【京都の庭園入門・後編】図解で見所をガイド! 観光のプロがおすすめする「池泉庭園」と「枯山水庭園」

庭園写真(大仙院)

「庭園がいっぱいありすぎて、どこに行くか迷っちゃう…」「基礎知識はついたけど、そもそも、庭園を見るってどういうこと?」

庭園デビューへのあと一歩がなかなか踏み出せない。そんなあなたにお送りする「京都の庭園入門・後編」。

前回の記事では、らくたび代表で京都学講師の若村亮さんに、

・庭園に置かれた石は、仏様や亀など、尊いものや縁起のいいものをあらわしている
・庭園には、池をもつ「池泉庭園」と、白砂や石を水に見立てた「枯山水庭園」がある
・「池泉庭園」は、美しい花や樹木で彩られ、天皇や貴族を中心に広まった
・「枯山水庭園」は、戦乱の世に自分の心と向き合う禅の教えとともに広まった

など、庭園に行く前に知っておきたい基礎知識を教えていただきました。

後編となる今回の記事では、「実際にどこに行けばいいですか?」と、若村さんにおすすめの庭園とそのみどころを聞いてみました。

1.観光のプロが選ぶ、おすすめの「池泉庭園」と「枯山水庭園」

庭園の基礎知識や歴史を学んだうえで、次にぶつかるのが「どこの庭園に行けばいいの?」という悩みです。そこで、若村さんに「池泉庭園」「枯山水庭園」のおすすめのお寺とみどころをうかがいました。

おすすめの池泉庭園:蓮華寺

蓮華寺

若村:池泉庭園でまずおすすめしたいのが洛北・上高野にある「蓮華寺」です。もともと現在の京都駅近くにあったのですが、応仁の乱で荒廃し、現在の場所には江戸時代初期、石川丈山や狩野探幽をはじめとする一流の文化人たちが集って再興したと伝えられています。池泉庭園には主に3つの種類があると前編の記事で言いましたが、こちらは「鑑賞式庭園」です。池のサイズは比較的コンパクトで、書院の中から見ることに主眼をおいています。静寂な雰囲気の中にそっと添えられたサツキの花など、上品な美しさがある庭園です。

蓮華寺境内図

若村:庭園を真上から見ると、左上の方に蓬莱山をあらわした大きな石碑があります。改めておさらいすると、蓬莱山は仙人が住むとされている山です。不老不死の薬などのお宝があるといわれています。

ー たしかに、座敷からもっとも遠い位置にあり、簡単にはたどり着けなさそうな気がします。

若村:悟りの世界は限りなく遠く、尊いわけですね。こうした向こうの世界と私たちの世界を繋いでくれるものが船です。縁側のすぐ前には船の形をした「船石」があり、仙人の世界に私たちを誘ってくれているようにも見えますし、あるいは不老不死の薬を持ち帰っているのかもしれません。池を人生という大海原に見立てると、はるか向こうの世界への船旅ととらえることもできますね。

ー なるほど、壮大なドラマが広がっているように見えてきました。

蓮華寺のみどころ

【みどころ❶ 池泉】

蓮華寺の池泉

若村:池の水は近くを流れる高野川から引き入れたもので、とても澄んだ水の美しさがこの池の魅力です。庭園の池を経由して再び水路に戻る仕掛けだそうです。ちなみに、蓮華寺さんの池は「水」という字の形をかたどっているともいわれています。

【みどころ❷ 蓮華寺型石灯籠】

蓮華寺型灯籠

若村:庭園を見るときに、灯籠の違いにも注目してみると面白いです。灯籠にも時代や作庭家ごとの色があり、特にこの蓮華寺の庭園にあるとんがり帽子をかぶったような背の高い石灯籠は「蓮華寺型灯籠」として知られています。このなんとも独特なフォルムを、当時の文化人たちは好んだのかな、なんて思いを馳せてしまいますね。

【みどころ❸ 紅葉と新緑】

蓮華寺の新緑

若村:蓮華寺は、秋になると水際の紅葉が池を赤く染め上げ、幻想的な雰囲気になります。観光客にも人気のシーズンですね。ただ、僕的には新緑の季節がおすすめだったりします。一面緑の世界に身を置くと、心が清められるような感覚がします。

