他府県の方から「京都ラーメンってどういうもの?」と聞かれることがよくあります。実はこの質問に一言で答えるのが非常に難しいのです。札幌なら味噌ラーメン、福岡なら豚骨ラーメンといったように「京都ラーメン=〇〇」と定義ができないほど多種多様な味わいと歴史を持っている、それが京都ラーメンの特徴だからです。
それでは、京都ラーメンがいつから生まれ、どのような変化を遂げてきたのかを簡単に紹介します。
最も古いといわれる京都ラーメン店「新福菜館」が創業したのが1938年(昭和13年)です。その後、豚骨に醤油を合わせたコクのあるスープが特徴の「本家第一旭」や、背脂チャッチャ系を生んだ「ますたに」などの老舗店が続々と誕生します。
この3店舗だけをとってみても、スープから盛り付けまでそれぞれの個性が光っていて、全く異なるタイプのラーメンというのが興味深いです。
そして、こういった老舗で修業した方々が、修業先のラーメンのアイデンティティにオリジナリティを加え、独立開業し枝分かれしていく。さらに、修業先とは全く異なる新たなラーメンを生み出していく店主も現れ、京都ラーメンの多様性はさらに加速していきました。
こうして、約80年の間に、京都ラーメンは驚くほどの進化を遂げたのです。
現在の京都ラーメンは、鶏ガラや豚骨、醤油を使った昔ながらの中華そば系も依然として人気ですが、かなり濃厚な鶏白湯系、魚介つけ麺のお店も増えています。
全体的に濃厚な味わい路線かと思いきや、澄んだスープの清湯系ラーメン店も急増しており、まさに百花繚乱の時代を迎えているのです。
京都ラーメンと麺
続いて、京都ラーメンを語る上で外せない「麺」についてお話します。京都のラーメン店と二人三脚で歩んできた地元の製麺所。京都のラーメン通は、ラーメン店とセットでどこの製麺所の麺を使用しているかも頭に入っているほど、馴染みがあるのです。
それでは、製麺所という側面からも京都のラーメンをみてみましょう。
今回訪れたのは創業90年を超える老舗製麺所「近藤製麺工場」です。お話を伺ったのは4代目社長の近藤資郎さん。京都を代表するラーメン店「新福菜館」「本家第一旭」の両店でもこの「近藤製麺」を使用しているのは有名です。
近藤社長:うちの麺は1種類だけで、卸ろすお店によって太さを変えています。昔からの機械、製法を守って製造しています。スープとの絡み方、麺の硬さなどは特に大切なので意識していますね。
伝統的な製法で作られる近藤製麺の麺。この干す作業があるため少し麺が長いのが特徴です。
近藤社長:朝の4時から工場は稼働します。ランチタイムまでにできたての麺を届けたいので。
地元の製麺所が愛されるのはこういった「身近な」安心感もあるのかも知れません。京都にはほかにも製麺所がありますが、この麺に惚れ込んで、「近藤製麺さんの麺を使いたい」と訪れる新規出店の店主もいるそうで、「近藤製麺」の麺が、京都ラーメンにいかに根付いているかがうかがえます。
ラーメン好きだった2代目社長が創業した近藤製麺直営「ラーメン藤 本店」もあり、50年に渡って愛され続ける人気店です。
私も個人的に利用しますが、醤油ラーメン、麺硬め、ネギ多めでよくオーダーしています。麺の硬さや、ねぎ、もやしの量など調整できるのも昔ながらの京都ラーメンの特徴です。
ラーメン藤 本店
住所:京都市南区東九条南石田町111-1
電話:075-661-3839
定休日:木曜日
営業時間:10:00~22:00(毎月第2水曜日は17:00閉店)
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線 十条駅より徒歩3分
ホームページ:http://www.ramen-fuji.jp
京都ラーメンの新星 清湯系の名店「麺屋猪一」
つぎに、2016年に京都ラーメン業界に激震が走った出来事をご紹介します。なんとミシュランガイドビブグルマンに、初めて京都のラーメン店が選出されたのです。しかもその多くが新進気鋭の清湯系ラーメンだったのです。
その中の一軒が2013年に創業した「麺屋猪一」。四条寺町にオープンすると瞬く間に行列店となった話題店です。
創業当時から改良を重ねてたどり着いたのが、こちらの「出汁そば白」。いま「麺屋猪一」で一番人気の看板ラーメンです。
魚介出汁100%のスープに白醤油を合わせてあり、澄みながらもしっかりと味わい深さがあります。0.01mmの極薄削節や、あとから味変で入れるとろろ昆布など、京料理でも使われる食材が盛り込まれた「ネオ京都ラーメン」とも言うべき一杯。
京料理店のような雰囲気の店内、上品かつ洗練されたラーメン、おしぼりの提供など従来のラーメン店にはなかった新たな仕掛けが散りばめられており、近年オープンする京都のラーメン店にも影響を及ぼしています。
麺屋猪一
住所:京都市下京区恵美須之町542 1F
定休日:なし
営業時間:11:00~14:30、17:30~21:30(LO21:00)
アクセス:阪急京都線 京都河原町駅より徒歩6分
京都ラーメンとは・・・
京都の人々は、伝統的な文化を大切にしつつ、常に新しいものを取り入れてきたと言われています。
これは京都のラーメンにおいても同じことが言えます。
屋台から始まり、先駆者として登場した老舗ラーメン店は今も愛され続けていますし、時代の変化とともに個性を光らせた新たなラーメン店も続々と登場し、歓迎されています。
京都ラーメンはこれから先も、継承と変化を繰り返し、地元の方、全国から集まる大学生、世界中から訪れる観光客を楽しませ続けることでしょう。
一言で京都ラーメンとは…の答えは未だ見つかりません。
しかし、ただひとつ言えることは、どんな方の好みに応えてくれるお店が必ず存在するという個性の集合体で、懐の深さがあるということです。
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記事を書いた人:京都速報
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