【京の夏の旅】源頼朝と義経ゆかりの兄弟刀に会いに

「京の夏の旅」キャンペーンにて、京都の北野天満宮と大覚寺で源氏の宝刀が公開されると聞き、行ってきました! それぞれの刀の歴史、展示の様子などについてレポートいたします。

学問の神として有名な北野天満宮。「鬼切丸(髭切)」を公開中

古から令和の時代へ 兄弟刀がたどった道

このたび公開となったのは、源氏の重宝として名高い「鬼切丸(髭切)」と「薄緑(膝丸)」で、あの源頼朝と源義経兄弟ゆかりの刀といわれています(諸説あります)。

この2人といえば大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を思い出される方もいらっしゃるでしょう。兄弟の初対面、そして切ない別れのシーンが印象的でしたね。そんな2人が所有したと伝わる名刀が、ここ京都で同時期公開というわけですから因縁を感じます。

時代劇でもよく登場する大覚寺・表門

そもそも両刀は平安時代、清和天皇の孫・源基経(みなもとのもとつね)の長男・源満仲(みなもとのみつなか)が天下守護のためにつくらせた兄弟刀で、清和源氏の流れをくむ源氏の家に代々受け継がれた宝刀でした。当時の名は「髭切」と「膝丸」。その名の由来は刀が完成した折に罪人の首で試し切りしたところ髭まで切れたことから「髭切(ひげきり)」。同じく罪人の首を試し切りしたところ膝まで切れたことから「膝丸(ひざまる)」と名付けられたそうです。なんとも血生臭い話ですが、刀の出来栄えを表す言葉としてはストレートで覚えやすいですね。

初めは「髭切」「膝丸」という名で同じ持ち主のもとにあった2振ですが、その後離別。頼朝の時代に再会するもまた離れ、武士や僧などの手にわたり、今は北野天満宮が「鬼切丸(髭切)」を、大覚寺が「薄緑(膝丸)」を所有するに至ります。いずれも重要文化財です。

そんな源氏の重宝2振が北野天満宮と大覚寺で同時期公開されるのは今回で3度目。関係者の話によると今後の予定はないため、現時点で最後の同時期公開といわれています。これは見逃せません! ここからは展示の様子を交え、さらに詳しくご紹介いたします。まずは「鬼切丸(髭切)」を展示する北野天満宮から行ってみましょう。

「鬼切丸(髭切)」は北野天満宮・宝物殿に

「天神さん」の愛称でも親しまれている北野天満宮は、天暦元年(947)創建の全国の天満宮の総本社。ご祭神の菅原道真公は学問の神としても有名で、毎年多くの修学旅行生が訪れる人気の神社です。

北野天満宮・宝物殿

道真公といえば讒言によって九州・太宰府に流罪となり、不遇の死を遂げた貴族。道真の死後、京では落雷などが頻発し、道真の祟りと恐れられました。そんな道真の怨霊を慰め、鎮めるための御霊信仰が北野天満宮のルーツといわれています。

刀や武具がずらり

江戸から明治への転換期には、その御霊信仰にあやかって自らの魂、刀の魂を鎮めようと多くの人が同宮を訪れ、刀を奉納したと伝わります。学問の神としてのイメージが強い北野天満宮ですが、武神としても崇敬を集めていたのですね。今回の展示でも「鬼切丸(髭切)」を筆頭におよそ30振が並んでいました。

兄弟揃い踏みの押形

いよいよ「鬼切丸(髭切)」とのご対面。宝物殿の正面奥に静かに鎮座していた「鬼切丸(髭切)」は、細くしなやかながらも堂々たるお姿。数ある刀の中でもひときわ品の良い輝きを放っているように見えます。

