連日猛暑が続きます。避暑をもとめて行楽地へ、夏グルメの食べ歩きに……と夏まっさかりな京都を満喫したくなっちゃいますよね。しかし、新型コロナウイルス感染の再拡大も懸念されているなか、以前のような京都観光が難しくなっています。
そこで、今回は密を避け、歩いて楽しむ京都散策をご案内します。京都在住のライターが、下鴨神社から上賀茂神社までの鴨川沿いをブラブラお散歩。まっすぐ歩けば40分ほどの道のりを、お弁当をテイクアウトして食べたり、川辺の生き物を観察したりと、たくさん道草しながら歩いてみました。
帽子や日傘などを取り入れ、こまめな水分補給と休憩を意識しながら、夏の緑が美しいエリアの散策。それではいってみましょう!
今回歩いたルート
※ 現在、高野川合流点(出町)以北を「賀茂川」、以南を「鴨川」と使い分けられるが、現河川法では全長を「鴨川」と総称する。
- 古来の姿を残す 糺の森(ただすのもり)と下鴨神社
- 鴨、サギ、魚……たくさんの生き物が暮らす賀茂川
- 本格的な味をお気軽テイクアウト!『Kappo-DELI (割烹-DELI)』
- 53歳で単身渡伊するほどジェラートに命がけ!『ジェラート・ベネ』の抹茶パフェ
- 春は市民憩いの桜スポット 半木の道(なからぎのみち)
- 300年以上の歴史をもつ悠久の味をお土産に『御すぐき處京都なり田』
- ゴールの上賀茂神社でほっと一息
- おわりに
古来の姿を残す 糺の森(ただすのもり)と下鴨神社
お散歩のスタートは京阪出町柳駅を下車してすぐの下鴨神社から。正式名称は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)。奈良時代以前から社殿があったとの記録があるとても歴史のある神社です。
参道を下鴨神社に向かって歩くと、鳥居の左手に、旧三井家下鴨別邸があります。豪商・旧三井家の別邸であり近代和風建築として重要文化財にも指定されている建物です。
夏には池のほとりにサルスベリの花が咲くんですよね。美しい木々や花に囲まれて暮らす生活、めっちゃ憧れます……。
旧三井家下鴨別邸を過ぎ、下鴨神社に向かってまっすぐ続く参道は、夏の日差しを受けてワサワサと育つ木々に挟まれています。まるで緑のトンネルみたい。
山道の周囲に広がる森林は「糺の森」といわれる原生林。ケヤキやエノキなどの落葉樹を中心に約40種ほどの植物が生えています。もちろん管理のため人の手によるケアは施されていますが、森自体は太古の時代と同じ姿。樹齢数百年を超える木もたくさん生えていて、自然の雄大さを身近に感じられます。
「御手洗祭(みたらしさい)」で有名な御手洗池に湧き出た水が、いくつか分岐して糺の森に小川となって流れています。川にそって歩けば、サラサラと心地よいせせらぎの音を楽しむことができますよ。
その川のひとつである「楢(なら)の小川」は、百人一首にも読まれています。
「風そよぐ ならの小川の夕ぐれは みそぎぞ夏のしるしなりける」という歌。
覚えている人もいるのではないでしょうか。そよそよとナラの葉に風がふいて、ならの小川の夕暮れはすっかり秋めいているけれど、神社でおこなわれている「夏越の祓(なごしのはらえ)」だけが夏のしるしなのだった……。という意味の歌です。当時も今も、この川は夏のノスタルジックさを表現するのににぴったりだったのかもしれませんね。
お恥ずかしながら、私は長年「奈良の小川」だとばかり思っていました……正しくは「楢(なら)の小川」です。
下鴨神社
- 住所:京都市左京区下鴨泉川町59F
- 電話番号:075-781-0010
- 参拝時間:6:30~17:00
- 定休日:年中無休
- ホームページ:http://www.shimogamo-jinja.or.jp/
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間が異なる場合がございますので、事前に神社HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。
旧三井家下鴨別邸
- 住所:京都市左京区下鴨宮河町58-2
- 電話番号:075-366-4321
- 営業時間:9:00~17:00(16:30受付終了)
- 定休日:水曜日(水曜日が祝休日の場合その翌日)、12/29~12/31
- ホームページ:https://ja.kyoto.travel/tourism/article/mitsuike/
鴨、サギ、魚……たくさんの生き物が暮らす賀茂川
下鴨神社で参拝をすませたら、西に歩みを進めて賀茂川の遊歩道に出ます。
美しく整備された遊歩道は、下生えが刈り込まれていて歩きやすいです。
水辺のそばには柳やエノキなど、どこかから飛んできた種が芽吹いて成長し、森のような様相を見せていました。
川には生き物もたくさん生息していて、それらを観察しながら歩くのも楽しみのひとつ。サギや鴨などの鳥たちはよく見られますし、水の流れが滞っているところにはたくさんの魚が泳いでいました。
