京都の五花街や舞妓さんって?知られざる京都の「おもてなし文化」をのぞいてみよう

 京都の風情ある街並みのなかを、華やかな着物姿で歩く舞妓さん。その美しい後ろ姿につい見とれてしまう、という方も多いのではないでしょうか?しかし街ですれ違う以外に、舞妓さんや芸妓さんが出入りする花街やその文化についてふれる機会は少なく、謎に包まれている部分も多いですよね。

そこで今回は、京都に5つある花街や舞妓さんについて、詳しくご紹介します。格式の高いイメージがある花街を身近に感じられるイベントや観光スポットについてもご案内します。

たくさんの人に支えられてきた花街(かがい)の文化

「花街」とは、舞妓さんや芸妓さんが舞踊や唄・お座敷遊びなどでお客さんをもてなす街の総称。一般的には、「はなまち」と読むことが多いのですが、京都では「かがい」と読みます。これは中国の「花街柳巷(かがいりゅうこう)」という美しい女性たちの集まる街を例えた表現に由来しているのだとか。

現在、京都には5つの花街があり、総称して「五花街(ごかがい)」と呼ばれています。五花街に含まれるのは、「祇園甲部(ぎおんこうぶ)」、「宮川町(みやがわちょう)」、「先斗町(ぽんとちょう)」、「上七軒(かみしちけん)」、「祇園東(ぎおんひがし)」。以前は、日本最古の花街だった「島原(しまばら)」も含めて「六花街」と呼ばれていました。

一言に花街といっても、その成り立ちの歴史は様々です。例えば、北野天満宮の近くにある「上七軒」や、八坂神社に近い「祇園甲部」「祇園東」は、「お茶屋さん」がルーツの花街と言われています。お茶屋さんとはその名の通り、はじめは社寺の参拝者にお茶やお菓子を出す店でした。それが時代の流れに合わせて、店先から奥の座敷にあがってもらい、女性たちが踊りや三味線で客をもてなすようになったと言われています。

「宮川町」は、出雲阿国(いずものおくに)の歌舞伎踊りの時代から、伝統芸能と深く関わりながら発展してきた花街。「先斗町」は、近くを流れる高瀬川の船頭や旅客が訪れる旅籠(はたご)屋がその起源と言われています。


花街には、お客さんをもてなす場所である「お茶屋さん(「お座敷」と呼ばれることも)」の他に、舞妓さんやその見習いが暮らす「置屋(おきや)」、唄や舞、舞踊を披露する「歌舞練場(かぶれんじょう)」があります。花街に関わり、その文化を支えているのはそこに暮らす舞妓さんたちだけではありません。お客さんについて熟知し、喜んでもらえるもてなしを考えるお茶屋の女将さん、お座敷の「食」を支える出前調理専門店の「仕出し屋さん」、着物を誂える「仕立て職人」、花かんざしや扇子など伝統工芸に携わる職人たちや、舞・舞踊・三味線・唄のお師匠さんなど、多くの人たちによって花街のおもてなし文化が支えられています。

舞妓さんについて知りたい!芸妓さんとの違いとは?

ここからは、舞妓さんについて深掘りしていきましょう。舞妓さんとは、そもそも芸妓さんになるための修行中の段階を指します。置屋で一年ほど「仕込み」として行儀作法や言葉、舞踊などを学び、「見習い(芸妓と一緒にお座敷での実習をすること)」を経て、舞妓になります。

特徴としては、裾引(すそひき)という丈の長い振袖(ふりそで)の華やかな着物や、歩くと揺ら揺らとゆれる「だらりの帯」、「おこぼ」と呼ばれる12cm(※履物屋によって高さは異なります)くらいの高さがある履物、主に季節の花を模した美しいかんざし、髪の結い方(おふく、割れしのぶ)などです。

お座敷で経験を積んだ舞妓さんは、20歳前後になると、芸妓になる「衿替(えりかえ)」をします。芸妓になるということは、舞踊や三味線、唄などの芸ごとや、行儀作法の修行を終え、お座敷での振舞いが認められたことを意味するものでもあります。

舞妓さんとの違いは、置屋に頼ることなく自立が求められること。見た目にも多くの違いがあります。髪は地毛ではなく飾りの少なめなカツラを付け、服装も黒やそれに近い落ち着いた色合いのものになり、履物もおこぼではなく、草履を履きます。芸妓に定年はなく、生涯現役で働くことができます。

 

