【制作秘話】大河ドラマ「豊臣兄弟!」と京都。制作統括をつとめる松川氏による「京の冬の旅」60回記念スペシャルトークショー

大河ドラマの舞台として、どの時代の物語にも、必ずといっていいほど登場するのが京都です。

主人公が物語のキーパーソンと京都でばったり会ったり、高貴な身分の方が京都で政務を担っていたり、はたまた時代の転換期といえるような大事件が京都で起こり、その後の主人公の運命を決定づけたり…と、間接的ではあってもストーリーの行末にかかわってくるまち、それが京都です。

2026年1月からスタートした大河ドラマ「豊臣兄弟!」でも、京都がおおいに登場します。

「豊臣兄弟!」は豊臣秀吉の弟・秀長(ひでなが)を主人公に、兄・秀吉と共にどのようにして天下統一の偉業をなしとげていったかをダイナミックに描く戦国サクセスストーリーです。兄弟が出世街道を進んだその先には、京都をはじめ関西エリアが舞台として大きく広がります。

京都とゆかりの深い豊臣家が大河ドラマで描かれること、そして毎年、冬に行われる観光キャンペーン「京の冬の旅」が60回を迎えたことを記念して、フリーアナウンサーの石田紗英子(いしださえこ)さんを司会に、大河ドラマ「豊臣兄弟!」の制作統括で、京都市ご出身の松川博敬(まつかわひろたか)さんをお招きしたスペシャルトークショーが1月25日に高台寺の利生堂で行われました。

左:司会の石田紗英子さん/右:大河ドラマ「豊臣兄弟!」の制作統括 松川博敬さん

松川さんは、朝の連続テレビ小説では「てっぱん」(2010年)や「カーネーション」(2011年)、大河ドラマでは「篤姫」(2008年)や「おんな城主 直虎」(2017年)など、これまで数々の作品を手掛けてこられました。

そして松川さんご自身が「秀吉の大ファンだった」という思いを起点に、「豊臣兄弟!」の企画が進んでいったといいます。

ここからは、大河ドラマの制作秘話や、豊臣家と京都の絆に迫るトークショーの一部をお届けします。

トークショーには多くの京都ファン・大河ドラマファンが参加しました

Q 「豊臣兄弟!」ではどういった点を大事にして制作されていますか。

子どもも大人も一緒になって楽しめる、間口の広い大河ドラマをつくりたい、という思いが企画の原点にありました。だから歴史にあまり詳しくない人でも入り込みやすい、わかりやすい内容を心がけています。その一方で歴史好きの方でも楽しめるような仕掛けも用意しています。

昨今、テレビ離れと言われていますが、私が目指しているのは日曜夜8時に家族そろって大河ドラマを見る昔懐かしい“お茶の間”の風景です。「豊臣兄弟!」を見て、親子で話題にしていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

Q タイトルロゴの「!」にはどういう意味がありますか。また、音楽などのこだわりについても教えてください。

「!」(エクスクラメーションマーク)には、あまり深い意味はないのですが、躍動感を表しています。「新選組!」(2004年大河ドラマ)にも入っていましたよね。あれもやはり若い志士たちの物語でしたから躍動を表していたのではないでしょうか。

また、今回の「豊臣兄弟!」は漢字4文字なので、かたいイメージを払拭したかった、アクセントにしたかったというところもあります。

ロゴデザインやオープニング映像については、やはり見やすさ、わかりやすさを念頭に制作しました。オープニング曲は、これから成り上がっていく2人に伴走するようなイメージなので、疾走感のある仕上がりになっています。NHK交響楽団が演奏する大河ドラマオープニング曲で最もテンポが速い、かもしれません笑

Q 秀長と秀吉、2人のキャラクターづくりで心掛けていること、工夫などがあれば教えてください。

秀吉の弟・秀長が長生きしていれば豊臣家の天下はもっと続いていた、という言葉があるほど、秀長の功績は素晴らしいと言われていますね。実際に歴史学的にも、秀吉の天下統一は二人がかりでなければ成し得なかったということがわかってきています。

