堅いイメージがグッと身近に! 人気ナビゲーターが教える、ユニークな仏像の世界

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「おおお、すごいな〜!(でもどこに注目して見たらいいんだろう……。)」

仏像を目の前にして、このような感想を持つ方って、案外多いのではないでしょうか。

政田マリ

そこで今回は仏像ナビゲーターの政田マリさんに、京都に来たならぜひ見てほしい! という超個性的な仏像たちと、その注目ポイントを語っていただきました。

・素敵な仏さまを案内する『月イチ仏像ガイド』で120コース以上を開催
・各旅行会社のコースの添乗ガイドや仏像講座での講演多数
・仏像に関する著書も多数

など、仏像愛がだだ漏れの政田さんの解説を聞けば、神聖で近寄りがたいイメージの仏像も、こんなに親しみやすいものなの!? と新たな発見が生まれますよ。

仏像ナビゲーターが選ぶ、個性派仏像8選

まずは数々の仏像を実際に見てきた政田さんに、一度見たら忘れられない! 個性的でちょっぴりマニアックな仏像を8体選んでいただきました。

① ニコッとスマイル!? 歯を見せる菩薩さま【即成院/獅子吼菩薩(ししくぼさつ)像】

即成院の獅子吼菩薩

ー 仏像って笑ったりするんですか? すましているイメージですが……。

政田:それは俗にいう仏頂面ですね。即成院の獅子吼菩薩像も正確にいうと笑顔なのではなく笑っている“ように見える”菩薩さまなんです。本当は中央の阿弥陀さまの隣で音楽を演奏したり歌ったりしているので、口元が緩んで歯が見えているだけ。でも笑っていると思うとそう見えてくるのが不思議です。

ー 仏さまがにこやかに接してくれるというところに、キュンとしますね!

政田:自然な笑顔の引き出し方を学びに、俳優やモデルが参拝されることも多いのだとか。こちらの菩薩さまは中央にいらっしゃる阿弥陀如来さまの賑やかしみたいなイメージ。私が盛り上げておくからね〜♪ という感じで脇役に徹しつつ、この空間を楽しんでいるように見えるのがいいですよね!

② ギョロ目の仏像!? 祈る姿が必死な雨乞いの神【福田寺/龍神像】

福田寺の龍神像

政田:福田寺の龍神像は、ちょっとびっくりするような姿をしています。実際に見たときのインパクトがすごいですよ! 境内の池の中から出てきたという説もあって、謎が多い仏像ではあるんですけれど。

ー こちらの龍神像は仏像という括りなんですか?

政田:こちらは鬼神 毘藍婆(びらんば)または尼藍婆(にらんば)が、龍神さまに転じたと推測される仏像なんです。よく見ると手の部分だけ色が違っていて、後から組んだ手を付け足したのではないかといわれています。龍は雨を降らせるといわれる架空の動物なので、田畑を潤すために当時の方々が仏像を龍神に仕立てて、自分たちと同じように雨乞いをさせる姿に変身させたのではないかと考えられています。

ー 天気というのは、昔の人たちにとって関心が高いですもんね。

政田:昔は地域の若い人たちがこの龍神像と同じようにふんどし一丁になって、その周りをグルグル回って雨乞いをしていたという記述が残っています。ぎょろっとした瞳で天を睨み付けるかのようなところが、みんなの代表者として頑張って祈ってます! という力強さを感じさせますね。

③ 首が360度回る!? フクロウみたいなお地蔵さま【清水寺 善光寺堂/地蔵菩薩石仏(首振地蔵)】

※新型コロナウイルス感染防止のため、現在「地蔵菩薩石仏(首振地蔵)」に直接手を触れていただくことができません。

清水寺善光寺堂の地蔵菩薩石仏

政田:こちらのお地蔵さまは大変癒し系のお顔をされています。ただかわいいお地蔵さまというだけではなく、なんと首を回すことができるんです。

ー え、触っちゃっていいんですか? なんだかバチが当たりそう……。

政田:大丈夫です。ただ、優しく回してあげてくださいね。江戸時代に作られた首振地蔵で、こちらは2代目なんですよ。あまりにもみんながガンガン回すので初代はすり減って首が落ちてしまうことがあり、今は格子の後ろにいらっしゃいます。