本格的な味をお気軽テイクアウト!『Kappo-DELI (割烹-DELI)』
歩き続けているとお腹も空いてきます。
どこかお店に入るのもいいけれど、せっかくなのでお昼ごはんもテイクアウトしてはいかがでしょう。遊歩道から、北大路通りの駅前商店街へ。駅と賀茂川の間あたりにある『Kappo-DELI 』にお邪魔します。
『Kappo-DELI 』は京都の代表的グルメ・割烹と、持ち帰り専用の惣菜屋・デリカッセンを掛け合わせた新しいスタイルのお店。事前予約制で(なるべく2日前まで)、ミシュランの星つき割烹で修行したご主人の腕がギュッとつまったお弁当をいただくことができます。また、予約数によって提供できない時もありますが、予約なしで買える単品メニューも日替わりであります。
お米は冷めてもモチモチおいしい土鍋炊き。肉や魚などは炭火で丁寧に火入れされます。
シーズン真っ盛りの鮎は右京区の奥、上桂川でとれる天然物。丹波高原の豚肉や丹後のトリ貝など、『Kappo-DELI 』のこだわりは、地場の食材を使うこと。野菜はほとんどが鷹峯樋口農園さんです。「割烹で学んだスキルを活かしていますが、うちは採れたてで質の高い野菜が手に入るので、農家さんが試験的につくった珍しい野菜など、あまり割烹では使わない食材も積極的に使います」。
お弁当の種類は1,800円(平日のみ)から2,500円、3,000円、5,000円と幅のあるグレードがあります。より割烹色の強い「季節のおまかせ七品」は3,300円から15,000円まで対応可能。ちょっと贅沢なランチにも、親戚が集まるような日の仕出し屋さん的にも利用できます。実際、ハイグレードなメニューはお祝い事の席で活躍することが多いそう。
店主の加藤さんいわく「コース仕立てで提供する店舗型の料理と違い、お弁当は全てのメニューが詰められています。器などの彩りもないので、蓋を開けた時のファーストインパクトは大切にしていますね。また、冷めた状態でも満足感があるよう味つけも一品一品の個性が際立つようにしています」。
2,500円のお弁当と、一品「鶏の唐揚げ(八角風味)」を購入。賀茂川の木陰にあるベンチに座って、川を眺めながらランチです。
この日のおかずはハモの焼霜、夏野菜の炭火焼き、夏野菜の炊き合わせなどが入っていました。カラフルな夏野菜がとっても美しいですね。蓋を開けた時「ワーッ!!」と思わず声が出てしまいます。
ハモの焼霜には青柚子の皮が。金目鯛の焼き物は醤油の香ばしい香りが染み込んでいます。鷹ヶ峰とうがらし、ミョウガ、とうもろこしにプチトマトなど、鮮やかな旬の野菜がたっぷりはいっているのも嬉しいですね。
コンビニでお酒も買って、大満足のおひるごはん!けっこうボリュームがあるので、3000円のお弁当とおかず単品をふたりで買って、分け分けつまみながらお酒を楽しむ……というのもオススメです。
Kappo-DELI(割烹-DELI)
- 住所:京都市北区小山下内河原町48-13
- 電話番号:075-495-5711
- 営業時間:12:00〜20:00
- 定休日:月曜日、毎月1〜2日不定休
- ホームページ:https://www.kappo-deli.com/
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間が異なる場合がございますので、事前に店舗HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。
53歳で単身渡伊するほどジェラートに命がけ!『ジェラート・ベネ』の抹茶パフェ
おいしいお弁当の後は、おいしいデザートを食べたいですよね。橋を渡って賀茂川の東側に移動。川沿いの道すぐそばにあるジェラート専門店『ジェラート・ベネ』にやってきました。
カップのジェラートで1,000円、パフェは2,000円前後から。そして超高級抹茶ジェラートはなんと3万円越え!その高級メニューが話題となり何度もテレビに出演されています……「どうせただの高価さで売っているんじゃないの?」と思うなかれ。『ジェラート・ベネ』は約40年前に京都発のジェラート屋としてオープンし、オーナーのこだわりを詰め込みまくったお店なんです。
『ジェラート・ベネ』の商品は創業当時から無添加にこだわり、原材料は宇治にある茶園業者『丸久小山園』の上質な抹茶もしくはフルーツ・牛乳・砂糖・最低限のつなぎとしての米粉のみ。高品質な味を保つためフレーバーごとに牛乳の種類を変え、さらに製造ロットはわずか1リットルずつ。かなりの手間暇をかけてつくられています。
オーナーのマダム敦子さんは、より味を磨き深めるために53歳のときに単身イタリアへ留学。「ジェラートに命かけてるんです」とこともなげにおっしゃいます。本当は今年73歳の今年も、新型コロナの流行がなければ単身フィレンツェへ留学しに行く予定だったそう……!