花街の主な年中行事・イベント

ここからは、花街の年中行事・イベントの一部を抜粋してご紹介します。

<1月>始業式

仕事始めに当たるのが「始業式」。黒紋付き姿に稲穂のかんざしを挿した、芸妓さんや舞妓さんが日ごろお世話になっている方々へご挨拶に行きます。

<2月>節分、お化け、梅花祭

八坂神社や北野天満宮で行われる節分行事で、豆まきや舞の奉納を行います。その夜には、芸妓・舞妓が趣向を凝らした扮装をして、お茶屋をまわる「お化け」という楽しい行事も。北野天満宮では、2月25日に祭神の菅原道真に由来する「梅花祭」が催され、芸妓・舞妓が参拝者にお茶をふるまいます。

<3月>北野をどり

春のをどりの先陣を飾る、上七軒の「北野をどり」が始まります。

<4月>都をどり、京おどり

「都をどりはヨーイヤサァー」の掛け声ではじまる「都をどり」は、4月1日から約1ヶ月開催されます。同時期には、宮川町の「京おどり」もスタート。圧巻の舞台は、みどころいっぱいです。

<5月>鴨川をどり

新緑の季節にはじまるのが、先斗町の「鴨川をどり」。喜劇王のチャーリー・チャップリン、芸術家のジャン・コクトーなど多くの著名人が観劇したことでも有名です。

<6月>京都五花街合同公演 「都の賑い」

京都の夏の風物詩、五花街の芸妓舞妓が一同に会する唯一の舞台がはじまります。

<7月>祇園祭

約1ヶ月間続く、日本三大祭の一つ「祇園祭」。24日の花傘巡行では、各花街(上七軒を除く)の芸妓・舞妓が隔年交替で参加し、八坂神社で舞を奉納します。

<8月>八朔(はっさく)

8月1日(八朔の日)になると、芸妓・舞妓が日頃お世話になっている師匠やお茶屋を回って挨拶をします。

<9月>稽古に打ち込む

10月に祇󠄀園甲部で「温習会」、宮川町で「みずゑ會」、先斗町で「水明会」、上七軒で「寿会」、そして11月に祇󠄀園東で「祇󠄀園をどり」が行われます。秋に開催される舞台のため、いつも以上に稽古に打ち込みます。

<10月>時代祭

平安神宮創建と平安遷都1100年を記念して始められた「時代祭」。五花街でも、清少納言、紫式部、小野小町などに交代で扮し、行列に参加します。

<11月>祇園をどり

秋たけなわの古都を彩る祇園東の公演「祇園をどり」がはじまります。フィナーレには「花の円山 石だたみ 桜吹雪に 舞衣 姿やさしき だらりの帯よ 祇󠄀園東に 祇󠄀園東に灯がともる・・・」と唄う、『祇󠄀園東小唄』で舞台の幕を閉じます。

<12月>事始め、献茶会、顔見世総見

行事が目白押しの12月。13日から本格的な迎春準備に入る、京都ならではのしきたり「事始め」や、各花街の芸妓舞妓たちが勉強の為に歌舞伎舞台鑑賞をする「顔見世総見」が有名です。

 

花街の1年を見ると、花街やそこで暮らす舞妓さんたちが、古来の風習を守りながら、日々厳しい稽古に励んで芸を磨かれ、京都の一年に彩りをそえているのがわかりますね。

花街の年中行事について、より詳しい説明は、公益財団法人京都伝統伎芸振興財団(おおきに財団)以下のページをご覧ください。

花街の年中行事 | 京の花街文化 | 京都花街オフィシャルサイト京の五花街

 

毎年3月下旬~5月に開催される「春のをどり」の詳細は、
以下のページをご覧ください。

2023年 「春のをどり」一覧|【京都市公式】京都観光Navi

まずは、気軽に花街文化にふれてみよう!ギオンコーナー

行事やイベント以外でも、京都観光中に気軽に花街文化に触れられるのが、祇󠄀園甲部歌舞練場小劇場で催される「日本伝統文化入門公演~ギオンコーナー」です。舞妓による京舞の他にも、狂言、茶道、華道などの伝統文化・伝統芸能をダイジェストで鑑賞することが出来ます。毎日夜18時~、19時~(二回)公演されています。

 

たくさんの魅力がある京都の花街。まずは、舞妓さん芸妓さんの本質である芸の素晴らしさを感じられる春や秋の「をどり」行事や「ギオンコーナー」の公演から、ぜひ花街の文化にふれてみてくださいね。

記事を書いた人:立岡美佐子

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東京から京都に引っ越してきた、編集者。
普段は『TRANSIT』や『FRaU』など雑誌やメディアづくりに関わったり、企業や個人のWEBサイトを制作していますが、それは表の顔。裏では人を軸に京都を深ぼるイベント「ひみつの京都案内」を運営しています。東京の大学在学中も京都が好きで、同志社大学に国内留学していました(専攻は歴史学)。趣味は、合気道と食べ歩き。
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