ー 拝観して終わりではなく、首を回せるという体験ができるのは面白いですね。

政田:ちなみにこのお地蔵さま、モチーフとなったのが、江戸時代の祇園で活躍した太鼓持ちの鳥羽八(とばはち)という人物だという説があり、よだれ掛けをあげさせてもらうと、扇子を持ってらっしゃるのがわかります。また、帽子の下にぽこっとタンコブのようなものがあるのですが、それはちょんまげではないかともいわれています。

④ 存在感抜群! 京都最大級の木像佛【轉法輪寺/阿彌陀如來(あみだにょらい)座像】

※現在、個人での参拝は中止しています。

轉法輪寺の阿彌陀如來座像

政田:高さ約7.5m、木造の座像としては京都最大級の大きさを誇る仏さまです。首元まで衲衣(のうえ)と呼ばれる、捨てられた布を縫い合わせて作った袈裟(けさ)で覆われた阿弥陀如来はとても珍しいんです。衲衣の羽織り方って、両肩を覆って胸元が見えている「通肩(つうけん)」か、左肩に衣をまとって右肩をあらわにしている「偏袒右肩(へんだんうけん)」の2種類がほとんどで、上半身の半分は裸のことが多いんです。そこでムキムキの筋肉が見えたりするのがまた良かったりもするんですが(笑)。

ー なぜこんなに大きく作られたのでしょうか?

政田:江戸時代、関通(かんつう)上人という僧侶の話がめちゃくちゃ面白いと人気で、説法を聞くために多くの人が訪れたそうです。その時に阿弥陀さまが小さいと、人で溢れかえる中でその姿を見れずに帰る方が多かったのだとか。そこで、たくさんの人に1度に見てもらえるようにと大きな阿弥陀さまが作られました。そして、現在のご住職もとっても説法がお上手。まるで江戸時代とリンクしているようで、グッときちゃいます。

⑤ 横顔で魅せる、アンニュイ阿弥陀さま【金戒光明寺/阿弥陀石仏】

金戒光明寺の阿弥陀石仏

政田:金戒光明寺は、アフロヘアのような石仏(五劫思惟阿弥陀仏)さまがいらっしゃるのが有名ですが、ニューウェーブはこの方だと私は思っています。この石仏の横の階段を登った先にあり、なんといっても横顔の素晴らしさがピカイチ! 夕日をバックにすると、まるで映画のワンシーンのようです。

ー 正面ではなく、横から見るのが政田さん的ベストアングルなんですね。

政田:西日を想定してわざわざ横顔をイケメンに作ったのではないのかなと思わせるほど、夕方に西日が落ちていく様と、この阿弥陀さまの横顔がちょうど素晴らしい神々しさを感じさせます。鼻筋や涙を流しそうな目とか、哀愁がダダ漏れしている(笑)。西日によって顔の輪郭だけが映るのがまたステキなんです。

⑥ 身を挺して守りぬく! 男気を感じる四天王【東寺 食堂(じきどう)/四天王立像】

東寺食堂の四天王立像

政田:重要文化財であるこちらの四天王は、焼けて炭化してしまっています。その部分こそ、じっくり細かく見てほしいですね。作られたのは平安初期なんですが、昭和の初めに起きた火災で食堂が全焼してしまいました。当時、食堂の中央には6m近くの千手観音さまがいて、四天王はまる焦げになったけれど、千手観音さまは比較的無事だった。四天王が観音さまを炎から懸命に守ったのではないかという逸話があるんです。その姿からは「俺はこんなになってまで守ったんだぞ」という誇りが感じられて、しびれますね。

ー 焼けた後の姿が見られるというのは貴重ですね。

政田:決して炭になったから役目を終えたのではなく、今も、現在の食堂の本尊である十一面観音を守っているのがたまらなく憎い! うわ〜あそこめっちゃ炭になってるな〜とか、足元は意外と焼けてないんだなとか、焼け跡を見て火の強さなんかも想像してみると、より感情移入できるかもしれません。

⑦ セクシーな流し目にドキドキ…… 俳優のような阿弥陀さま【勝林院/阿弥陀如来坐像】

勝林院の阿弥陀如来坐像

政田:勝林院の阿弥陀さまは、目のつり具合が最高なんです! 昭和の名俳優のようなムーディーなお顔で、流し目で魅了してくれます。

ー そういえば、仏さまは目が半開きのものが多いですが、どうしてなんですか?