命をかけてつくっているジェラート、さっそくいただきましょう。『ジェラート・ベネ』の商品は、他店のジェラートに比べて固め。素材の香りや味が飛んでしまうから、製造時には空気をあまり含ませずに仕上げています。
注文を受けた際にひとつひとつスプーンでがしがしとジェラートをほぐし、空気を含ませて盛りつけをしてくれます。空気を含ませていくにつれ、濃厚な抹茶の香りが立ち上ってくるんですよ。
舌になめらかに甘みが広がって、とっても上品な味!飲み込んだ後に深呼吸をすると、スゥーっと抹茶の香りが鼻腔いっぱいに広がります。もっとも高級な商品は、食後なにも食べたり飲んだりしないでいると2時間は抹茶の香りが残るとか。
マダム敦子さんから「ジェラートを底から2cmほど残しておき、液体状になったものを飲むと二度おいしいですよ」と教えられました。試してみると、抹茶の香りが凝縮されたドリンクに……!
ジェラート・ベネ
- 住所:京都市左京区下鴨上川原町4
- 電話番号:075-723-2414
- 営業時間:11:00~17:00
- 定休日:不定休
- ホームページ:https://gelato-vene.com/
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間が異なる場合がございますので、事前に店舗HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。
春は市民憩いの桜スポット 半木の道(なからぎのみち)
ゆっくり身体を休めたら再び歩きはじめ、賀茂川をさらに北上します。北山通の直前にある 「半木の道(なからぎのみち)」へ差し掛かります。
鴨川デルタの飛び石が有名ですが、上流にも飛び石があって川を渡ることができます。飛び石に水がぶつかって、周囲には涼しい風が。
スタート地点の鴨川デルタ付近はクマゼミの鳴き声が盛大だったのですが、北山通の近くまでくるとアブラゼミやミンミンゼミの声が優勢でした。「ミーンミンミン……」というあの鳴き声、街なかではすっかり聞かなくなりましたよね。
さて、「半木の道(なからぎのみち)」の「半木」の由来ですが、かつてここよりももう少し賀茂川の北、西賀茂のエリアは流木神社(ながれぎじんじゃ)という神社がありました。しかしこの神社が大雨による氾濫で流れ、三座のうちのひとつがこの地に流れ着いて建て替えられたそう。その際に「流木(ながれぎ)」が「半木(なからぎ)」という言葉に転じたと言われています。神社自体は京都府立植物園の園内に位置しています。
夏のシーズンは濃い緑が頭上に茂って爽やかな道ですが、春は桜の名所となっています。800mほどの長さに70本以上の枝垂れ桜が植えられ、満開の時期は圧巻の光景。市街地からはなれているため、地元民憩いのスポットとなっています。
北山通を過ぎたさらに上流では、子どもたちが本気の水遊びに興じていました。気持ちよさそうで羨ましい……!
