京都では、牛肉も、和食である。京都牛肉文化

京都は和食の聖地であり、牛肉文化の総本山でもある。

 「京都人は牛肉が好き」とよく言われる。出汁や京野菜、おばんざいなど、あっさり薄味のイメージがある京都の食文化だが、実は牛肉の一世帯あたりの消費量は、京都が毎年全国でトップを争うほどに多いのだ。その理由に諸説はあるが「京都人気質」によるところが、もっとも有力なのではないか。そう語ってくれたのは、京都で戦前から食文化に携わってきた銀閣寺大西の社長・大西雷三さんである。明治から大正、昭和の初めにかけて、京都の旦那衆と呼ばれる人たちは、新しいもの、ハイカラなものが入ってくるとすぐに取り入れたこと、また京都には時代を先取りする文化人も数多く住んでいたため、そういう進取の気風を持った人々が当時の新しい食文化である牛肉を好んで食べたことが影響を与えたのだろうと、大西さんは推察する。そうした目も舌も肥えた本物志向の人が京都には多く存在した。

 いまでも京都には牛肉の目利きと呼ばれる、腕利きの肉のプロが数多くいる。大西さんもそのひとりだ。そのため、京都には良質な牛が入ってくることが多い。そうした伝統は庶民にも引き継がれ、いまでも京都の人たちは食肉専門の精肉店に足を運び、質のいい肉を買い求める人が多いのだという。そうしたいくつかの積み重ねが、京都で牛肉文化が大きく花開くことに寄与したのだろう。

 では、なぜ牛肉だったのか。実は京都の周辺には全国に名高い産地がたくさん集中しているのだ。但馬(神戸牛)、松坂牛、近江牛。そうした地の利もあったという。三方を山に囲まれている京都は、新鮮な魚介類が手に入らない。貴重な動物性タンパク質が牛だったというわけだ。長年、洗練された食文化の都であった京都には、そうした良質の牛肉が集まるルートがすでに確立されていたのだろう。牛肉文化はもはや、京都の食文化の一部だといっても過言ではないだろう。

日本の名だたるブランド牛に負けない京都の和牛。

 そして近年、京都の和牛として「京都肉」が注目を集めている。そう、あまり知られていないが、実は京都は全国的にも質の高い高級牛肉の産地でもあるのだ。しかもその歴史はかなり古く、鎌倉時代末期に描かれた「国牛十図」という当時の日本の名牛を品評した絵巻にはすでに「丹波牛は、但馬牛によく似ており、近年は逸物が多い」と記されている。「京都肉」は、肥育環境に恵まれている。一に血統、二にエサ、三に水。と言われるが、丹波は地下水の質が良く、寒暖差が激しい。さらに丹波は米どころでもあり、餌となる稲藁の質が良いこともプラスになっている。京都肉の定義は「京都産黒毛和牛」で「京都府内で最も長く飼養されていること」、さらには「京都市中央食肉市場で食肉加工されたもの」で、なおかつ「規格がB4以上」。これらをすべてクリアしたものだけが、京都肉というブランドを名乗れるのだ。

http://www.kyoto-meat-market.co.jp/kyotoniku.html

 なかでも「京丹波平井牛」は、銀閣寺大西がブランド化したもの。昨年亡くなられた京都丹波牧場の平井一三さんという「牛飼いの名人」によって丁寧に育てられた至極の牛は、全国的にもその名を知られ、日本中の名だたるブランド牛が総勢188頭集められて開催された「和牛オリンピック(全国和牛能力共進会)」では、平井さんの牛2頭が京都代表として出場し、2位と5位をとったというエピソードもある。そして、この「京丹波平井牛」の美味しさの秘密は、昔ながらの飼い方で、長期間しっかり飼い込んでいくことにあるのだという。現在、全国の平均月齢は27〜28ヶ月とされているが、平井さんの牧場では34ヶ月〜36ヶ月をかけてじっくり育てる。病気や怪我などの事故を恐れ早期に出荷してしまう、いまのやり方ではいい牛はできない。平井一三さんのあとを継いだ和恵さんは「体内熟成」という言葉で表現している。

 では、なぜ長期肥育すると美味しいか?その理由は、旨み成分であるオレイン酸(不飽和脂肪酸)の含有量が上がってくるからだ。すると融点が下がり、喉越しが良くなる。霜降りを食べても胸焼けすることがないのだ。 そうした平井さんの遺した肥育哲学が受け継がれ、京都の市場には最低でも30ヶ月〜32ヶ月以上の長期肥育された牛しか出てこない。コストはかかっても品質の良い牛を作ることを選んだ京都肉の伝統。そこにも「京都人気質」が垣間見えるのだと大西さんは語る。じつはすでに昭和50年代頃には「京都肉」という名前はあった。しかし「京野菜」「京漬物」「宇治茶」など他の産品があまりにも有名すぎて、京都肉の名は浸透しなかったのだ。だが近年、海外での和食ブームや京都への外国人観光客の増加により、京都の牛肉への注目が高まった。銀閣寺大西では、6年前に初めて京都肉を「KYOTO BEEF 雅」という名でシンガポールに輸出。いまでは18カ国に輸出している。