蓮華寺(左京区)

住所:京都市左京区上高野八幡町1
電話番号:075-781-3494
アクセス:叡山電車「三宅八幡」駅より徒歩約7分、京都バス「上橋」より徒歩約1分
営業時間:9:00~17:00
定休日:8月24日
拝観料:400円

※新型コロナウイルスの影響により、拝観時間が異なる場合がございますので、事前に寺院HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。

ja.kyoto.travel

おすすめの枯山水庭園:大徳寺大仙院

大仙院

若村:枯山水といえば、やはりここ大徳寺の塔頭「大仙院」です。方丈(本堂)は創建当時の建築で、禅宗の方丈としては最古といわれ国宝です。その建物からのぞむ庭園は、室町時代後期のもので枯山水の傑作といわれています。

ー 傑作とまで言われる理由はなんでしょうか?

若村:禅宗の教えやその精神性をわかりやすく伝えていることもあるのですが、なによりこのような枯山水の原型ともいえる庭園が変わらずに残っていることが不思議なんですね。

大仙院境内図

ー どのような点がすごいのでしょうか?

若村:ここでも庭園を真上から見てみましょう。建物の東北(左下)にある庭では、流れ落ちる滝と清流を三段の石組と白砂であらわしています。そこから、川の流れは東庭に大河として描かれ、さらに南庭の大海原へと流れてゆく様子が描かれています。限られた空間に、数多くの石や白砂、樹木を巧みに配置して誰が見てもよく分かる情景を描いています。

ー 滝から清流が生まれ、そして大河に。見事に人生の流れを説いているみたいですね。

大仙院のみどころ

【みどころ❶ 縦に筋の入った石(東北庭)】

大仙院の滝石組

若村:東北庭の奥、ここでも蓬莱山の滝をあらわしています。縦に白い筋の入った石を使うことで、石そのものの模様で水の流れを表現しているんですね。水が使えないからこその発想……惚れ惚れしますね。

【みどころ❷ 亀石・船石(東庭)】

大仙院の亀石・船石

若村:次に、東庭を見ていきましょう。白砂からちょこっと出た石は、長生きの象徴として縁起のいい亀をあらわした「亀石」。その隣の石は、形からはっきりわかりますよね? 「船石」です。白砂の流れにあわせて、このあと大海原を表現した南庭に続いていきます。

【みどころ❸ 白砂の大海(南庭)】

若村:大河を下り、行き着いたのは穏やかな大海原です。一面の白砂であらわされた海の向こうには、仏様の世界があるといわれています。建物の中にいる私たちは、仏様の世界を目指す旅人であり、船の上から海を眺めている状態といえるかもしれません。自分自身の心が穏やかな日は海も落ち着いて見えるし、トラブルがあった日は荒れて見えます。庭園は自分自身を写す鏡でもあると思います。

大仙院

住所:京都市北区紫野大徳寺町54-1
電話番号:075-491-8346
アクセス:市バス「大徳寺前」より徒歩約8分
営業時間:9:00~17:00
定休日:年中無休(但し寺院行事の節は拝観できません。12月~2月は9:00~16:30)
拝観料:大人400円、小中学生270円、抹茶300円
ホームページ:https://daisen-in.net/

※新型コロナウイルスの影響により、拝観時間が異なる場合がございますので、事前に寺院HPまたはお電話にてご確認をいただきますようお願いいたします。

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2.もっと深く庭園を楽しむ極意とは?

奥深い庭園の世界。もっと深く楽しむための極意とともに、現代において私たちが庭園を見る理由について若村さんに聞いてみました。

ー 庭園がもつ意味は深く理解できたのですが、庭園を美しく見るためには、どこから鑑賞すればいいのでしょうか?

鑑賞式庭園(蓮華寺)

若村:きれいな庭園を目の前にすると、ついつい縁側のほうに出てしまいがちです。でも、そのはやる気持ちをぐっとおさえて、ぜひ座敷からの景色を楽しんでください。

あえて距離をとって見るのですか?

