京都で、ちょっと大人な神社巡りを。知っておきたい参拝・御朱印・おみくじの基本

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京都観光で外せないのが、神社へのお参り。京都には、開運、厄除け、縁結びなどさまざまなご利益がいただける、歴史ある神社がたくさんあります。

神社にお参りする際、「二礼二拍手一礼」といったお参りの作法については、なんとなく知っている、という人も多いはず。せっかくの京都旅をちょっと大人な気分で楽しむためにも、その手順や意味について詳しく知っておきませんか?

今回は、世界遺産にもなっている京都の下鴨神社(賀茂御祖神社)で、神社参拝の基本について教わりました。願い事をするときのポイントや、おみくじや御朱印の豆知識、神社での写真撮影のコツについても紹介します!

1.手水、二礼二拍手一礼、おさい銭……参拝の基本を学ぶ

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下鴨神社の参道に広がる「糺(ただす)の森」を通って、本殿前の南口鳥居にやってきました。神域らしい凛とした空気に包まれています。

まずは「手水舎」で身を清める

――今回は下鴨神社の祝(はふり。神社に奉仕し、祭祀に従事する神職)・東良勝文さんに案内していただきます。東良さん、神社にお参りする際、まずは何から始めればいいのでしょう?

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東良:本殿にお参りいただく前に、まずは手水(てみず)をしていただきます。鳥居の前は神社の玄関のようなもの。神様にお会いする前に、身を清める意味があります。まずは手水舎の前で一礼し、以下の順番でやってみてください。

<手水の作法> 

  1. まず右手で柄杓(ひしゃく)を取り、水をくみ上げ左手にかけて清めます
  2. 次に柄杓を左手に持ち替え、右手を清めます
  3. 再び柄杓を右手に持ち替え、柄杓から左手のひらに水を受けて溜めます
  4. 左手に溜めた水で口をすすぎます(※柄杓に直接口をつけないようにしましょう!)
  5. もう一度左手を清めます
  6. 最後に柄杓を立てて残った水を落とし、元の位置に戻します

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手水を終えたら、鳥居の前で一礼し、いよいよ本殿へ向かいます。

お参りするとき、最も大切なのは「感謝」

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下鴨神社の本殿は東西2つあり、西殿には厄除け開運のご利益があるとされる「賀茂建角命(かもたけつぬみのみこと)」、東殿には安産・子育ての神様である「玉依媛命(たまよりひめのみこと)」という、二柱(神様は「柱」という単位で数えます)のご祭神がそれぞれいらっしゃいます。

――神社でのお参りといえば「二礼二拍手一礼」ですよね。これはどこの神社でも同じなのでしょうか?

東良:現在は伊勢神宮や出雲大社など一部の神社を除いて、ほとんどの神社がこの形式です。昔は神社ごとに作法が異なり、正式なものは決められていませんでした。明治の頃から統一が図られていたようですが、今の形式は昭和20年代に神社本庁が制定したものです。

――なるほど。「二礼二拍手一礼」をするときに、何かコツなどはありますか?

東良:拍手は敬い拝む、和合という意味があり、右手を少し下にずらして打つのが本来のやり方です。手のひらの間に空気が入ることで、大きく澄んだ音が出ます。ただ、実際はそんなに細かい作法ばかり気にする必要はありません。神様は本来寛大ですから、普段会社や学校で挨拶をされるのと同じような、基本的な礼儀を守っていただければ十分。作法自体も、これまで歴史の流れとともに変化してきました。

――大切なのはお参りに向かう姿勢や気持ちなんですね。

東良:そうですね。そして最も大切なのは、お願いごとの前に、まず日頃の感謝の気持ちを神様にお伝えいただくことです。

――ついつい、願いをかなえてもらうことばかり考えがちでした。大事なことですね。それでは、基本の作法を踏まえつつ、何より感謝を込めてお参りをしたいと思います。

<お参りの作法>

  1. まずはおさい銭を入れ、深々と二礼します
  2. 二拍手し、参拝に伺った旨を神様に伝えます(右手を少し下にずらして拍手すると、音が響きやすくなります)
  3. 拍手のあと、ずらした手を重ねて、感謝の気持ちと願い事を神様に伝えます
  4. 最後に深々と一礼します