京都の牛肉文化を支えてきた老舗精肉店「銀閣寺大西」

 銀閣寺大西の歴史は長く、雷三さんの祖父である孫四郎氏が戦前に北白川別当町で始めた食堂が起源だという。1階が洋食の食堂で2階が学生向けの下宿屋だった。戦後、昭和27年(1952年)か28年(1953年)になって、1階を精肉の販売店、2階をすき焼き屋と「銀閣寺大西」として創業。その後、父である昇氏が後を継ぎ、昭和44年(1969年)に会社組織に法人化した。
 大西雷三さんは、平成8年(1996年)に堺市で起きたO-157による集団食中毒事件に衝撃を受け、「こうした悲劇をうちからは絶対に出してはいけない」と誓い、安心・安全を最優先課題として改革に取り組んだという。その結果、業界で初めてHACCPとISOを導入するきっかけに。O-157やBSEなどが社会問題として取りざたされた際には、銀閣寺大西もその影響を受け、一時的に小売の売り上げは落ち込んだ。しかし、逆にそうしたこれまでの安全への取り組みが信頼につながり、とくに衛生管理の厳しい病院や学校の給食、ホテルや旅館などの業務用卸のオファーがむしろ増加したという。その後、平成16年(2004年)に社長に就任した。
 現在、銀閣寺大西で取り扱っている牛肉のうち、およそ3割が京都肉。レストランにも京都肉を使ったメニューを提供しているほか、巣ごもり需要の増加で、小売や通販の部門でも京都肉の売り上げは好調だそうだ。

 社長の大西さんにズバリ京都肉のオススメの食べかたを訊いてみたところ、大西さんは「ステーキや焼肉など、肉はやっぱり焼くのがうまい」と語る。また「肉には旬がないので、京野菜で肉を巻いたり、京野菜と一緒に炒めたり、鍋料理にしたり、季節ごとの京野菜と一緒に食べることで、食べかたや味わいにバリエーションが増えて楽しい」と話してくれた。京都肉は京都に23店舗を構える銀閣寺大西で購入できるほか、銀閣寺大西直営レストラン「御肉処 銀閣寺大にし」でも、京都肉を使ったメニューを食すことができる。また、銀閣寺大西が牛肉を提供しているホテル・オークラ、MUNI KYOTO、ザ・ホテル青龍 京都清水、京都ブライトンホテルなどホテルのレストランはじめ、京都市内のさまざまなレストランなどでも京都肉を使ったメニューが増えてきている。ぜひこの機会に、とろける喉越しと深い旨みが味わえる京都肉をご賞味あれ。

御肉処 銀閣寺大にし

 「京丹波平井牛」をはじめ、和牛A5ランクの牛肉を手がける老舗精肉店「銀閣寺大西」の直営レストラン。ISO9001、HACCPを認証取得した自社センターで、高い技術を持った職人がカット・加工した、選りすぐりの上質肉を味わうことができる。メニューは牛肉と季節の野菜をふんだんに使ったコース料理のほか、シャトーブリアン、サーロイン、赤身など単品メニューも充実している。

【住所】〒604-0931京都市中京区寺町通り二条下る榎木町98番地8 【TEL】075-213-0024
【営業時間】17:00~23:00(L.O:22:00)
【定休日】月曜日(12月31日~1月4日正月休み 新年は1月5日より営業)
【最寄駅】京都市営地下鉄東西線「京都市役所前駅」徒歩3分、京阪鴨東線「三条駅」徒歩10分
【ご利用可能カード】VISA / Master Card / UC / JCB / American Express /NICOS / Diners Club

御肉処 銀閣寺大にし 公式ホームページ
http://www.yakiniku-onishi.jp

銀閣寺大西 公式ホームページ
https://www.onishi-g.co.jp

ほかにも京都肉を使ったメニューを提供しているレストラン

 冬の京都の食イベント「京都レストランウインタースペシャル2021」では、京都肉や京都ぽーくを使ったメニューも提供しています。ぜひ、名店で京都ならではの高級肉の味をお楽しみください。

【イベント紹介】
2021年で12回目の開催となる「京都レストランウインタースペシャル」では、京都の選りすぐりの名店(217店舗)の特別メニューを特別価格でお楽しみいただけます。
実施期間:2021年3月8日(月)~3月31日(水)
京都レストランウインタースペシャル2021 公式ホームページ
https://krws.kyoto.travel/jp/

【お店紹介】
京都肉や京都ぽーくを使ったメニューをご提供している店舗。 https://krws.kyoto.travel/jp/img/top/special_pork.pdf

この記事を書いた人:株式会社グラフィック 京都いいとこマップ編集部

f:id:kyokanko:20201225100603j:plain

印刷の通販®️を運営する(株)グラフィックでは、自社一貫制作の京都観光フリーペーパー「京都いいとこマップ」を15年以上にわたり発行。またWEB版も運営し、地元編集部だからこそ発信できる京都観光情報を提供し続けている。 京都いいとこWEB:http://kyoto.graphic.co.jp

観光に関するお問合せ
京都総合観光案内所(京なび) 〒600-8216
京都市下京区烏丸通塩小路下る(京都駅ビル2階、南北自由通路沿い)
TEL:075-343-0548
京都観光Naviぷらすの運営
公益社団法人 京都市観光協会
〒604-0924
京都市中京区河原町通二条下ル一之船入町384番地
ヤサカ河原町ビル8階
サイトへのご意見はこちら

聴覚に障がいのある方など電話による
御相談が難しい方はこちら
京都ユニバーサル観光ナビ 京都のユニバーサル観光情報を発信中。ユニバーサルツーリズム・コンシェルジュでは、それぞれの得意分野を持ったコンシェルジュが、京都の旅の相談事に対して障害にあった注意事項やアドバイスを無償でさせていただきます。
京都観光Naviぷらす
©Kyoto City Tourism Association All rights reserved.
  • ※本ホームページの内容・写真・イラスト・地図等の転載を固くお断りします。
  • ※本ホームページの運営は宿泊税を活用しております。