政田:いわゆる半眼ですね。修行をされる際に下斜め前を見つめながらしていたという説と、大きな仏さまは私たちと向き合ったときに目が合わないので、半眼にして下を向いてくれているという説があります。

ー 流し目で目が合うと、ドキッとしてしまいそうです。

政田:勝林院では、ここから見るとベストビューという位置に椅子を用意してくれています。でも正直、どこから見てもカッコいい!(笑)。いぶし銀の空気に惚れてしまいます!

⑧ フワッと衣を身に纏った、出家前のお釈迦さま【仁和寺/悉達太子(しったたいし)座像】

仁和寺の悉達太子座像

政田:以前は聖徳太子像だと考えられていたのですが、近年、悉達太子(しったたいし。お釈迦さまの出家前の名前)であることが判明した仏像です。出家前の姿ですが、おでこの中央にポツンとある白毫(びゃくごう)などによって、将来悟りを開くことが暗示されているともいわれています。

ー 若き日のお釈迦さまの姿の仏像というのは、珍しいですね。

政田:そうですね。でも、個人的注目ポイントは纏っている衣の躍動感! 特に袖のフリル! 正面から風がこないとこんなに袖のところが上がらないだろうな〜と。柔らかに広がっていて、そのまま天に浮きそう……むしろもう浮いてる?という感じ(笑)。軽さをうまく表しています。

番外編:4つの階級でみるイチオシ仏像

仏像は、上から如来、菩薩、明王、天部といった、4つの階級に大きく分けることができます(詳しくは【京都の仏像・入門編】の記事をチェック!)。
ここからは番外編として、4つの階級ごとに1体ずつ、政田さんイチオシの仏像をちょこっと紹介していただきました。

如来 菩薩 明王 天部

如来【西光寺/阿弥陀如来坐像】
※当日・予約なしの拝観はできません。1ヶ月前までに、拝観の予約が必要です。
平安時代初期に作られた太秦西光寺の阿弥陀如来さまは唇が分厚く、目鼻もくっきり。オリエンタルな顔つきがたまらなくカッコ良いんです! 遣唐使が西洋や中国のものを持ち込んできたという時代性を感じさせます。

菩薩【永観堂/地蔵菩薩立像】
※拝観時に、マスクの着用、手指のアルコール消毒をお願いしております。
永観堂の地蔵菩薩さまは平安時代の前期の仏さま。衣紋が太腿にY字に食い込み、モモの張りがパーンと出ているのが魅力的です。ぴったりと添う布の様子からそれが絹の布なんだと分かる。仏師さんの彫りの技術が見て取れます。

明王【同聚院/不動明王坐像】
※不動明王坐像は、現在特別拝観期間のみ公開されています。
同聚院の不動明王さまは、パーツすべてが丸みを帯びていて、だんだんと顔が優しく見えてくるのが面白い。平安時代後期の仏さまで、彫りも浅いし体も柔らかい線。厳しさだけではなく癒しも与えてくれるんです。

天部【東寺 宝物館/兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)立像】
※宝物庫の公開は、特別公開、特別参拝などの会期中に限られています。
東寺の宝物館にいらっしゃる兜跋毘沙門天さまは、完璧な9頭身が美しい。モデルさんみたいで惚れ惚れしますね。左腰に重心を置いて、くの字に曲げるような立ち方、横から見るとお腹が出ていて立派な厚みがあります。


最後に、政田さんに仏像をより楽しく見るポイントをお聞きしました。いわく「この仏さまはうちのおじいちゃんがコーヒー飲んでめっちゃ苦ぁ〜て顔をした時に似ているな…というように、より具体的に想像したり、マニアックにツッコんでみてください。仏さまにどんどん感情移入していって、親しみを感じられるようになりますよ。」とのこと。

