【時代祭の裏側】行列の先頭をゆく”維新勤王隊列”~ある日の練習風景から~

時代祭とは

時代祭は京都三大祭のひとつで、平安時代から明治時代までの各時代の衣裳をまとった20列・約2000名の行列が見どころです。
平安遷都1100年を記念して明治28年(1895)にはじまった平安神宮のお祭りで、毎年10月22日に行われます。この日は平安遷都の日なので、京都のお誕生日を祝うお祭りでもあります。平安講社と呼ばれる市民組織として京都市内の学区ごとや団体で、各時代の列を担当しています。

時代祭の基礎については、こちらの記事をご覧ください。

維新勤王隊列とは

撮影:三宅徹

時代祭で、行列の先頭を行くのは「維新勤王隊列(いしんきんのうたいれつ)」。
笛と太鼓を持った楽隊をもつこの部隊は、幕末の戊辰戦争で、山国村(現在の右京区京北エリア)の「山国隊」が官軍(朝廷の軍)に参加した姿を模した列です。

軍装は英国式で、軍鼓を打ち鳴らし、錦の御旗(みはた)を掲げています。錦の御旗とは官軍の旗印、赤地の錦に金色の日像、銀色の月像を刺繍した旗で、天皇から下賜(げし)されたものです。隊長がかぶっている陣笠に掲げられた「魁(さきがけ)」の印は隊の心意気をあらわしています。

士気を鼓舞する軍楽隊としての意味合いもあり、「♪ピーヒャラ、ラッタッタ」と軽快なリズムを奏でて時代祭の先頭を進みます。時代祭の行列は持ち回りで、毎年異なる学区が担当することが多いのですが、維新勤王隊列は毎年同じ学区(朱雀学区)が担当している行列なんです。

モデルとなった「山国隊」とは

幕末の日本では幕府の力が弱り、天皇を中心とした国づくりを目指して新政府が樹立されました。新政府に激しく抵抗する人々を鎮圧する官軍(新政府・朝廷側)に加勢したのが山国村の人々で、「山国隊」を結成して活躍しました。山国村は長い間、皇室直轄の荘園で御所に木材を供したこともあります。皇室とのつながりが深い土地だったため誇りをもって官軍に加わったといわれています。

最初はこの地域の人々が「山国隊」として時代祭に参加していましたが、大正10年(1921)からは京都市中心部の平安講社第八社(朱雀学区)の人々がこの行列を継承し、「維新勤王隊(いしんきんのうたいれつ)」と名前を改めました。

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平安講社第八社・太田理事インタビュー

現在、「維新勤王隊列」を担当している平安講社第八社(朱雀学区)・太田興理事にお話を伺いました。

ー太田さまはいつから時代祭にご奉仕されているのでしょうか?

太田:私は子どもの頃からこの地域に住んでいましたが、最初は縁が無く地域の活動は何もしていなかったんです。しかし結婚して兵庫県の西宮に住んでいたとき、阪神大震災で被災しました。行政がパンクするような状態の中、地域の人々が助け合う姿を目にしたんです。その時、町内会など地域のつながりの大切さに初めて気づきました。

京都に帰ってきたタイミングで近所の方から声をかけてもらって、時代祭や自主防災組織の活動をするようになりました。お祭りは、人を和ませたり地域の人々同士を結びつけるツールになるので、とても大事なものだと考えております。

ー震災を経て地域の活動の大事さを再発見されたんですね。時代祭に向けて、平安講社第八社(朱雀学区)では毎年どのような準備をされているのでしょうか?

太田:8月の第1日曜には衣裳の虫干しがあり、9月20日は維新勤王隊の「入隊式」が行われます。地域の体育館に神棚を設置して、平安神宮の神職さんが来られて神事を行うんです。1か月間、毎晩のように楽器や行進の練習をしますので、事故が起こらないことなどを祈ります。練習の最初と最後には正式な拝礼を行っています。時代祭の練習はただ笛を吹いて歩くだけではなく神事ですので、子どもたちにもそれを伝えたいと思っています。

楽器と行進の練習
画像提供:平安講社第八社

ー1か月、毎晩練習するなんて大変ですね。時代祭に参加されるのは子どもさんが多いのですか?

太田:楽器の演奏を行うのは朱雀学区の中高生の男子がメインですが、立命館大学の学生が参加してくれることもあります。時代考証の兼ね合いがあり、女子の参加は難しいのが現状です。参加する子どもが少なくなっているので、ゆくゆくは朱雀学区に住んでいなくても、朱雀学区に通学していればOKなどルールを変えていく可能性が高いですね。

ーなるほど。より広いエリアで参加を募れるようになると良いですよね。時代祭の見どころのおすすめはありますか?

太田:維新勤王隊の見どころは行進曲の演奏です。1か月練習したメンバーが頑張って演奏しています。「戊辰(ぼしん)行進曲」と「朱雀(すざく)行進曲」という2種類の曲を演奏するのですが、「朱雀行進曲」は行列の最初と最後、御所と平安神宮だけで演奏するものなんです。これを演奏できるのはメンバーの中でも特に上手な選抜チームなんですよ。
これらの行進曲は維新勤王隊を卒業したベテランである「音楽指導員」が各地から地元へ帰ってきて毎年教えてくれます。

ー伝統がしっかり受け継がれてるんですね。朱雀行進曲は是非聴いてみたいです。時代祭全体での見どころはありますか?

当日に衣裳を着ておしまいではなく、しっかり練習して臨むので、時代祭への思い入れはひとしおです。わたしは地域の皆さんの続けてきて良かったなと言う想いを次に伝えたいと思っています。維新勤王隊列は参加者のおじいちゃんやお父さんも同じ体験をしてきたということも多く現代では貴重なものです。

当日に御所へ向かう維新勤王隊
画像提供:平安講社第八社

時代祭を観るときは、当時はこんな衣裳だったんだな、歴史上の人たちはどんな気持ちで歩いていたのかなと時代背景を考えてもらうと楽しく鑑賞できると思います。
当日に買えるパンフレットを読みながら観てもらうとより詳しく理解できますよ。
10月22日の時代祭当日に向けて、京都市民全体がどういう準備をしてきて臨んだのかという気持ちを是非考えてみてください。

ー時代祭当日の華やかさだけでなく、祭を支える人たちの想いを感じたいですね。太田さん有難うございました。時代祭を初めて観られる方も、何度目かの方も、ぜひ各時代の偉人たちや京都の歴史に思いを馳せながらご覧ください。

www.youtube.com

維新勤王隊の行進曲の練習風景をご紹介します。
ぜひ当日、皆さんの頑張りを見に来てくださいね。

 

パンフレット付でゆっくりと座って鑑賞できる有料観覧席は、以下のページをご覧ください。

plus.kyoto.travel


参考文献
時代祭(パンフレット) 平安講社本部
時代祭とわれらの維新勤王隊 平安講社第八社立命班(2020年度立命館大学シチズンシップ・スタディーズⅠ「時代祭応援プロジェクト」)
われらの維新勤王隊 平安講社第八社

 

記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto

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