行。約1000日間も比叡山の山中を歩く荒業で、古くから千日回峰行のための修行道が山中に開かれてきました。東山コースの一部はその修行道です。

ケーブル比叡駅

東山コースは道標74番が最後ですが、京都一周トレイルは連続していて北山東部コースの道標1番が続いて現れます。今回はケーブル比叡駅から下山。ケーブル比叡駅からケーブル八瀬駅まで所要時間は約9分。乗り物ファン憧れの日本一高低差の大きいケーブルカー路線です。ケーブル八瀬駅から叡山電鉄の八瀬比叡山口駅に接続し、あっというまに市内の中心街へ戻り、旅を終えました。


 京都の山の美しい木々と清流は、まさに秘境! 大都市の近郊にこれほどの美しい自然が、と驚くことでしょう。交通機関とうまく連携した東山コースは、終点まで歩いたあと、自分へのごほうびにケーブルカーで下山することも、もうひと踏ん張り自分の足で下ることもできます。もちろん、世界文化遺産に登録される比叡山延暦寺に見学するというのも可能です。ルートの組み合わせも自由なので、ぜひ何度も訪れて、いろんな楽しみ方を見つけてくださいね。

【番外編】もう一歩足を運んで。東山コース周辺ガイド

京都一周トレイル歩きの際は銭湯もチェック!

修学院エリア散策
道標:コース外のため道標なし

京都は学生の町でもあるため、銭湯文化が健在です。トレイルを歩き、いい汗をかいたら銭湯でリフレッシュして夕暮れの町へ。そんなルート設計が楽にできるのも京都一周トレイルの隠れた魅力。関東では富士山の銭湯絵が当たり前ですが、京都の銭湯にはあまり見かけないのをご存知ですか? 関西からは富士山が見えないので、身近ではないんです。今回は、曼殊院への枝道を下った先にある銭湯をご紹介。

地元の人にも愛される「雲母湯」でさっぱり

雲母湯

曼殊院の西にある「雲母湯(きららゆ)」。比叡山の南側の登山口である雲母坂(きららざか)にちなんだ店名です。水風呂、電気風呂、ジェット風呂、塩風呂、サウナなど、バリエーション豊富! 広々とした浴槽で常連の方たちのにぎやかな会話に耳を傾けながら、トレイル歩き疲れを癒やしましょう。のれんをくぐって外に出ると、目の前に広がるのはトレイルで歩いた山々が見えます。きっと感慨深いはず。

今回登場したスポット

※新型コロナウイルスの影響により、営業時間が異なる場合がございますので、事前に各スポットHPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。

北白川天神宮
住所:京都市左京区北白川仕伏町42-1
電話番号:075-781-8488

大山祇神社
住所:京都市左京区北白川瓜生山町2-83

曼殊院門跡
住所:京都市左京区一乗寺竹ノ内町42
電話番号:075-781-5010
拝観時間:9:00〜17:00(受付は16:30まで)
拝観料:一般600円、高校500円、中小学生400円
休日:年中無休
ホームページ:https://www.manshuinmonzeki.jp/index.html

山道具とごはん 麓
住所:京都市左京区修学院茶屋ノ前町15-25
電話番号:090-2198-0898
営業時間:11:00~18:00(土日は19:00まで)
定休日:火曜日、水曜日(臨時休業あり)
ホームページ:https://rokukyoto.shopinfo.jp/
※山道具のサンプルを試したい方は事前に電話連絡のうえ要相談。

ba hütte.(バヒュッテ)
住所:京都市左京区山端壱町田町38
電話番号:075-746-5387
営業時間:13:00~19:00
定休日:火曜日、水曜日
ホームページ:https://bahutte.com

雲母湯
住所:京都市左京区一乗寺西浦畑町53
電話番号:075-708-3196
営業時間:14:30~24:00
定休日:年中無休
ホームページ:https://1010.kyoto/spot/kirarayu/

 

企画編集:滝沢守生(株式会社ヨンロクニ)、光川貴浩、長谷川茉由(合同会社バンクトゥ)
ライター:藍野裕之
モデル:梅棹むつみ、安田渓
バナー作成:金原由佳(合同会社バンクトゥ)
写真撮影:外山亮介(ルート1の1〜2章、ルート2)、白井孝明(ルート1の3〜4章、番外編)
協力:京都一周トレイル会、東岳志(「山食音」店主)

一緒にめぐった人:梅棹 むつみ(うめさお むつみ)

梅棹 むつみ(うめさお むつみ)

兵庫県芦屋市の出身。高校卒業後に京都市内の専門学校に進学し、卒業後は柔道整復師として治療院に勤務。2019年に京都学派の巨星のひとりである梅棹忠夫(1920〜2010。京大教授、国立民族学博物館初代館長を歴任)のお孫さんと結婚して北白川で暮らし始めた。自宅の梅棹忠夫旧邸はカフェ・ロンドクレアント(https://rondokreanto.com/)。

一緒にめぐった人:安田 渓(やすだ けい)

安田 渓(やすだ けい)

東京都渋谷区の出身。大学進学とともに京都に暮らすようになる。京大工学部建築学科から京大大学院に進み建築の研究を続けている。高校時代は山岳部に所属。日本各地の山々を登るとともに、毎年夏に富士山で登山ガイドとして活動してきた。最近はトレイルランニングを始め、京都一周トレイルを主なフィールドにして駆け回っている。

この記事を書いた人:藍野 裕之(あいの ひろゆき)

藍野 裕之(あいの ひろゆき)

ライター・編集者。山岳雑誌、アウトドア雑誌、旅雑誌などに関わってきた。東京に生まれ育ちながら、4年前に一大決心をして憧れだった京都に移住。比叡山の麓に暮らしている。京都一周トレイル東山コースの北部は普段の散歩道でもある。好物は鯖寿司。


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