若村:はい、とくに蓮華寺のような「鑑賞式庭園」は、そもそも座敷に招いた客人の位置からもっとも庭園の景色が美しく見えるように作られています。なので、座敷の床の間の前あたりから見るのが、灯籠や滝や石が一番美しく見えるベストポジション。一歩引いて座敷から眺めることで、軒や縁側、柱が視界に入り、まるで額縁で切り取られた絵画のような光景になると思います。

ー なるほど、ツウの見方ですね。庭園は、時代とともに当時の人々の暮らしや価値観にあわせて変化してきました。では、現代に生きる私たちが庭園を見にいく理由ってなんなのでしょうか?

若村:庭園では、ぜひ神様や仏様と向き合って自分の内面と向き合ってほしい……のですが、初めからそんなモチベーションで庭園を見にいくのはなかなかハードルが高いですよね。

庭を眺める人

若村:なので、まずは難しいことを考えず、素直に「きれいな風景を目に焼き付けたい」「美しい空間に包まれたい」という理由で足を運んでいただければ十分だと思います。ただ、そこで「なぜ美しいのか?」を考えてみてほしいですね。

ー なぜ美しいか、ですか?

若村:そうです。「美しい」とひとことで言っても、見た目にわかるデザイン的な美しさなのか、なんだか落ち着くというような精神的な美しさなのか。見る人によってさまざまな美しさがありますよね。なので「この美しさはなんだろう?」と、少し自分の心と向き合ってみてください。そうすることで「誰がどういう意図で作ったんだろう」とか、「なんで砂が波みたいなんだろう」とか、一歩深い興味を抱くためのキッカケになると思います。

ー そう考えると、庭園って不思議なものに思えてきました。

若村:人が作るものには、すべて何かの想いがあって作られていますから。つまり、なにかメッセージがあるわけです。長い月日が流れていても、意外と現代の私たちと同じような悩みを昔の人々も抱えていたり、美意識として共感できるものがあったりするかもしれません。多くの人を引きつけるほどの変わらないメッセージがあるからこそ、次の時代へと受け継がれてきたのだと思います。そんな風に考えると、庭園がより身近に感じられるんじゃないでしょうか。

座禅を組む人

ー 最後の質問です。庭園に行く際は、どのような気持ちで行けばいいですか?

若村:庭園は自分の心を映し出す鏡です。落ち着いた気持ちで庭園を眺め、自分の心と会話してみましょう。そうすることで、晴れやかな気持ちになる人もいれば、少し背筋がピンとする人もいると思います。それはきっと、人によって庭園(仏様の世界をあらわした空間)からのメッセージが変わるから。いつも物事に一生懸命取り組んでいるあなたには「がんばってるね」と聞こえるでしょう。 少々サボりがちなあなたには「もっと真面目にやりなさい」と聞こえるかもしれません。それを、実際に庭園と向き合い確かめてみてください。


若村さん、ありがとうございました! 今まで何気なく「きれいだな」とぼんやり眺めているだけだった庭園に、ぐっと深みが増した気がします。次に訪れる際は、庭園を通してあらためて自分を見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。 


前編の記事:【京都の庭園入門・前編】これだけは知っておきたい! 観光のプロが教えるお庭の基礎知識

 

監修:若村 亮(株式会社らくたび)
企画編集:光川 貴浩、長谷川 茉由(合同会社バンクトゥ)
写真撮影・境内図作成:上田 広樹(合同会社バンクトゥ)
写真提供:株式会社コトコト

取材をした人:若村 亮(わかむら りょう)

若村 亮(わかむら りょう)

2006年4月に「 株式会社らくたび 」を創立して京都に特化した事業経営を行い、『らくたび文庫』など京都関連書籍の企画・編集・執筆や、旅行企画プロデュース、各種文化講座の京都学講師、京町家の魅力発信や活用・維持保存、テレビ・ラジオ番組の出演など、多彩な京都の魅力を広く発信している。また、京都関連の観光施設・商業施設・学校法人・不動産(京町家)事業などのアドバイザー&コンサルタント事業も行っている。

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