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「おさい銭」の種類や金額には、こだわらなくてOK

――そういえば、おさい銭は「5円玉がいい」とか「割り切れない数字がいい」とも聞いたことがあります。

東良:それも、あまりこだわらなくていいと考えています。いくらにするかはお気持ち次第で、硬貨でもお札でも問題ありません。実は日本でおさい銭が始まったのは貨幣が流通するようになった室町時代からと言われていて、それまでは穀物や野菜が納められていたそうです。もし今後、現金という概念がなくなるような時代になったら、きっとまた考え方も変化していくと思います。

――貨幣ができる前から神社はありますものね! あらためて、神社は時代の変化に柔軟に対応されてきたんですね。

2.本殿に参拝したら、御朱印やおみくじを楽しもう

神社に来たら、必ずおみくじを引くという人も多いはず。また御朱印も神社参拝の楽しみとして、すっかり定着しています。

――おみくじや御朱印は、どのタイミングでいただくものなのでしょう。

東良:やはり、本殿にお参りいただいた後が望ましいですね。特に御朱印は参拝の証として授与するものですので。

ごもっともです。では早速、御朱印をいただきましょう。

参拝の思い出に。御朱印のいただき方

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授与所の係の方に「お願いします」とひと声かけ、御朱印帳の書いてほしいページを開いてお渡しし、その場で静かに出来上がりを待ちます。(※社寺によっては、番号札と引き換えにあらかじめ御朱印帳を預かってもらい、参拝後に受け取れる場合もあります)

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係の方の気を散らさないよう、静かに静かに待ちましょう。見事な筆の運びです。ありがたや。(※下鴨神社では、御朱印授与所内の撮影は禁止されています。今回は特別に許可を得て撮影しています)

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出来上がった御朱印を受け取る際は、笑顔でお礼を。ここでも感謝の気持ちをしっかり伝えたいものです。御朱印には下鴨神社の正式名称である「賀茂御祖神社」の文字と日付が書かれ、社印、社格を表す「山城国一宮」の印、社紋である双葉葵(賀茂葵)の印が押されています。

おみくじを引いたら、吉凶よりも「内容」に注目

お次はおみくじ。下鴨神社にはおみくじが4種類ありますが、今回は最もオーソドックスなおみくじを引いてみました。

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先に棒を引き、授与所で初穂料をお納めして引いた番号をお伝えし、おみくじを受け取ります。

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小吉でした。実は小吉を引くのは今年2回目です。

――大吉や小吉など、吉凶の種類や順番はどんなふうに決まっているんですか?

東良:実は、神社によって少しずつ違います。当社では大吉、吉、中吉、小吉、末吉、平の順ですね。凶がなくて、代わりに平があります。吉凶が気になられると思いますが、それよりも神意である中の文言を読んでいただきたいですね。良い運勢だと思ったら、けっこう厳しいことが書いてあったりもしますよ。

――運勢に一喜一憂するだけではなく、中身も大事ということですね。「願いごと、何にごともかなう……努力がかんじん」の一節が心に刺さります。引いたあとはどうすればいいのでしょう?

東良:当社では悪い運勢だった場合はおみくじ掛に結んでいただければ、お焚き上げします。良い運勢が出たら財布などに入れて持ち歩いていただいて、次におみくじを引く時か、1年後を目安に返していただくといいでしょう。

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今回は結んで帰ることにしました。こちらのおみくじはカラフルで、結んである様子もキレイです。

3.摂社・末社へもお参りして、さらなるご利益を!

――本殿への道すがら、大小さまざまなお社を見かけました。本殿以外にはどういう順番でお参りすればいいのでしょうか?

東良:本殿にお参りいただくことが基本ですが、あとはどのようなご神徳をいただきたいかによって、摂社・末社にもお参りしてください。摂社は本殿のご祭神に近い社、末社はそれに次ぐ社という位置づけです。当社には本殿の2棟も含めて43のお社があります。特に人気なのは、縁結びの神様や女性を守る神様です。

摂社・河合神社で美麗祈願。お気に入りの化粧品をぜひ持参して

今回は下鴨神社の摂社の一つ、女性守護と美麗祈願で知られる「河合神社」に参拝しました。玉のようにお美しいとされる、ご祭神の玉依媛命にあやかりたい……!