「鬼切丸(髭切)」の展示の様子

壁にかけられていたのは2振の押形。同じ空間に並べ展示することは叶わなかったため、刀の代わりに両刀の押形を展示することで兄弟刀の共演を実現させたのだそうです。

ところで「鬼切丸(髭切)」には、北野天満宮とゆかりの深いこんなエピソードがあります。

源頼光(みなもとのよりみつ)の家臣・渡辺綱(わたなべのつな)がある夜、京都・一条戻橋(いちじょうもどりばし)で美しい女性と会い、「道に迷ったので家まで送ってほしい」と頼まれます。不審に思いながらも馬に乗せ送り届けようとしますが、やがて女は恐ろしい鬼に変身。綱の髪を鷲づかみにして宙に舞い上がり、愛宕山へ連れ去ろうとしました。綱は主君・頼光から貸し与えられた「髭切」で鬼の腕を切り、北野天満宮へ落下。ことなきを得ました。

そんな伝説を想像しながら改めて「鬼切丸(髭切)」の押形を見ると、刃文が妖しく揺らめいているようで、背筋がヒヤリとしました。さすがは鬼切の刀。一方「薄緑(膝丸)」の刃文はやや落ち着いた表情。「鬼切丸(髭切)」の隣にいられることを喜び、どこか誇らしげでもあります。

段違いになっているのが「鬼切丸(髭切)」

しかし、兄弟刀とはよくいったもので、本当に瓜二つです。見分けるポイントは、普段は柄(つか)に収められている茎(なかご)、つまり持ち手部分。一番下が段違いになっている方が「鬼切丸(髭切)」です。北野天満宮・宝物殿内のカメラ撮影は禁止ですが、スマートフォンや携帯機器での撮影はOKですので、ぜひお写真もどうぞ。

兄弟刀の距離を縮めるスペシャルタクシー

さて、次なる目的地は「薄緑(膝丸)」の待つ大覚寺! 北野天満宮・宝物殿を出て、さらに楼門をくぐると、境内駐車場に漆黒の車体が。見れば清和源氏の家紋を背景に「鬼切丸(髭切)」「薄緑(膝丸)」が描かれているではありませんか! 噂の刀剣ラッピングタクシーです。

予約制のお得なジャンボタクシー

このタクシーは、「鬼切丸(髭切)」「薄緑(膝丸)」の同時期公開を記念して登場した期間限定のラッピングタクシー。ジャンボタクシーが2両、セダンタクシーが2両の、計4両が912日まで絶賛運行中です。

ジャンボタクシーは京都駅発着で北野天満宮と大覚寺をめぐる完全予約制のタクシー。相乗りですが、駐車場代、施設拝観料を含むお得なプランで、何より涼しい車内でスイスイ移動が超快適。乗車すると「記念刀剣カード」がもらえる嬉しい特典もあります。予約は電話、またはインターネットで受付中。詳しくはホームページをご覧ください。

京都観光タクシープラン | ヤサカタクシー | タクシーで手軽にめぐる「京の夏の旅」文化財特別公開

セダンタイプは会えたらラッキー♪

セダンのラッピングタクシーは原則、北野天満宮と大覚寺を起点に運行しているので、必ずしも会えるとは限りません。運行状況は彌榮自動車(ヤサカタクシー)のTwitter@yasaka_taxi_o)で更新中です。ぜひチェックしてみてください。

それでは、美しい2振が描かれたラッピングタクシーに乗車して大覚寺へ、いざ参らん!

360度見ることができる「薄緑(膝丸)」

北野天満宮からタクシーでおよそ20分、嵐山エリアにある大覚寺は、平安初期に建てられた嵯峨天皇の離宮を前身とする皇室ゆかりの寺院。貞観18年(876)より大覚寺と名を改め、不動明王を中心とした五大明王をお祀りしています。

勅使門

元離宮というだけあってどのお堂も奥ゆかしく、調度品も雅やか。宸殿前には右近の橘、左近の梅が植えられ、御影堂の南にある勅使門(ちょくしもん)(*1)は、荘厳な気に満ちていました。