そこで今回の大河ドラマでは、“スーパースター秀吉”を2分割するようなイメージで取り組んでいます。兄弟それぞれがもつ得意技をもちあわせて、二人で豊臣秀吉像をつくるのです。

主人公の秀長ばかりに手柄をとらせないようにバランスを意識したり、視聴者の反応も見て設定を軌道修正しています。

松川さんの表情からは、楽しんで制作されている様子が伝わってきます

Q どのぐらいロケ撮影をするのですか。また、どのような技術を使って撮影しているのですか?

撮影は2025年6月に始まり、トータルで17ヶ月間行います。

第1回の兄弟が生まれ育った尾張・中村のシーンや、第4回の桶狭間の戦いで今川軍が歩いているシーンはロケですが、清洲の市で織田信長が馬に乗って登場するところはスタジオで撮影しました。

「どうする家康」(2023年大河ドラマ)以来、スタジオ内に立てた大きなスクリーンに背景を映し出すバーチャルプロダクションという撮影技術を用いるようになったので、現在はロケが全体の1割、スタジオが9割ぐらいでしょうか。

特に近年は真夏に甲冑を着て合戦シーンを撮影するのは大変危険ですから、6月に中村のシーンを撮影し、7月、8月はスタジオ撮影。そして秋になったら再びロケ撮影を行って、それらを混ぜて編集します。ロケかスタジオか、その境目がわからないようにうまくなじませる技術をもった人が頑張ってくれています。

ちなみに1日ロケ撮影を行って3〜4分くらいのシーンができあがります。スタジオの場合は1日撮影して8〜9分くらいです。

Q 歴史に忠実に、あるいは思いっきりアレンジ、など、こだわった場面はありますか

大河ドラマは時代考証の先生方と密に相談を重ねながら制作するのですが、今回の「豊臣兄弟!」に関しては、若い頃の秀吉が謎に包まれているため、前半生は自由にやっていいよ、と言われています。

例えば草履のエピソード。

冬の寒い日に秀吉が信長の草履を懐に入れて温め、信長は冷たい草履を履かずに済んだ。その心遣い、機転に信長が感心したという、秀吉のさらなる出世につながる象徴的な逸話がありますが、これは後世に創作されたものなんです。

だから今回の大河ドラマでは、“本当はこうだったんじゃないか”、という観点で表現しました。

それも脚本家の八津弘幸さんやスタッフと共に、物語の方向性を検討するために各地を訪ねる“シナリオハンティング”で京都を訪れた際、ホテルの大浴場で八津さんとお会いして、おもむろに「あの草履の話、面白くできませんかね」と私から相談したのが発端だったように思います。

Q 豊臣家にとって京都とはどういう場所だったと思いますか。

秀吉、秀長、寧々、なか、あさひの5人を“豊臣ファミリー”と呼んでいるのですが、彼らが葬られている場所が全て京都にあるんですよね。

秀吉のお墓は、豊国神社の飛地境内「豊国廟」にありますし、大徳寺の塔頭寺院・大光院は秀長の菩提寺です。また、寧々さんが秀吉の菩提を弔うために建立した高台寺に、自身も眠っておられます。

5人の菩提寺や墓所が今も京都に残っていることは、時を超えた家族のつながりと、京都との不思議な縁を感じさせます。

Q 視聴者へのメッセージをお願いします。

今、SNSで空中でのやりとりが活発な時代ですが、人から人へ、おもしろかったから見てよ、おすすめだよ、という口コミも大事だと思いますし、私はその力を信じています。

これから「豊臣兄弟!」はどんどん面白くなっていきますので、ぜひ見て応援していただきたい。そしてそれを周囲の方にどんどん伝えていただき、口コミの輪を広げていただけたら幸いです。

