“茹だるような暑さ” …2025年も日差しが強く、肌が焼けるような夏がやってきました。20年近く京都に住む筆者も、毎年このぐったりするような暑さを身にしみて感じています。鴨川の水景や吹き渡る風、小川の瀬音に“涼”を感じるのもこの季節ならではです。
今回は、そんな京都の夏だからこそ楽しい、上賀茂神社のライトアップと水辺の厄除けもできる“涼”のひとときをピックアップ。知っているとより楽しめるポイントも交えてお伝えしていきます。
京の夏は昼間だけじゃない。夏限定、夜の特別公開もチェック
京都では毎年夏に「京の夏の旅」キャンペーンが実施されています。
7月から9月にかけて、世界的に価値の高い文化遺産や、京都通もうなる旧跡の特別公開、そして坐禅や茶道をちょっと深掘りする文化講座など、多彩なコンテンツが各地で行われます。
そんな「京の夏の旅」が、2025年は記念すべき50回目を迎えます。さらに「昭和100年」という節目を添えて「夏に訪ねたい水景と近代京都の名建築」というテーマで展開。「京の夏の夜の旅」企画のほか、暑さ対策ブース「クーリングスポット」が初登場します。
「京の夏の旅」の中で、筆者が特におすすめしたいのは世界遺産・上賀茂神社(かみがもじんじゃ)で行われる夜間ライトアップ「龍神詣りと足つけ夕涼み」です。
7月14日~23日の夕方から、摂社の特別参拝や、冷たい小川に足をつけて風鈴の音が楽しめます。夜は楼門などがライトアップされ、昼間の上賀茂神社とは一味も二味も違った幽玄な雰囲気を感じられます。
実は、この「龍神詣りと足つけ夕涼み」の開催期間中、京都の夏を代表する祭礼・祇園祭も行われています。せっかくなのであわせて巡るのがおすすめですが、祇園祭は人出が予想されます。暑さと人混みを避けるなら午前中に祇園祭へ、気温が高い時間帯は宿で休憩、夕方ごろから再び外出して上賀茂神社の夕涼みへ繰り出す、という流れが身体への負担も少なくてスムーズかもしれません。
では、上賀茂神社の基本情報とともに、イベントの見どころなどを紹介していきましょう。
古代より崇敬を集める雷神と龍神
上賀茂神社は、京都駅を背に北を向いて12時の方向、京都府立植物園がある北山エリアよりもさらに北にあります。正式には賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)という名で、雷や水を司る神、賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)を祀ります。
奈良期にはすでに創建されていた歴史ある神社で、世界文化遺産にも指定されています。広々とした境内を流れる「ならの小川」は浅瀬の穏やかな清流で地域の憩いの場でもあります。
その「ならの小川」などで行われるのが「龍神詣りと足つけ夕涼み」です。
「龍神」とは、上賀茂神社の摂社「新宮神社」の御祭神である、水を司る「高龗神」(たかおかみのかみ)のこと。通常は月2回しか開門しない知る人ぞ知る古社ですが期間中は夜間特別に門が開かれ、お社近くで参拝できるほか、巫女が神楽「賀茂の舞」を奉納したり、優雅な篠笛の演奏も予定されています(巫女の舞は1日3回)。
また「足つけ夕涼み」では、この期間のみしつらえられた1000個以上の風鈴のもとで「ならの小川」に足を浸し、風鈴の軽やかな音色やライトアップされた水辺の景色が楽しめます。
「ならの小川」といえば、鎌倉初期の公家・藤原家隆(ふじわらのいえたか)が詠んだ歌をご存知でしょうか。
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
みそぎぞ夏の しるしなりける
ーー藤原家隆(ふじわらのいえたか)
上賀茂神社の「ならの小川」で「みそぎ」をする——罪・けがれを祓うために水で洗い清める神事の情景が託された清々しい歌です。
上賀茂神社では6月に夏越大祓があり、「ならの小川」で人形流しが行われます。
季節の行事「6月夏越の祓」の詳細はこちら(京都観光Navi)
楽しく涼やかに、京の夏の風物詩「足つけ」を体験してみてはいかがでしょう。
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=12057
※夜間の拝観です。足元には十分ご注意ください。
※「ならの小川の足つけ」をされる方へ
・小川の増水で「足つけ」できない場合があります。
・裸足で小川に入ることはできません。会場で用意されている履物を履くか、濡れても良いサンダル等をご持参ください。また足拭き用タオル等のご用意をお勧めします。
夜のカフェで一休み。移動がラクなタクシープランも。
「龍神詣りと足つけ夕涼み」の期間中は、上賀茂神社の神職が内庭・本殿・権殿を案内する、夜の「参拝ツアー」も実施されます(1日3回、Web予約優先)。
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=12060
また、上賀茂神社の休憩処「神山湧水珈琲 煎」がこの期間だけ夜も営業(18:00~20:00 臨時休業の可能性あり)するので、こちらも注目です。同店は上賀茂神社の社務所近くにあるコーヒースタンドで、御祭神が降臨した神山(こうやま)の湧水で淹れたコーヒーが飲めると話題です。
上賀茂神社の他にも、以下の2箇所で夜間特別公開が行われます。
・世界遺産 仁和寺 観音堂の夜間特別公開と境内ライトアップ
7/11(金)〜21(月・祝)18:30〜21:00(18:00受付開始、20:30受付終了)
・旧三井家下鴨別邸 夏の夜間開館
7/18(金)〜21(月・祝)、25(金)〜27(日)17:30〜20:30(20:00受付終了)
仁和寺の境内にあるNINNAJI-JAXURY SPACE-(蔵カフェ)も、以下の日程は夜も営業します。実際に使われていた蔵をリノベーションしたモダンなカフェです。
・NINNAJI-JAXURY SPACE-(蔵カフェ) 夜営業の日程
7/12(土)、13(日)、19(土)、20(日) 各日 営業時間19:00~20:45
仁和寺と上賀茂神社の夜間拝観を巡る、京都駅発着のタクシープランもあります。入場料金と乗車料金がセットになった便利な相乗りタクシーは、限られた時間のなかで楽しみたい方や、ラクに移動したい方におすすめです。
・夜間特別ライトアップ タクシープランB
運行日 7/14(月)〜21(月・祝)
https://www.yasakataxi.jp/taxiplan/summer/plan025300.html
この夏は、夜の京都観光をどうぞお楽しみください。
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記事を書いた人:五島 望
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東京都生まれ、京都在住のライター・企画編集者。
京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社に漫画編集者等で勤務。29歳で再び京都へ戻り、編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。紙媒体、Web、アプリ、SNS運用など幅広く手掛ける。