霊宝館

そんな大覚寺の霊宝館で「薄緑(膝丸)」に会うことができます。

注目すべきはそのガラスケース。今回の展示を終えればしばらく公開予定のない「薄緑(膝丸)」ですから、あらゆる角度から存分に見ていただこうと、ガラスケースによる360度拝観が実現したのだそうです。

360度拝観できる「薄緑(膝丸)」

濃い紫の絹布の上でしっとりと澄んだ輝きを放つ「薄緑(膝丸)」。

さまざまな伝説をまとい、紆余曲折をくぐり抜けてきた「薄緑(膝丸)」ですが、今は安寧の地に辿り着いたといったところでしょうか。その麗しい姿をじっくりと拝見できるのは嬉しい限りです。

ちなみに、この「薄緑」は元暦元年(1184)、熊野権現に奉納されていた「膝丸」が源義経に献上された際に「薄緑」と名が改められたと伝わります。熊野の山々の新緑を託したともいわれる爽やかな命名は義経によるもの(諸説あります)。源氏の名刀を手にした義経の喜びが伝わってくるような、ピュアでまっすぐな名ですね。

そんな「薄緑(膝丸)」の押形の前には、数年前に新調された刀箱も展示されていました。箱の内側には267名もの寄付者の名が所狭しと記されています。「薄緑(膝丸)」を愛する多くの人たちの心入れの刀箱、こちらも必見です。ただし、大覚寺・霊宝館はカメラ・スマホ等の撮影は禁止されていますのでご注意ください。

数奇な運命、歴史ロマンを感じさせる記録

北野天満宮、大覚寺での展示においてもう一つ特筆すべきは、やはりGHQによる刀狩りの記録ではないでしょうか。

日本において大きな刀狩りは3度。1度目は豊臣秀吉による刀狩り、2度目は明治新政府による廃刀令。そして3度目は戦後、武装解除の一環としてGHQによって行われた刀狩りです。

もちろん「鬼切丸(髭切)」「薄緑(膝丸)」もその激動の波にのみ込まれ、一時はGHQの手に渡りましたが、多くの人の尽力によってその美術的価値が認められ、持ち主の元に戻ったのだそうです。

今も2振の鞘には「National Treasure」(国宝)と書かれたラベルが貼ってあり、その身に降りかかった危機をうかがい知ることができます。今、私たちの前にその輝きがあるのは奇跡なのだと思わせてくれる記録です。

手に入れたい多彩なオリジナルグッズ

さて、いよいよ旅も終盤。ここで忘れてはならないのはグッズのお買い物ですね。

特別御朱印と台紙

中でも注目は特別御朱印の台紙(1,000円)で、第1弾、第2弾で授与された台紙をつなげると見事な2振が完成するというもの。デザインは1種類で、いずれの社寺でも買うことができますが、御朱印(500円)はそれぞれの社寺でしか授与されていませんので、くれぐれもお忘れなく。

刀剣梅干

梅ゆかりの神社としても有名な北野天満宮では、ユニークな「刀剣梅干」(1,000円)も売られていました。食べれば文武両道、強く賢くなれそうな気がします!

膝丸髭切文香

大覚寺の「膝丸髭切文香」(800円)は、その雅やかな香りが兄弟刀の絆のように、ステキな縁をつないでくれそうですね。

有料のオリジナルグッズとは別に、1回の拝観につき1枚、拝観した人全員に記念カードがプレゼントされています。しかも北野天満宮では「鬼切丸(髭切)」カード、大覚寺では「薄緑(膝丸)」カードがそれぞれ5種類ずつあるので、カードのデザインは全10種。ランダムに配布されていますので、どのデザインになるかは拝観時のお楽しみに。

※記念品は都合により変更となる場合があります。

忙しい方には定期観光バスがおすすめ

北野天満宮で「鬼切丸(髭切)」が930日(金)まで、大覚寺で「薄緑(膝丸)」が912日(月)まで展示公開されていますが、土地勘もないし時間もない、楽しく涼しく回りたい! という方には午後から気軽にまわれる定期観光バスがおすすめ。京菓子の老舗・亀屋良長が刀剣にちなんで創作した「京の夏の旅」オリジナル菓子「烏羽玉(うばたま)」と「刀剣もなか」、冷茶付きのコースです。