大河ドラマを見て「京の冬の旅」へ。おすすめの豊臣家ゆかりの地

さて、そんな大河ドラマ「豊臣兄弟!」の人気と共に注目が集まっているのが、京都各地にある豊臣秀長と兄・秀吉のゆかりの地です。ここからは、中でもおすすめのスポットを紹介します。

高台寺、高台寺掌美術館、圓徳院

今回のトークショーが開催された高台寺は、豊臣秀吉の正室で“北政所”(きたのまんどころ)と呼ばれた寧々が秀吉の菩提を弔うために1606年(慶長11年)に創建した寺院です。

画像:高台寺 蔵

トークショーでも松川さんが「豊臣兄弟!の企画が発表になってすぐに挨拶に伺った」と話すほど、豊臣家と大変ゆかりの深い古刹です。

秀吉と寧々を祀る「霊屋」(おたまや)(重文)は松川さんがお話されていたように寧々の墓所でもあります。また、二人の坐像を安置する厨子(ずし)の扉や須弥壇(しゅみだん)に施された華麗な高台寺蒔絵(まきえ)も見どころです。

霊屋 画像:高台寺蔵

また現在、237年ぶりに再建予定の高台寺・客殿(小方丈)のために描かれた絢爛豪華な襖「春の草花図(牡丹)」や、秀吉が愛用した「鳥獣文様陣羽織」(複製)が「京の冬の旅」キャンペーンにおいて特別公開されています。2026年夏以降の客殿公開に先駆けて拝見できる貴重な機会です、お見逃しなく。

「京の冬の旅」高台寺 (~3/4)
 https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=13252

さらに、トークショーの会場となった高台寺・利生堂は、寧々が所有していたと伝わる「涅槃図」を堂内の壁面と天井に施した幽玄なる世界です。こちらも必見。

元となった涅槃図は、高台寺から西へ徒歩約1分のところにある高台寺掌美術館で見ることができます。美術館の並びにある、寧々が晩年を過ごした圓徳院もあわせてどうぞ。

豊国神社、方広寺、豊国廟

“ほうこくさん”の愛称で親しまれている豊国神社(とよくにじんじゃ)は、秀吉を祀る神社です。

本殿前に堂々たる姿を見せるのが、“京の三唐門”の一つに挙げられる唐門(国宝)。伏見城の遺構と伝わる建築には随所に豪華な飾り金具や彫刻が見られ、伏見城の壮麗さを想像させます。

境内にある宝物館(有料)には、トークショーで松川さんが「人々が仮装していておもしろい」と話していた「豊国祭礼図屏風」(重文)のほか、秀吉が使用したバクの形をした「獏御枕」(ばくのおんまくら)や秀吉の歯と伝わるものなど、豊臣家ゆかりの社宝を多数見ることができます。

また、同館で現在「京の冬の旅」キャンペーン期間中のみ公開されているのが、「斬る真似だけで骨まで砕く」という伝説をもった刀「骨喰藤四郎」(ほねばみとうしろう)こと、「薙刀直シ刀 無銘吉光」(なぎなたなおしがたな むめいよしみつ)。

秀吉はもとより源頼朝や足利家、徳川家などが所持していたと伝わる名刀です(現在は再現刀の展示)。

秀吉が実際に着ていたと伝わる黄色の羽織「黄紗綾地菊桐紋付胴服」(重文)も見ることができます。

「京の冬の旅」豊国神社 書院・宝物館(~3/18)
 https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=13254

豊国神社とあわせて訪ねたいのが隣接する方広寺です。

秀吉が大仏を祀るために創建した寺院で、現在、境内に大仏殿はありませんが、秀吉の嫡男・秀頼と徳川家康の戦「大坂冬の陣」のきっかけとなった巨大な梵鐘(重文)を間近に見ることができます。

