【京都観光ではたらく】~松葉家旅館~

代表取締役 林浩一朗さん(右)
乾莉凪さん(左)

笑顔とコミュニケーションで世界とつながる老舗旅館。外国人宿泊者にも京都の歴史や文化の魅力を伝えたい

―代表取締役 林浩一朗さん

京都を訪れる旅行客をもてなし続けて約150年。現在、宿泊者の多くを海外からの観光客が占める松葉家旅館では、京都の文化に触れ、そして心休まるアットホームな雰囲気で過ごしてもらおうと、スタッフが明るい笑顔で出迎えています。

笑顔のもてなしが国際交流の第一歩。
フレンドリーな接客を心がけて

明治17(1884)年に東本願寺の門前に創業し、これまで多くのお客様を迎えてきた松葉家旅館。現在では、宿泊者の約97%が外国のお客様と教えてくれたのは、松葉家旅館代表取締役の林浩一朗さんです。

「私たちがおもてなしをするうえで大切にしているのは、フレンドリーであること。日本のしきたりがわからず、母国語が通じない環境に来られた海外からのお客様は、心細さを感じることもあります。その不安を少しでも取り除くために、積極的に英語で話しかけています。するとお客様も打ち解けてくださって、会話が盛り上がるんです。この親しみやすさを気に入って、数年後に再訪してくださるお客様もいらっしゃいます。逆に、なかには仲良くなったお客様に会いにいくために、その方の国を実際に訪ねたスタッフもいるくらいです」。一人ひとりと交流しながら、アットホームな滞在ができる旅館を目指していると林さんは言います。

そんな想いを支えているのが、スタッフの“笑顔”。林さんは家業である旅館を継ぐ前、別の会社で営業職として活躍されていたそう。その経験から、「人を笑顔にするには、まず自分から」という想いを強く持つようになったそうです。

「お客様が玄関から入ってこられて、最初の3秒が勝負。ここでお客様を笑顔にできたら、『ここに来てよかった』と感じていただけている証拠だと思います。そのためには、まずは私たちから笑顔でご挨拶をする。とてもシンプルですが、これがおもてなしのスタートなんです。これから仲間になっていただくスタッフにも、同じ気持ちを求めています。そのため、採用する際の面接ではあえてたくさん雑談をするようにしています。アイコンタクトが取れて、自然と笑顔が出るような明るい方であれば、きっと活躍していただけます」。そう話す林さん自身も、終始大きな笑顔を見せてくれました。

英語が得意でなくてもOK。
マニュアルを覚えつつ、会話を楽しむ気持ちがコミュニケーション力をアップ

松葉家旅館で働くには、英語で流暢なコミュニケーションがとれることが最初から必要不可欠かといえば、それは採用条件ではないとも林さん。

「働くうえで英語は必要ではありますが、最初は英語を上手く話すことができなくても構いません。『英語が話せるようになりたい』という意欲があれば、半年ぐらい働いていれば、だいたいのコミュニケーションは問題なくとれるようになっていきます」
松葉家旅館には接客用のマニュアルが用意されていて、必要なフレーズなどが書かれています。就職時に英語に不安があっても心配はいりません。

「日常会話になるとマニュアル通りにはいきませんが、最初は拙くても気にすることはありません。勇気を持ってひと言話しかけたら、きっとお客様も返してくださいます。会話のキャッチボールを楽しみ、もっと話せるようになりたいと思う気持ちが大切です。大学1回生のとき英語が全く喋れなかったスタッフも、4年間働いて卒業するときには英語がペラペラになっていました」。

さまざまな年代やスキルを持つスタッフで運営。
働き手に合わせて勤務時間を臨機応変に調整

現在、10代~70代のスタッフ30人で運営している同旅館。社員は3人ほどで、その他はアルバイトスタッフが中心となって運営しています。

「フロント担当の社員は、ホテルやスーパーでの勤務経験があり、英語と韓国語を話せることから、転職当初から即戦力として活躍してくれています。支配人も異業種からの転職ですが、勤務年数は10年以上のベテランです。学生アルバイトも多く、卒業まで働いてくれる方がほとんどで、継続率は高いと思います」

松葉家旅館では、担当ごとの基本的な勤務時間は決まっていますが、働き手の状況に応じて、臨機応変な対応をしています。

「フロントの勤務時間は朝から夕方まで、または夕方から22時頃まで、清掃は朝から午後にかけて。朝の時間帯はフリーターや主婦の方がメインで、夕方からの勤務は授業が終わってから出勤しやすいため、大学生が多いです。授業の都合に合わせて17時から勤務してもらったりと、柔軟に調整しています」

外国人宿泊客が多いため、一般的な旅館のように繁忙期と閑散期がはっきりわかれるというより、一年を通して忙しさに大きな波がないのも松葉家旅館の特徴の一つ。仕事量が比較的安定しており、土日だから休みづらいということもありません。

「旅館の仕事はチームワークが何より大事。みんなでうまく連携して働き、休みも調整して、できるだけ希望を叶えるようにしています。旅館での勤務経験は、就職活動でも評価が高いと聞きます。おもてなしの心やコミュニケーション力、外国語が磨かれるからでしょうね」。笑顔と会話のあふれる旅館運営を、マニュアルの整備や時間調整といった働きやすさの工夫が支えているようです。

英語を活かし、自分の言葉で京都の魅力を伝えることがやりがい

―乾莉凪さん

3歳から英会話を学び大学では外国語を専攻、カナダに留学経験もある乾莉凪さん。帰国後、「英語を活かせる仕事」をしようと祖母が勤務する松葉家旅館でアルバイトを始めました。それから約2年半の勤務を経て、大学を卒業後は一般企業に就職。松葉家旅館での経験が、就職活動にも大きな影響をもたらしたといいます。

