【京都観光のプロが徹底解説】来年の時代祭が面白くなる!時代祭に込められた思いと衣装の魅力とは?

京都三大祭のひとつ・時代祭 。毎年10月22日に行われるお祭りで、京都御所から平安神宮に向かう行列をひと目見ようと例年多くの人で賑わいます。昨年に引き続き2年連続、今年も中止となってしまった時代祭ですが、そんな今年だからこそ、時代祭のことをもっと知ってみませんか。
時代祭で注目すべきは時代ごとに変わる衣装の数々。でも、そもそも時代祭の行列ってどんな意味があるの?そんな疑問に、今回も京都関連の講演やツアーで日々、京都の魅力をさまざまなかたちで発信するらくたび・若村亮が、来年の時代祭がより一層面白くなるよう、分かりやすくご紹介します。 


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1.時代祭ってどんなお祭り?

―今回のテーマは「時代祭」です。「葵祭」や「祇園祭」と同じように、京都三大祭のひとつなのですよね?
若村:そうですね。「葵祭」や「祇園祭」は素晴らしい歴史や文化があるお祭りですが、「時代祭」は先の2つのお祭りとはまた少し違った魅力がありますよ。「葵祭」や「祇園祭」と同じように「時代祭」にも行列がありますが、この行列こそが時代祭の醍醐味とも言えます。

―行列が醍醐味、とはどういうことでしょうか? 
若村:時代祭の行列は、京都御所から平安神宮まで約2,000人が行列をなして都大路をゆきますが、行列に参加する人たちは皆、各時代の装束をまとっています。なぜ各時代の装束を着た行列なのか、気になりませんか? 

―確かに気になります。どういう意味があるのでしょうか?
若村:その辺りの疑問を今回もたっぷりお話ししましょう。さらに今日は平安神宮の権禰宜・南坊城卓英(みなみぼうじょう たかひで)さんに、時代祭やそのお衣装について教えていただけることになりました。特別にお衣装を見せてもらえるかもしれませんよ!?

―それは楽しみです!南坊城さん、どうぞよろしくお願いいたします!
南坊城さん:こんにちは、よろしくお願いいたします。

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今回時代祭についてたっぷり教えてくれた南坊城さん

若村:なぜ平安神宮の方にお話しを?と思われた方もいるかもしれませんが、実は時代祭は平安神宮のお祭りだからです。

―だから行列は平安神宮に向かうのですね!
若村:その通りです。でも、現在では平安神宮のお祭りとなっていますが、元々はそうではありませんでした。時代祭が始まったのは、明治28年(1895年)のこと。当時「第4回内国勧業博覧会」が行われたのですが、その際に平安遷都1100年を記念して平安京の朝堂院(ちょうどういん)を模した社殿が建てられました。これが現在の平安神宮です。

南坊城さん:遷都1100年記念事業として、幕末維新から平安時代までの各時代の風俗行列が都大路を練り歩く行事が企画されまして、そのことが時代祭の始まりとなりました。

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華やかな装束をまとい巡行する時代祭

―それでは、博覧会のパレードのようなものが、後に平安神宮のお祭りになったということなのでしょうか。
南坊城さん:そうですね、時代祭は博覧会の翌年から平安神宮のお祭りとなりましたが、実は同時に、京都市民のお祭りでもあります。     

―え?市民の?それはどういうことでしょうか。
南坊城さん:そもそも平安神宮は、京都市民全員が氏子である、とされています。なので、平安神宮のお祭りであることはつまり、京都市民のお祭りであることを意味します。この平安神宮の大祭・建造物・神苑の保存のため市民によって作られた組織が「平安講社(へいあんこうしゃ)」と呼ばれる氏子組織となり、現在も行列はこの平安講社の人たち中心に組まれています。

―なるほど。その辺りも市民のお祭りという感じがしますね。市民のお祭りという意識は昔からあるのでしょうか。
若村:時代祭が始まった頃に目を向ければ、明治維新の後、天皇が東京へ移られたことから、京都のまちは人口が減少し、経済が落ち込み、活気を失っていきました。そんな中「第4回内国勧業博覧会」が京都で行われるということで、京都の人たちは、この博覧会に京都の復興への願いをかけました。それまで「博覧会」というと、新しいものを作ってその最新の技術力を見せることに重点を置いてきましたが、京都の人たちは「歴史上の時代装束」を復元してみせることで、京都の千年にも及ぶ歴史と文化をアピールしたわけです。

南坊城さん:昔の装束を現代の技術で作るのではなく、当時の技術を用いて復元することができる、これが京都のすごさだと私は思っています。

―なるほど!あの行列には、京都の人たちの千年分の歴史と文化と技術、そして熱い思いがぎゅっと詰まっているわけですね。

2.時代祭の行列って?