定期観光バス特別コースLS「源氏の重宝・伝説の刀剣をめぐる」

  • 運行日 912日(月)までの月、金、土、休日
  • 出発時刻 JR京都駅烏丸口のりば 13:10
  • 所要時間 約4時間
  • 料金 大人5,700円、小児3,550

詳細、お申し込みはこちら
京都定期観光バス予約センター

京阪バスは2022年で「会社創立100周年」を迎えました。その記念の取り組みの一つとして、8月19日(金)~9月12日(月)の期間にLSコースに乗車した、ご希望の方先着100名様に「京の夏の旅」B2サイズのポスターをプレゼントします!

※予定枚数がなくなり次第終了。

この機会に定期観光バスに乗って、「いざ、」のキャッチコピーと黒地に2振の刀剣のカッコいいデザインが好評のポスターもゲットしよう!

拝観券+電車+バスなどがセットになった「兄弟刀セット券」

途中下車や寄り道しながら北野天満宮、大覚寺を巡りたい! という方には嵐電、市バスなどの公共交通の乗車券と拝観券、レンタサイクルなどがセットになったお得な1日券もあります。その名も「兄弟刀セット券」。「鬼切丸(髭切)」「薄緑(膝丸)」が描かれたオリジナルチケットケースつきですから、こちらも気になります。京都駅や嵐電主要駅、京都総合観光案内所「京なび」で発売中です。

北野天満宮×大覚寺「兄弟刀セット券」

  • 発売期間 912日(月)まで
  • 販売額 3,500円(税込)大人券のみ
  • 内容:オリジナルチケットケースつき
  1. 一日券 バス(京都市バス・京都バス・西日本JRバス)・嵐電一日券
  2. 北野天満宮宝物殿 拝観引換券
  3. 大覚寺霊宝館 拝観引換券
  4. 大覚寺 拝観引換券
  5. レンタサイクル引換券(3段変速つき自転車 ※2時間ご利用、嵐山駅の「駅の足湯」ご利用券付)

詳しくはこちら
北野天満宮×大覚寺「兄弟刀セット券」発売 | 京福電鉄株式会社

「京の夏の旅」キャンペーンの概要まとめ

今回ご紹介した北野天満宮と大覚寺の他にも、「京の夏の旅」キャンペーンでは上賀茂神社、下鴨神社、仁和寺、龍安寺、旧三井家下鴨別邸と全7カ所で、期間限定の特別公開が行われています。北野天満宮と大覚寺で源氏の重宝、2振の輝きを満喫したあとは、ぜひ足を伸ばして、普段は見ることができない文化財、至宝の数々を体感してください。

47回「京の夏の旅」キャンペーン
源氏の重宝&世界遺産 7カ所で文化財特別公開中!

【公開期間】202279日(土)~930日(金)
【公開時間】10時~1630分(16時受付終了)

詳しくはこちら
第47回 京の夏の旅(2022年7月~9月開催)|【京都市公式】京都観光Navi
一部公開期間・時間・各見学箇所の料金などが異なります。

「京の夏の旅」パンフレット、またはホームページ画面を呈示すると割引や記念品などのプレゼントがもらえる「観光施設とくとくサービス」も実施中。

詳しくはこちら
観光施設とくとくサービス|第47回 京の夏の旅(2022年7月~9月開催)|【京都市公式】京都観光Navi

 

写真は内覧会にて特別な許可を得て撮影しています。

*1:勅使門:天皇の行幸、あるいは使いの方が来られた時のみ開門する門。

記事を書いた人:五島 望

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東京都生まれ、京都在住のライター・企画編集者。
京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社に漫画編集者等で勤務。29歳で再び京都へ戻り、編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。紙媒体、Web、アプリ、SNS運用など幅広く手掛ける。

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