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本日お参りできた喜びと感謝の心をお伝えした後、アンチエイジングを祈願しました。ええ、とても念入りに。

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ここ河合神社では、女性の顔を象った「鏡絵馬」が有名です。

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普段使っている化粧品や備え付けの色鉛筆などで理想の顔を描き、願いを託します。絵馬を書くための場所は「御化粧室」と名付けられており、たくさんの女性でにぎわっていました。

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描き終わったら、所定の場所に奉納を。いつまでも心身ともに美しくありたいものです。

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他にも下鴨神社の境内には、ラグビーの神様として知られる末社「さわた社」などがあります。

東良:糺の森は明治時代に関西で初めてラグビーが行われた地なんです。このさわた社は太平洋戦争後に一度朽ちてしまっていたのですが、平成27年(2015)の式年遷宮を機に再興されました。御祭神の神魂命(かんたまのみこと)のお名前が魂=玉に通じるということで、球技上達のご神徳があるといわれています。他にも、八咫烏(やたがらす)をお祭りする末社の任部社は、サッカー必勝の神様として信仰されています。神社は時代と共にさまざまな信仰が生まれる場所なんです。

4.参拝の思い出を写真に残そう! 撮影の注意点&上手に撮るコツ

見どころがたくさんの神社。せっかく来たからには、思い出を写真に残したいもの。しかし神社で撮影する場合には、気にかけたいポイントもあります。

撮影NGの箇所や、三脚の使用には注意を

東良:撮影に限らないマナーの問題になりますが、建物内に無断で入ったり、自然や文化財を傷つけるような行為は控えていただきたいですね。神社によって、本殿の中や御朱印の授与所など撮影を禁止している場所もあります。本殿は神様がいらっしゃる場所なので、カメラを向けることは控えていただきたいです。また御朱印を書く様子の撮影は、書き手の集中を妨げてしまいます。そして他の方々の通行の妨げになるため、三脚の使用を禁止している社寺も多いです。参拝時に撮影をされる際には、ご配慮をお願いしたいです。

撮影に夢中になると周りが見えなくなりがちです。周囲に気を配り、マナーを守りつつ、素敵な写真を残したいですね!

プロのカメラマンが教える、撮影のひと工夫 

そして今回の撮影を担当したカメラマンの浜田さんに、神社で撮影する際のポイントを聞いてみました。

浜田:大きな建物の前で記念撮影する場合、建物の真下に人が立つと建物ばかりが目立ってしまいます。背景となる建物をどう撮るかをまず決めて、画面を見ながら人の立つ位置を決めるとバランスがよくなりますよ。あとは単純なことですが、面白いと感じるものを見つけたら、思い切ってグッと近寄って撮ってみてください。意外性のある構図になりますし、「何を撮りたかったかよく分からない」という失敗は少なくなります。

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確かに、建物の一部にクローズアップすると印象的な写真に。

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SNSにアップするなら、お守りや絵馬などのカラフルでフォトジェニックなスポットもぜひ押さえたいですね。

感謝の気持ちを忘れずに、楽しい神社参拝を!

作法を厳密に守ることよりも、感謝の気持ちが大切というお話でした。時代の変化をおおらかに受け入れることで、日本古来の信仰を守り続けてきた神社のあり方そのものが、訪れる人の心に安らぎをもたらすのかもしれません。

京都は下鴨神社をはじめ、見どころの多い社寺の宝庫。感謝の気持ちを忘れず、ぜひ気軽に参拝をお楽しみください!

取材協力:下鴨神社

住所:京都市左京区下鴨泉川町59
電話:075-781-0010
アクセス:京阪電車・叡山電車「出町柳」駅より徒歩約12分
開閉門時間:6:30~17:00
定休日:無休

 

※掲載している情報は令和2年(2020)3月時点のものです

 

撮影:浜田智則

編集:はてな編集部

この記事を書いた人:油井康子(あぶらい やすこ)

油井康子

京都郊外に住むフリーライター。会社員やフリーペーパーの編集などを経て2013年よりフリーに。関西の情報誌やガイドブックの執筆、地域広報誌でのインタビュー記事などを手がける。取材現場近くで神社を見つけると参拝し「読者に喜ばれる記事が書けますように、締め切りに間に合いますように」と祈願する。

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