しだれ桜が有名で、春になれば花見客で大人気になるのが京都・東山にある円山(まるやま)公園です。京都市内で最も古い公園であり、風光明媚なエリアです。八坂神社や知恩院に隣接し、清水寺や高台寺にも近いので、京都観光で通ることも多い場所ですね。その円山公園に、意外な歴史や桜だけでない楽しみ方があることをご存知ですか?
円山公園の歴史
円山公園がある一帯は、鎌倉時代以前から「真葛ヶ原(まくずがはら)」と呼ばれ、真葛やススキが生い茂る原野でした。になり、明治22年(1889)に「京都市円山公園」が誕生しました。公園名は敷地内にある安養寺の山号「慈円山」から名付けられたとされています。
大正2年(1913)の改良工事では、京都市役所を監修した有名な建築家・武田五一の計画案に基づき、七代目小川治兵衛こと植治(うえじ)が関わっていると言われています。昭和6年(1931)には「名勝円山公園」に指定され今に至ります。
二代にわたる「祇園しだれ桜」
公園の中央にある「祇園しだれ桜」は実は二代目です。初代のしだれ桜は、明治6年(1873)に伐採されそうになっていたところを京都府観業課長であった明石博高(あかしひろあきら)が買い取り、京都府に寄付しました。これをきっかけに周辺整備が進み、桜が多く植えられることになりました。昭和12年(1973)に国の天然記念物に指定され、昭和22年(1947)に枯死するまで素晴らしい景観を誇りました。
その後昭和24年(1949)に造園家の佐野藤右衛門(さのとうえもん)が二代目のしだれ桜を京都市に寄付します。初代しだれ桜から種を採って育てた桜で、初代と同じ場所に植えられて立派に成長しました。現在も「祇園しだれ桜」として人々を楽しませています。
管理人による円山公園おすすめスポット案内
円山公園は2017年から2022年まで5年かけて再整備(修復)が行われました。みどり政策推進室の近藤さんと小役丸さんに円山公園を案内してもらいながら、必見のおすすめスポットを教えてもらいましょう。
スポットA(祇園しだれ桜・ひょうたん池前)
まず最初に「祇園しだれ桜」についてお話をお聞きします。
小役丸さん「二代目のしだれ桜は、樹齢90歳を超えており、弱った時期もありましたが、桜守である佐野藤右衛門氏に助言をいただきながら管理してきました。例えば、土を入れ替えたり、自然の状態に近づけるため、しだれ桜のそばに苗木を植栽するなど、育成への影響を見守っているところです。しだれ桜は、春に篝火(かがりび)でライトアップも行い、皆さんに楽しんでいただいております。」
近藤さん「円山公園は四時遊覧(しじゆうらん)の名勝地として、四季のいずれをとっても景観が優れている場所だと言われています。公園の奥に広がる東山の風景と同じスケール感をベースに、自然の地形を活かしてつくられています。日本庭園で表現されている風景を縮小して庭園に取り入れる技法ではなく、円山公園では、身近な野山の風景を原寸大で表現しています。庭が違和感なく東山の景色とつながっており、『五感で味わう庭』として楽しめるのが特徴です。」
東山を借景として設計されている円山公園は、景観の構成にこだわって整備されています。この場所はちょうど祇園しだれ桜の向かいなので、見覚えのある方も多いのではないでしょうか?円山公園の知られざる美しさは、この奥に入ってからがスタートです!
スポットB (流れ)
ひょうたん池につながる流れに沿って、東山の方へ進んでいきます。変わった形の石が並んでいるかと思えば、なんと武田五一がデザインした砲弾型の人止めでした。今は使われていないガス灯も立っていて、灯っていた頃がしのばれます。
近藤さん「流れの端から端まで水をいきわたらせるため、流れの底の高さを調整しているんです。また、再整備(修復)時には、底の石に番号をふって、職人がひとつひとつ手仕事で石をならべています。」
何気ない流れの石までが、丁寧に設置されていたとは驚きです。円山公園が文化財であるからこその綿密な仕事ぶりが伺えます。
この工事は植彌加藤造園株式会社のホームページで詳しく紹介されていますので、気になる方はぜひご覧ください。
名勝円⼭公園庭園修復⼯事 | 植彌加藤造園 -京都で、日本庭園をはぐくむ-
スポットC(橋)
近藤さん「公園は流れの上流に進むほど、市街地の景色から山の景色に変わるように作られています。例えば、橋の素材も変わります。ひょうたん池の橋は人工的な立派な建造物ですが、山の景色に変わりはじめると木橋になり、滝の付近では沢飛石の上を歩くように、景色の変化に合わせて作られています。」
近藤さん「複雑に交差する園路は自然に回遊するようにつくられています。あえて全体を見せず、先が見えたり隠れたりして、何があるのかな?と気になるようにつくられています。」
スポットD(弁天堂前)
石の橋をわたって川を横切り、山に向かって石段を上がっていくと「弁天堂」があります。その手前に洞穴型の建物を発見しました!モダンで目を惹くデザインです。実はこちらはおよそ100年前につくられたとされる「弁天堂前公衆トイレ」です。円山公園はいたるところに見どころが隠れていて驚きですね。
弁天堂をお参りした後、左にある階段を上がってください。おすすめの桜スポットにご案内いたします。
スポットE(安養寺前)
階段を上がると安養寺に着きました。安養寺前のエリアは広々として見晴らしがよく、桜の木も多い穴場スポットです!あまり知られていないので、「祇園しだれ桜」が混んでいる時は、このあたりでゆったりと桜を鑑賞するのはいかがでしょうか?
ひょうたん池のほうへ戻るには、石でできた階段を下ります。少し急なので気を付けて降りてください。ここは「紅葉渓(もみじだに)」と呼ばれ、秋はとても美しく色づく場所です。春だけでなく四季それぞれの楽しみがありますね。
円山公園でお花見を楽しむマナー
文化財でもある円山公園で、お花見を楽しむために守りたいマナーを教えてもらいました。
小役丸さん「公園にゴミを捨てず、植物を大事にしてもらいたいです。桜が綺麗だからといって折ったり、おみくじを括ったりするのもよくありません。またブルーシートでのお花見はお断りしています。円山公園ではできるだけ散策しながらのお花見をおすすめしています。」
今回は貴重なお話をお聞きさせていただきました!今年のお花見も節度を守って楽しんでくださいね。貴重な文化財なので、皆で大切に守っていきましょう。
円山公園のイベント
KYOTO FRAGMENT,ART PROJECT2023
再整備(修復)工事を終えて名勝にふさわしい風致景観を取り戻した公園に、若手芸術家が制作した作品を展示します。音楽堂では映像作品の上映やイベントに特化したグッズ販売もあります。東山の豊かな自然を背景に、芸術に触れるひとときを過ごしてみませんか。
日時 2023年3月16日~19日 午前10時~午後8時(円山公園音楽堂は午後1時~午後8時)
場所 円山公園、円山公園音楽堂
料金 無料(円山公園音楽堂への入場は1,000円)
京都市:宝が池・竹間・新京極・円山・東山山頂・桂坂公園で利活用社会実験!「おそとチャレンジ」
※少雨決行、荒天の場合は中止です。
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記事を書いた人:Kyoto Love.Kyoto
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京都の街、そして京都にかかわる人たちの役に立ちたい。そんな想いを原点に、人と人、人と地域との交流のなかで見つけた物語をまちかどの語り部たちが発信しています。智恵の循環が紡ぎ出す、京都人でもよく知らない京都、そして深遠なる京都の魅力を伝えていきます。
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