【Street Guide】百万遍-田村遼さん、亀田海里さん、川上菜月さん(トッド荘)

エリアごとに独特の文化や歴史が色づく街、京都。たくさんのガイドブックがこの地の魅力を語っていますが、それが全てではありません。旅を忘れられないものにする、驚きや発見。その地を自分の足で巡り歩いた人だけが見つけられる、知られざるスポットがまだまだあります。

※Street Guideシリーズは、外国人観光客向け京都観光オフィシャルサイト「Kyoto City Official Travel Guide」にも掲載しています。

https://kyoto.travel/en/street/index.html

今回紹介するのは学生街として知られる百万遍エリア。このエリアには京都大学や京都芸術大学など多くの大学に近く、たくさんの学生が住んでいます。今回ご登場いただくのは京都工芸繊維大学の学生である亀田海里さん、川上菜月さん、田村遼さん。亀田さんと田村さんは叡山電鉄元田中駅の近くの一軒家をリノベーションして、トッド荘と名付けてシェアハウスにし、共同生活をしています。学生の目線からこのエリアの魅力を教えていただきました。

3人のプロフィール 

亀田海里さん(左):京都工芸繊維大学4年生(現在は生物専攻、春から大学院でプロダクトデザインを学ぶ予定)。奈良県出身。一軒家をリノベーションしたシェアハウス「トッド荘」で共同生活。
川上菜月さん(中央):京都工芸繊維大学3年生(建築専門、都市史を学ぶために大学院進学を目指している)。亀田さんのサークルの後輩。徳島県出身。「トッド荘」で居候中。
田村遼さん(右):京都工芸繊維大学4年生(建築専門で、卒業制作はリノベーションに関わるもの)。兵庫県出身。亀田さんとともに、一軒家をリノベーションしたシェアハウス「トッド荘」で共同生活。

3人のストーリー

そもそもシェアハウスを始めたのは2020年12月。ちょうど新型コロナウイルス流行の第3波が来ようかという時期でした。「人に会えないのはやっぱ大きかったですね。あと、作業場が欲しくて」と田村さん。大学の作業場が使えなかったこともあり、共同で作業場を借りようという亀田さんの提案に、田村さん、ほか2人の友人が乗っかり、このプロジェクトが始まりました。
 
大学からトッド荘までは自転車やバイクで10〜15分程度。大学のすぐ近くではありませんが、それでもこのエリアに住むことにしたのは、リノベーションができる古民家が見つかったから。さらには町の雰囲気も気に入っていたそうです。「空気感というか、お店のノリとかもいいなと思うところが多くて、最終的にはエリアで選びました」と亀田さん。近くには同じように学生が運営しているシェアハウスがいくつかあるのだとか。田村さんも以前もう二駅先の一乗寺に住んでいたことがあり、他大学の学生も多く住むこのエリアの雰囲気が気に入っているそうです。

古民家のリノベーションは、卒業設計でもリノベーションに携わった田村さんや、デザインを専攻する予定の亀田さんが中心になって行われました。革製の椅子やアンティーク調のローテーブルなど凝った家具が置かれているのが気になって聞いたところ、「リサイクルショップで揃えました」と田村さん。トッド荘の家具や家電もほとんどそうなのだとか。古いものと新しいものが程よく混じり合い、おしゃれでありながら尖りすぎず、とても居心地いい空間です。「最初来た時、住みたい!住みたい!って」と居候を始めたのは亀田さんのサークルの後輩である川上さん。

この居心地のよさは、「これから先、後輩も継いでいくときに使いやすいように、突飛なことはしないで、床を張ったり壁を作ったりしました」と、自分たちだけでなく誰かに引き継ぐことを考えてリノベーションされたところからも来るのかもしれません。すでに次に住みたいという後輩たちもいるそうで、ゆくゆくは「この場所自体が工繊生の場所として残っていったら楽しいな」というのが住人たちみんなの思いです。

縁側の椅子は住民の憩いの場

ご近所づきあいはそこまであるわけではないそうですが、近所の人と顔を合わせればあいさつしたり、時には「お皿いるか」と声をかけてもらったり。ご近所さんはおせっかいを焼くほどではないけど、学生同士の暮らしを気にかけてくれているようです。また、周辺には学生生活を助けてくれるリサイクルショップや、3,000円で食べ放題の焼肉屋さん、ボリュームたっぷりの中華料理屋さんといった飲食店が充実しており、とても住みやすいエリアだとみなさん口を揃えて言います。

この家の居心地のよさはこのエリアの「構いすぎずほどよい距離で、よその町から数年間やってくる学生を見守ってくれる空気」が醸し出してくれるものなのかもしれません。これまでさまざまな学生を迎え入れては送り出してきたこのエリアのように、トッド荘も将来の後輩たちの居場所になれるのでしょうか。この百万遍エリアの魅力を3人に紹介していただきました。