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行列の先頭を行く維新勤王隊列

―行列にはどのような時代のものがあるのでしょうか。
若村:時代祭の行列は明治維新の鼓笛(こてき)を響かせて整然と行進をする維新勤王隊列を先頭に、江戸・安土桃山・室町・吉野・鎌倉・藤原・延暦の各時代の人物が華やかな行列を繰り広げます。先に総勢2,000名の行列だとお話ししましたが、そこには馬70頭、牛2頭、馬車、牛車なども含まれ、総延長2kmにわたる行列の巡行は約2時間にも及びます。

―2時間も!ちなみに時代行列の中には有名な歴史上の人物もいるのでしょうか。
若村:もちろんいますよ。例えば、最初に登場する明治維新時代の「維新志士列」には、幕末の英雄・坂本龍馬をはじめ、桂小五郎や西郷隆盛などの幕末の志士たちが登場します。他にも「織田公上洛列」は、永禄11年(1568年)9月に天下統一のために織田信長が兵を率いて上洛した時の様子で、織田信長のほか、重臣・羽柴秀吉や柴田勝家なども、戦国の乱世には欠かせない人物が登場しますよ。

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戦国武将達が登場する「織田公上洛列」織田信長

―坂本龍馬や織田信長は、歴史が苦手な方もよく知っている人物ですね。
南坊城さん:そうですね。そういった歴史上で自分が好きな人物を探すのも時代祭の楽しみ方のひとつです。

―葵祭ではヒロインとなる斎王代が登場しますが、時代祭にはそうした存在はいないのでしょうか。
若村:時代祭には、江戸、吉野、藤原時代の行列の中に女性の行列があり、やはり京都千年の歴史の中で、その時代のヒロインたちが登場します。例えば「江戸時代婦人列」では、雅な十二単を身にまとう孝明天皇の妹・和宮をはじめ、中村内蔵助の妻や吉野太夫・出雲阿国が登場しますし、「平安時代婦人列」には勇ましい甲冑姿で馬に乗る巴御前をはじめ、女流文学作家の紫式部・清少納言・小野小町が登場しますよ。

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「江戸時代婦人列」に登場する雅やかな和宮

3.時代祭の衣装のみどころって?

―行列のお衣装は、皆さん華やかなのでしょうね! 
南坊城さん:実は面白いエピソードがあって、平成27年(2015年)に江戸時代婦人列に登場する中村内蔵助(くらのすけ)の妻の衣装の一部が新調されたのですが、黒羽二重の小袖の下に着る中着(なかぎ)と呼ばれる衣装で、歩くと黄色い絹製の衣がちらりと見えるのが特徴のシックなお衣装でした。というもの、中村内蔵助は、江戸時代の京都にあった貨幣鋳造所、銀座の責任者で、巨万の富を築いた人物なのですが、京都の豪商の妻たちが衣装比べを催した際、色鮮やかな衣装が多い中で、当時親交のあった尾形光琳のアドバイスにより、あえて黒を基調とした着物を選んだことによって、かえって人々の称賛を得た、と伝わるエピソードにちなんでいるのだそうです。 

若村:必ずしも華やかではない、というところがかえって奥深いですね。

南坊城さん:そうですね。これもまた京都の奥深い歴史が生んだ価値観だと思うと面白いですよね。

―お衣装のこと、もっと知りたくなりました!
南坊城さん:それでは、もう少し深くお話ししますと、当時の時代祭は「観光旅行」の先駆け的な存在だったのではないかと思っていまして。

若村:観光旅行の先駆けですか!

南坊城さん:時代祭は明治28年(1895年)に京都千年の歴史を”見るための行列”としてスタートして、次年度からお祭りとなったわけですが、当時の人たちは、「京都の文化力や技術力を内外に見てもらおう」と力を尽くして準備をすすめ、またその素晴らしさをひと目みようと、多くの人が京都に集まったわけですよね。

若村:確かに!そのようなことは長い歴史の中であまりなかったかもしれませんね。

南坊城さん:とにかく京都の人たちは、「本物」を目指して衣装や道具を作ったそうなのですが、当時はそうした技術をみることで若者の教育であったり、郷土愛を育む目的もあったりしたのではないかなとも思っています。

若村:時代ごとに異なる衣装を用意するのは想像を絶する大変さだったのでは……。

南坊城さん:時代祭の素晴らしいところは、そこですよね。着物も鎧も、各時代の衣装を摸すだけでなく、作り方から素材まで、すべてその時代時代の作り方に則って作られています。

―え!では平安時代の衣装は、平安時代当時と同じ作りになっているということですか?

南坊城さん:その通りです。それができるのはやっぱり京都だからこそで、本当に博物館などに展示されてもおかしくない貴重な衣装ばかりですよ。

若村:そうした技術はどのように伝承されてきたのでしょうか。

南坊城さん:これはまさに時代祭を行うことによっても守られてきたわけです。

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西南戦争の頃に実際に使われていた銃も、行列の小道具のひとつ

―時代祭によって守られてきたとはどういうことでしょうか。

南坊城さん:時代祭の衣装というのは、毎年少しずつ傷んだものを修復したり、新調したりしています。この修復や新調するということが大切な部分で、時代祭があるからこそ、昔の技術を用いて衣装を修復や新調する機会があるわけですよね。