また、現在「京の冬の旅」キャンペーンで本堂と大黒堂が特別公開中です。秀吉が持っていたと伝わる小さな大黒天像など、この時だけの寺宝を拝観できます。

「京の冬の旅」方広寺(~3/18)
 https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=13253

少し時間に余裕のある方は豊臣秀吉の墓所「豊国廟」にも足をお運びください。方広寺から東へ徒歩およそ20分の「豊国廟 拝殿」から、さらに約500段の石段を登った先にある五輪塔が秀吉の墓所です。

清水寺をはじめとした京都市内の眺望が美しい場所ですが、山間部なので明るいうちの訪問がおすすめ。登拝料として200円が必要です。

大徳寺 大光院

最後は、大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主人公・豊臣秀長の菩提寺、大徳寺塔頭・大光院です。

普段は非公開寺院で、今回の「京の冬の旅」キャンペーンにあわせて4年ぶりに公開されています。

大光院は1592年(文禄元年)に奈良県・大和郡山に創建され、後に秀長の家臣・藤堂高虎(とうどうたかとら)によって現在地に移されました。

客殿には同寺の開祖・古溪宗陳(こけいそうちん)の木像と共に秀長の木像も安置され、周囲には狩野探幽が描いたと伝わる襖絵「黒雲龍図」が見守ります。

また、客殿と書院の間にある「蒲庵」(ほあん)は秀吉に軍師として支えた黒田如水(官兵衛)が好んだ二畳台目の茶室。かつてこの茶席の露路に如水の子・黒田長政(ながまさ)と加藤清正(きよまさ)、福島正則(まさのり)の三武将がそれぞれ1つずつ石を寄進したことから「三石の席」(みついしのせき)とも呼ばれています。

3月18日までの特別公開です。大変貴重な機会なので、ぜひお出かけください。

「京の冬の旅」大徳寺 大光院(~3/18)
 https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=13256
2月15日(日)~17日(火)は拝観休止

 

この他にも京都には豊臣家だけでなく、これから大河ドラマに登場するであろう人物のゆかりの史跡がたくさんあります。

そうした歴史的スポットと関連づけて大河ドラマ「豊臣兄弟!」を見ると、登場人物への愛着はもちろん、時空を超えた深い楽しみ方に浸ることができます。この機会にぜひ、京都へ来て、豊臣ファミリーの足跡を身近に間近に感じてください。

60回記念「京の冬の旅」キャンペーン
 https://ja.kyoto.travel/specialopening/winter/

法要や悪天候等、都合により拝観できない日や時間帯が生じる場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。

記事を書いた人:五島 望

f:id:kyokanko:20211220113601j:plain

東京都生まれ、京都在住のライター・企画編集者。
京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社に漫画編集者等で勤務。29歳で再び京都へ戻り、編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。紙媒体、Web、アプリ、SNS運用など幅広く手掛ける。

観光に関するお問合せ
京都総合観光案内所(京なび) 〒600-8216
京都市下京区烏丸通塩小路下る(京都駅ビル2階、南北自由通路沿い)
TEL:075-343-0548
京都観光Naviぷらすの運営
公益社団法人 京都市観光協会
〒604-0924
京都市中京区河原町通二条下ル一之船入町384番地
ヤサカ河原町ビル8階
サイトへのご意見はこちら

聴覚に障がいのある方など電話による
御相談が難しい方はこちら
京都ユニバーサル観光ナビ 京都のユニバーサル観光情報を発信中。ユニバーサルツーリズム・コンシェルジュでは、それぞれの得意分野を持ったコンシェルジュが、京都の旅の相談事に対して障害にあった注意事項やアドバイスを無償でさせていただきます。
京都観光Naviぷらす
©Kyoto City Tourism Association All rights reserved.
  • ※本ホームページの内容・写真・イラスト・地図等の転載を固くお断りします。
  • ※本ホームページの運営は宿泊税を活用しております。