各人が力を発揮するために、チームで仕事の進め方を工夫

乾さんはフロントを担当。朝、出勤するとチェックアウトのお客様の対応からスタートします。

「お客様が退出されたら、清掃担当に伝達したり、部屋の備品を洗浄するためにキッチンへ運んだりします。その合間に、お客様からのメールや電話での問い合わせに対応するなど、事務作業も並行して行います。客室の清掃が終わると、フロントスタッフが客室を確認し、清掃に漏れがないかチェックします。こうしたさまざまな業務を2〜3人で1つのチームになって進めています」

チームで効率よく仕事を進めるには、誰がどの業務を担当するのか、声を掛け合いながら進めることが大切だと乾さん。業務がスムーズに進むよう、工夫を重ねてきたといいます。

「最初は何をすればいいのかわからず、戸惑ってしまう新人スタッフもいました。そこで、業務リストをつくって、実施後チェックを入れる仕組みにしたところ、次にやるべきことが一目でわかるようになり、自発的に動けるようになりました。みんなで意見を出し合い、やり方を工夫して進めていくなかで、チームの絆も深まりました」

多様な価値観を尊重しながら、日本の文化やその魅力を伝える

「海外のお客様に日本の習慣や文化を英語で話すと、とても興味をもってくださいます。例えば、畳に上がるときは靴を脱がないといけないと説明すると、『そうなんだ!』『どうして?』と興味津々。新しいことを知る喜びをダイレクトに伝えてくださって、日本の文化を伝える重要な役割を担っているのだとうれしい気持ちになります。たとえ流暢な英語でなくても、一生懸命伝えようと努めていたら、お客様が『わかるよ!』と言ってくださったり、『こうやって言ったらどう?』と逆に教えていただいたり。会話がどんどん広がっていくのが楽しいです」と松葉家旅館で働くやりがいについて話す乾さん。

そして、それは京都の宿泊業界で働いているからこそ、得られると感じています。

「私は京都出身ですが、幼少期は親の転勤に伴い、千葉や大阪などさまざまな地域で育ちましたが、やはり、京都は歴史と文化の宝庫です。京都にはさまざまな国から、多くの観光客の方が訪れていて、魅力の伝えがいがあります! それに、留学をしているかのような異文化交流を日々できることも京都の旅館で働く魅力の一つです」と生き生きした表情で話してくれました。
海外の人とコミュニケーションを取るなかで、多様な価値観に触れる機会に恵まれたとも。

「日本人は『すみません』とよく言いますが、それを海外の方に伝えると、『どうして謝るの? 君は悪くないよ』と言われて。自分が当たり前だと思っていたことが、他者にとってはそうではないことも旅館の仕事で学びました。様々な考え方を認め合うことは素敵なことです」
ですがときには、違いを理解してもらうのに苦戦することも。

「畳の上に布団を敷くと硬くて眠りづらい、畳に直に座るのがしんどいなど、日本の文化に戸惑うお客様もおられます。できる限りの対応はしますが、難しい部分もあります。ですが分かり合えないことや違いがあって当然。そう思えたのは、お客様のおかげです。相手の考えを尊重し、気持ちに寄り添いながら、日本の暮らしを少しでも理解してもらえるよう、丁寧な説明を心がけています」と乾さん。多様な人々とのコミュニケーションが世界を広げてくれています。

そして松葉家旅館でたくさんの人と関わるなかで、大切に受け継がれた歴史を、自分の言葉で伝えていくことが大切だと感じるようになったことは、乾さんの就職先にも影響を与えました。

「京都の工業系のメーカーに就職が決まりました。これから海外展開に力を入れていこうとしている企業で、商品の価値を海外へ発信していきたいと思い志望したんです。そんなふうに思えたのは、松葉家旅館で働いたから。ここで得たすばらしい経験が、これからの社会人生活に活かせると自信を持って言い切れます!」

2人の会話―――

林さん―
乾さんやスタッフのことを娘や息子みたいに思っています。

乾さん―
みんな社長のことを、「浩一朗さん」と呼んでいます。こんなにも社長と親しく話せる関係性がうれしいです!

林さん―
それはよかった! スタッフのおかげで、いい職場、いいチームワークができていると思います。

▼京都で働きたい人と観光事業者をつなぐメディア「京都観光はたらくNavi」
https://job.kyoto.travel/

京都観光はたらくNavi

記事を書いた人:株式会社文と編集の杜

株式会社文と編集の杜

京都で活動している編集・ライティング事務所。インタビュー、ガイドブック、書籍などジャンルを問わず、さまざまな「読みもの」に携わっている。近年は、ライティングに関するイベントの開催も。
https://bhnomori.com/

観光に関するお問合せ
京都総合観光案内所(京なび) 〒600-8216
京都市下京区烏丸通塩小路下る(京都駅ビル2階、南北自由通路沿い)
TEL:075-343-0548
京都観光Naviぷらすの運営
公益社団法人 京都市観光協会
〒604-0924
京都市中京区河原町通二条下ル一之船入町384番地
ヤサカ河原町ビル8階
サイトへのご意見はこちら

聴覚に障がいのある方など電話による
御相談が難しい方はこちら
京都ユニバーサル観光ナビ 京都のユニバーサル観光情報を発信中。ユニバーサルツーリズム・コンシェルジュでは、それぞれの得意分野を持ったコンシェルジュが、京都の旅の相談事に対して障害にあった注意事項やアドバイスを無償でさせていただきます。
京都観光Naviぷらす
©Kyoto City Tourism Association All rights reserved.
  • ※本ホームページの内容・写真・イラスト・地図等の転載を固くお断りします。
  • ※本ホームページの運営は宿泊税を活用しております。