若村:なるほど、なので時代祭の存在そのものが、京都の伝統工芸を守り伝えるということに繋がるのですね。

南坊城さん:その通りです。本当に見えない裏地の部分まで本物にこだわっていて、お衣装を見ていると、京都の人たちの心意気を感じます。例えばこちらは平安中期の清少納言の衣装ですが、襟のところがパリッとしていますよね。これは「板引」という技法が用いられています。

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清少納言の衣装は比較的固さのある生地

南坊城さん:一方こちらの平安初期、百済王明信の衣装はやわらかな質感で、同じ女性の衣装でも時代によって全く作り方が異なるとことが分かっていただけると思います。

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柔らかな風合いの百済王明信の衣装

若村:確かにこれは全く違った印象ですね!時代祭が「動く風俗歴史絵巻」と言われるのも納得です。

―行列は約2,000人とのことでしたが、それだけの人数のお道具となるとどれほどの量になるのでしょうか。

南坊城さん:そうですね……小道具なども合わせると、約12,000点ほどになりますでしょうか。

若村:それは管理するものも大変ですね!

南坊城さん:衣装は自分ひとりでは着ることができないのもたくさんあるので、装束師さんに着せてもらったりして、当日は早朝から慌ただしくしています。行列は約2,000人でも、祭りに関わる人すべて合わせると1万人近い人々が関わっているんですよ!

若村:1万人も!本当に京都市民みんなのお祭りというのも納得させられますね。

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常盤御前が抱く赤ちゃんの牛若丸。かわいらしい顔が描いてあるのは装束屋さんの遊び心

4.来年の時代祭の楽しみ方は?

―昨年今年と、2年連続で行列は中止となりましたが……。
南坊城さん:先ほどもお話しした通り、京都の伝統工芸の技術は、時代祭によって守られているところもあるので、この2年のブランクは本当に大変です。衣装の着方・着せ方も忘れてしまいますから。いつもと同じように時代祭を執り行うことは、本当に大切なことだと改めて感じています。

若村:今年は衣装に関する知識を深めて、来年より一層深く時代祭を楽しんでもらえるとよいですね。来年以降に向けて、お衣装以外にもおすすめの楽しみ方はありますか?

南坊城さん:時代祭は比較的新しいお祭りで、皆さんのお家に残る写真に映っているような、近いご先祖様たちがひとつになって作り上げてきたお祭りです。なので、お祭りを通して、その思いに触れていただければ嬉しく思います。また、時代祭には、学生さんにもご参加のお声掛けをしています。京都は学生のまちでもありますので、もっと多くの学生さんに時代祭に関わっていただけたら、将来京都に愛着を持ってもらえるのではとの思いがあります。

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時代祭への熱い思いを語ってくださった南坊城さん(左)と、らくたび若村(右)

若村:大学を卒業した後、「京都にいた頃、時代祭に参加しました」なんて言うと一目置かれそうですよね!

南坊城さん:そうですね、でも本当に、学生の頃に時代祭に関わって以来、就職して京都を離れても、お祭りの季節には必ず戻ってきてご奉仕くださる方もたくさんいらっしゃいますよ。

若村:そうした地域とのつながりも時代祭の魅力ですね。

―私も来年の時代祭は見る目が変わりそうです!貴重な衣装も見せていただいてありがとうございました!


2021年10月15日(金)~24日(日)には、平安神宮の境内に建つ額殿に時代祭の行列で実際に着用される、各時代の婦人列の衣装や甲冑の一部が特別に展示されます。普段は行列の時にしか見ることができない貴重な衣装を間近で目にする機会です。ぜひ足を運んでみてください。
令和3年度 平安神宮 時代祭特別公開|【京都市公式】京都観光Navi

また、例年時代祭には京都御苑・御池通・神宮道に有料観覧席が設けられ、椅子に座ってゆっくりと行列の姿を楽しめます。お衣装についての解説のある席などもありますので、時代祭ビギナーの方にもおすすめです。


 時代祭「有料観覧席のご案内」|【京都市公式】京都観光Navi


リンク:
時代祭「どんな祭?」|【京都市公式】京都観光Navi

記事を書いた人:若村 亮(わかむら りょう)

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株式会社らくたび 代表取締役

- 洛を旅する - 「 らくたび 」 を創立して京都に特化した事業経営を行い、『 らくたび文庫 』 など京都関連書籍の企画・編集・執筆や、旅行企画プロデュース、各種文化講座の京都関連講演の講師、京町家の魅力発信や活用・維持保存、テレビ・ラジオ番組の出演など、多彩な京都の魅力を広く発信している。著書に、らくたび文庫シリーズ( コトコト )、『京の隠れ名所』(実業之日本社)など多数。

記事を書いた人:らくたび

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株式会社らくたび

京都に特化した事業経営を行い、『 らくたび文庫 』など京都関連書籍の企画・編集・執筆や、旅行企画プロデュース、 各種文化講座の京都学講師、京町家の魅力発信や活用・維持保存、テレビ・ラジオ番組の出演など、多彩な京都の魅力を広く発信している。 また、京都関連の観光施設・商業施設・学校法人・不動産(京町家)事業などのアドバイザー&コンサルタント事業も行っている。

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