暮らしの痕跡が見える通り

「この辺は、ゴミのネットを引っかけるためのカゴが地面に直接触れないように、電柱にS字フックで付けてたり、人が勝手にこしらえたものがたくさんあって、それがかわいらしいんです」と田村さん。「この町の好きなところや面白いところを教えて」という質問に思わぬ答えが返ってきました。

一体どういうこと? と3人と一緒に町に出てみることに。「あそこ見て」「これも」と、3人は次々に住人たちの暮らし方の工夫や工作物を見つけていきます。どれもぼんやりと歩いていたら気づかないような、さりげないものばかり。それを見つけることがなんとうまいこと!

町の中は工夫で溢れています。こちらは大きなS字フックをホースかけに。

電信柱にくくりつけられたカラス除けのゴミネット。

京都は観光地を点から点へ移動する人が多いからこそ、「こういうのを写真で撮りながら歩いたら、何もないように見える道のりも楽しくなるんじゃないかな」と田村さん。「排水溝の近くに苔が生えていたら、今は水がなくてもここは普段よく水が流れるのかなとか、何かの痕跡のあとを見つけて思いを巡らすのが好きなんです」と亀田さんが言うように、こういった痕跡を見つけながら地元の人の暮らしを想像して歩いてみるのも楽しそうです。

よそ者が見つける住民目線の京都らしさ

ところで、京都出身ではなく他県の出身者が多いのもこのエリアの学生の特徴の一つ。トッド荘のメンバーも田村さんは兵庫、亀田さんは奈良、川上さんは徳島と他県出身者ばかり。3人に「京都らしさ」を感じる風景について聞いてみると、「古都のイメージを抱いて来たけど、いろんな時代のいろんな面を見られるのが京都のいいところ。意外と近代建築も多いんです。特に岡崎は明治の近代化事業の遺構や、平安調の鳥居や、ロームシアターみたいな最新のものなどいろんな時代の建物が混じり合い、京都のアイデンティティの移り変わりが見られるすごく面白いエリアだと思います」と川上さん。

田村さんも、先ほど紹介した暮らしの跡がわかる通りの面白さを京都に来てから発見したのだとか。出身地の姫路にもそんな雰囲気がなくはなかったけれど、京都はより顕著で、「新しいものと古いものの折衷感はすごく日本っぽいと思います」と。

2人が口にする「京都らしさ」は、観光客がイメージする京都らしさとはかけ離れていますが、それはよそ者であり、かつ今は住んでいるからこそ発見できるものなのかもしれません。

学生のチャレンジを許容する懐の広さ

さらに亀田さんは「京都らしさ」についてこう続けます。「京都って、伝統とか趣は勿論大事にしているのですが、それに縛られていないというか、学生がいろんなことを始めても、新しいことを始めようとしてる人たちに対して、歴史や伝統を冒涜さえしていなければ寛容っていうかウェルカムなところがあって、そういうのがいいなって思うんです」。

3人の周りには古民家や商店街の一角で古道具屋を始めたり、伝統工芸の工房を立ち上げたりする先輩や友人がいたりするそう。また、亀田さんや田村さん自身も卒業設計で改修した古民家ギャラリーの自主施工や、買い付けた古道具を知り合いの喫茶店でお茶やコーヒーを味わってもらいながら販売するチャレンジを始めるそう。しかしながら、それは上昇志向の強い浮ついたものではなく、とても堅実で地に足ついたもの。

「何かやりたい」という心に灯った小さな炎を少しずつ大きくするために、身の丈でできるところから始めて、先輩後輩や友人など徐々に周りを巻き込みながら、協力してくれる人の輪を広げていく。そんなところからは学生の街・京都の懐の広さを感じられます。

学生街としての京都

新旧混じり合う京都の面白さの一翼を担っているのは学生たちと言えるかもしれません。学生たちはよそ者の視点で京都らしさを発見しながら京都のまちで成長していきます。そうやって成長した学生たちがまた何か新しい活動を始めることで、京都に新たな「京都らしさ」が還元されてゆきます。そんな循環の中で京都のまちの魅力はつくられてきたのではないでしょうか。

そんなふうに京都に新たな活力を加える学生たちを何世代にもわたって育んできたのが、百万遍エリア。古都だけではない学生街としての京都の魅力を見つけに、百万遍エリアを歩いてみませんか。

トッド荘の三人の目線で切り取られた百万遍

企画編集:ANTENNA

ライター:太田 明日香
写真撮影:岡安 いつ美

記事を書いた人:ANTENNA

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