300年以上の歴史をもつ悠久の味をお土産に『御すぐき處京都なり田』
ゴールの上賀茂神社に向かう前に、上賀茂神社のすぐ隣にある『御すぐき處京都なり田』に立ち寄りましょう。
1804年創業の老舗お漬物屋さんで、代表商品は上賀茂エリアの名産品「すぐき漬け」です。漬物店として創業する前から『なり田』のご先祖さまはこの地ですぐきを育て、種を守り、漬物をつくり続けていて、その味の伝統は300年以上になります。
「すぐき」とは京都、それも上賀茂エリアでのみ栽培されているカブの仲間「酸茎菜(すぐきな)」を塩で漬け込み乳酸醗酵させた漬物。京都三大漬物のひとつです。ほかのふたつの「柴漬け」「千枚漬け」も昔は乳酸醗酵させていましたが、いまは調味液に漬け込むタイプが主流です。昔ながらの味が現代まで変わらず続いているのはすぐきのみ。すぐき自体が持つ独特の匂いに乳酸醗酵特有のコクのある酸味と香りが重なって、重層的な味わいです。
夏の売れ筋商品は「時候慣れすぐき」。冬の間に仕込んだすぐきを翌夏まで熟成させたもの。長期熟成のおかげでどっしりとした甘み・旨味が染み込んでいます。自然の酸っぱさは夏の暑さにバテ気味の身体に染み渡ります。
また、すぐきは立派な植物性乳酸醗酵物。お通じや肌の悩みに悩む人からも人気だそうです。
こちらの「時候慣れすぐき」と、めずらしい「すぐきの花の漬物」、大豆を昆布や醤油で甘辛く炊いた「お茶漬けまめ」を購入。すぐきはスライスしてそのまま食べるのはもちろん、刻んでチャーハンにすると絶品なんです。
そして「お茶漬けまめ」は炊き込みご飯にするのもオススメだそう。購入した際に、アレンジレシピの紙を同封してくれました。
御すぐき處京都なり田
- 住所:京都市北区上賀茂山本町35
- 電話番号:075-721-1567
- 営業時間:10:00~18:00
- 定休日:1月1日(不定休あり)
- ホームページ:https://www.suguki-narita.com/
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間が異なる場合がございますので、事前に店舗HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。
ゴールの上賀茂神社でほっと一息
ランチや休憩を挟みつつ、のんびり歩き続けて4時間ほどでゴールの上賀茂神社に到着!抜けるような青空、色濃い木々の緑に丹塗の鳥居が映えてとっても綺麗です。
上賀茂神社は、下鴨神社と対をなす形で位置する神社で、京都でもっとも古い神社でもあります。正式名称である「賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)」の名の通り、主祭神は賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)です。厄祓や、落雷除け・電気産業の守護神として広く信仰されています。
お散歩には水分補給が必須。上賀茂神社の手水は地下水を引き上げているので飲用可能。帰り道の水分補給に、お水を汲ませていただきましょう。
もちろん、お水をくませていただいたお礼もかねてお参りも忘れずに。今年は大雨の被害が全国で続出しました。これからは台風の季節もやってきますし心配のタネは尽きませんよね。せめて少しでも自然災害で苦しめられる人が減りますように……!
湧き水を飲みながら川辺で一息。
上賀茂神社にも小川が流れており、こちらも涼を求める親子連れで賑わっていました。木陰と川からの冷気でとっても涼しい……!
上賀茂神社
- 住所:京都市北区上賀茂本山339
- 電話番号:075-781-0011
- 参拝時間:5:30~17:00(二ノ鳥居)
- 定休日:年中無休
- ホームページ:https://www.kamigamojinja.jp/
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間が異なる場合がございますので、事前に神社HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。
おわりに
鴨川は上流に行くにしたがってよりのどかになり、散策するのに飽きません。川沿いの道はコンクリートの街なかよりずっと涼しく、お散歩にぴったりです。さらに暑ければ、靴を脱いで鴨川の水に足をつっこんじゃいましょう。
市街地からすぐそばに豊かな自然があるのが京都の街のいいところ。なかなか思うように外出がままならない今夏、暮らしのすぐ側で人々に涼や癒しをくれる鴨川へぜひ足を運んでみてください。
川辺は街なかよりは涼しいとはいえ、熱中症対策はしっかりと! うだるような暑さに負けず、素敵なお散歩時間をお過ごしください。
企画編集:光川 貴浩、早志 祐美、長谷川 茉由(合同会社バンクトゥ)、平山 靖子
バナー作成:金原 由佳(合同会社バンクトゥ)
写真撮影:牛久保 賢二、古賀 亮平
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この記事を書いた人:平山 靖子(ひらやま やすこ)
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関西を中心に活躍するwebライターのひとり。「おかん」の愛称で人気を集め、多くのフォロワーを持つ。担当する記事はカジュアルで親しみやすいものが多く、京都に長く在住するからこその情報を提供する。