京都の寺院を訪れる際には、自分なりの視点で一味違う仏像めぐりにぜひチャレンジしてみてください。

今回登場したスポット

※新型コロナウイルスの影響により、拝観時間が異なる場合がございますので、事前に各寺院HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。

即成院
住所:京都市東山区泉涌寺山内町28
電話番号:075-561-3443
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:一般500円、中・高・大・専門学生300円、団体(40名以上)300円、小学生以下(保護者同伴)無料
休日:なし
ホームページ:http://www.negaigamatoe.com/

福田寺
住所:京都市南区久世殿城町4
電話番号:075-931-2887
拝観時間:9:00〜17:00
拝観料:志納
休日:なし
ホームページ:http://www.fukudenji.com/

清水寺 善光寺堂
住所:京都市東山区清水1丁目294
電話番号:075-551-1234(清水寺 寺務所)
拝観時間:6:00~18:00(季節により変更あり。夜間特別拝観期間は21:00受付終了)
拝観料:一般400円、小・中学生200円
休日:なし
ホームページ:https://www.kiyomizudera.or.jp/

轉法輪寺
住所:京都市右京区龍安寺山田町2
電話番号:075-464-2668
ホームページ:https://tenpourinji.com/

金戒光明寺
住所:京都市左京区黒谷町121
電話番号:075-771-2204
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:境内自由
休日:なし
ホームページ:https://www.kurodani.jp/
※秋の特別公開期間中(2020年11月13日~12月6日)は、御影堂・大方丈・庭園・山門の拝観が可能です。
京都観光Naviホームページ:https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=3981

東寺
住所:京都市南区九条町1
電話番号:075-691-3325
拝観時間:開門5:00〜17:00、金堂・講堂8:00~17:00 (受付終了16:30)、観智院9:00~17:00 (受付終了16:30)
拝観料:境内自由、金堂・講堂500円、観智院500円
休日:なし
ホームページ:https://toji.or.jp/
※「京の冬の旅」非公開文化財特別公開期間中(2021年1月9日~3月18日)は、拝観料が800円(金堂・講堂・五重塔が拝観可能)に変更になります。
京都観光Naviホームページ:https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=4262

勝林院
住所:京都市左京区大原勝林院町187
電話番号:075-744-2409(宝泉院)
拝観時間:9:00~16:30
拝観料:高校生以上300円、小・中学生200円
休日:なし
ホームページ:https://www.shourinin.com/

仁和寺
住所:京都市右京区御室大内33
電話番号:075-461-1155
拝観時間:御殿10:00~16:00(コロナ禍による短縮)、霊宝館9:00〜17:00
拝観料:御殿 一般500円、中学生以下300円、霊宝館 一般500円、高校生以下無料
休日:なし
ホームページ:http://www.ninnaji.jp/
※「京の冬の旅」非公開文化財特別公開期間中(2021年1月9日~3月18日)は、金堂・五重塔が特別公開されます。
京都観光Naviホームページ:https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=4260

西光寺
住所:京都市右京区太秦多薮町30
電話番号:075-861-0985
ホームページ:https://www.saikouji.biz/

永観堂
住所:京都市左京区永観堂町48
電話番号:075-761-0007
拝観時間:9:00~17:00(受付終了16:00)
拝観料:一般600円、小・中・高生400円
休日:なし
ホームページ:http://www.eikando.or.jp/

同聚院
住所:京都市東山区本町15丁目799
電話番号:075-561-8821
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:境内自由、五大堂拝観500円
休日:不定休
ホームページ:https://www.doujyuin.jp/

 

企画編集:光川貴浩、松田寛志、長谷川茉由(合同会社バンクトゥ)
ライター:大宮由布子
バナー作成:金原由佳(合同会社バンクトゥ)
イラスト作成:Neぎ

取材した人:政田 マリ(まさだ まり)

政田 マリ(まさだ まり)

『月イチ仏像ガイド』を毎月開催している、人気の仏像ナビゲーター。 これまでに120コース以上を企画し、得意の表現力と取材で培った独自の視点でのガイドを展開している。監修本に『なぞるだけで心が癒される写仏入門』(宝島社)『1日一枚 仏像なぞり描き帳』(宝島社)、『見るだけですっきりわかる仏さま』(三交社)がある。


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